「パンがなければ、お菓子を食べればいいじゃない」とは、かのマリー・アントワネットの有名な言葉ですが、ここでは逆に「お菓子がなければ、パンで作ればいいじゃない」という主張をしたいと思います。
パンを使ったお菓子は、ヨーロッパではお母さんがよく作る家庭料理の定番です。もともとは残って硬くなったパンをおいしく食べるために家庭的な工夫から生まれたもので、おなじみのフレンチトーストはフランスでは「残り物のパン」を意味する「パン・ペルデュ(Pain perdu)」と呼ばれています。どこか懐かしい味わいと適度なボリューム感は育ち盛りの子どもたちに大人気。フランスパンはもともと水分を吸収しやすいパンなのですが、時間が経って乾燥していると吸水力はさらにアップ。卵液をぐんぐん吸って、中央までしっとりとろける極上のフレンチトーストに仕上がります。残ったパンの方がむしろおいしくできるなんて、うれしいですよね。
思えばパンはとても不思議な食べ物です。夕べシチューと一緒に食べられていたかと思えば、今日はチョコレートがはさまれていたり。食事とスイーツの間を自由に行ったり来たりできる、かなり特別な存在ではないでしょうか。同じ主食カテゴリーでも、ご飯や麺ではこうはいきません。前菜からスイーツまで、1本のバゲットを使い切るフルコース。パン食系女子なら、一度は挑戦してほしいところです。
ところで、前述のマリー・アントワネットの言葉にある「お菓子」とは、マカロンやケーキなどのことではなく、ブリオッシュのことを指しているという説が有力。パンは食事かお菓子か、その境目はどこまでも曖昧なのかもしれません。