同じものを食べても、時間次第で効果が変わる!?時間栄養学でおいしく健康に ②(全5回)
頭脳にもスポーツにも長生きにも深イイ関係 朝食を食べる、食べないで人生が変わる!?
第1回で「時計遺伝子」の仕組みから、朝食の大切さに触れました。今回は、実際に朝食を食べている人たちと食べていない人たちでは脳の働きや集中力などにどのような違いが出てくるのかを探っていきます。さらに、どんな朝食が健康に良いのかもご紹介します。
第1回で「時計遺伝子」の仕組みから、朝食の大切さに触れました。今回は、実際に朝食を食べている人たちと食べていない人たちでは脳の働きや集中力などにどのような違いが出てくるのかを探っていきます。さらに、どんな朝食が健康に良いのかもご紹介します。
「朝食」が成績アップ・集中力アップのカギ?
成長期の子どもだけでなく、大学生にとっても朝食が大切であることを示すデータもあります。全寮制の自治医科大学では、「いつも朝食を食べている学生は、入学時の偏差値に関わらず成績が良く、反対にいつも朝食を食べていない学生は、入学時の偏差値に関わらず成績が落ちていく」ことが示されました。また同大学では、朝食を食べることを徹底して、国家試験合格率100%へと導くことに成功しています2)。
朝食を抜くことのデメリットって?
また、精神衛生と朝食の関係性について、精神科のA・P・スミス博士が「朝食を食べない不規則な生活リズムが精神に与える影響」を研究。その結果によると「朝食を食べない人は気分が落ち込むうつ状態の点数と、感情が不安定になる情緒不安定の点数が、朝食を食べている人よりも高い」ことが示されています5)。
朝こそしっかり食べる!朝食を摂ることの大切さ
「朝食抜き」の体の中では何が起きているのでしょうか。人体の司令塔である、大切な脳にフォーカスしてみましょう。
イライラを防ぎ、頭の回転や判断力を鈍らせないためにも、きちんと朝食を摂り、食事と食事の間隔が空き過ぎないようにしましょう6)。
時間栄養学からみた理想的な朝食とは
朝食は、1日の中で最も大切な食事です。朝食を食べることは、「末梢時計遺伝子」のリセットに役立つだけではありません。バランスの良い献立とすることで、知的な作業に集中できるコンディションに整えてくれるのです。
それでは、理想的な朝食とはどのようなものでしょうか。ホテルの朝食で知られるアメリカンブレックファーストなどはその代表例といえます。主食のパンに目玉焼き、ベーコン、ウインナーなどの卵・肉類。チーズ、ヨーグルト、ミルクなどの乳製品。野菜スープに野菜サラダ、季節の果物やジュース、そしてコーヒーや紅茶。主食の糖質をはじめ、たんぱく質、ビタミン、ミネラル、食物繊維などがバランス良く摂取できる献立です。もちろん、一汁二菜を基本とする和朝食も同様です。ご飯に焼き魚などの主菜、おひたしなどの副菜、お味噌汁には、具を工夫することでビタミンやミネラルなどを加えることができます7)。
忙しくてすべてを用意するのが難しいときは、主食だけで済ませず、例えばたんぱく質を目玉焼きやチーズなどで、ビタミンをみかんやキウイなどの果物で...というように手軽に摂る方法を考えましょう。寝坊などでそれすら難しい場合は、バランス栄養食品を朝食代わりにすると良いでしょう8)。
また、食べる順序にも注意したいところ。朝食に限らず、まず野菜類から箸をつけましょう。野菜類に含まれる食物繊維が血糖値の上昇を緩やかにし、血管などに余計な負担をかけにくくしてくれます9)。「理想的な朝食を野菜ファーストで食べる」。これだけで、いつもより健やかでより充実した日々を送ることができるのです。
このシリーズ(全5回)の他の記事を読む
①知らないと損!時間栄養学は、食べ方ひとつでもっと健康になれる"虎の巻”
③時間栄養学を実践!その1 食べ方や時間を変えてメタボ脱出計画!
- 1)香川靖雄, 柴田重信, 小田裕昭, 加藤秀夫, 堀江修一, 榛葉繁紀. 時間栄養学―時計遺伝子と食事のリズム. 女子栄養大学出版部, 2009年初版, 2016年第6刷, p.14-15.
- 2)香川靖雄, 西村薫子, 佐東準子, 所沢和代, 村上郁子, 岩田弘, 太田拔徳, 工藤快訓, 武藤信治, 手塚統夫. 朝食欠食と寮内学生の栄養摂取量, 血清脂質, 学業成績. 栄養学雑誌. 1980, 38:283-294.
- 3)平成16年 文部科学省. 国立教育政策研究所調査.
- 4)Keul J et al. Akt Ernaehr. 1982, 7;7-14.
- 5)Smith A.P. Breakfast and mental health. International J Food Sci Nutrition. 1998, Sep;49:397-402, doi:10.3109/09637489809089415.
- 6)香川靖雄, 柴田重信, 小田裕昭, 加藤秀夫, 堀江修一, 榛葉繁紀. 時間栄養学―時計遺伝子と食事のリズム. 女子栄養大学出版部, 2009年初版, 2016年第6刷, p.16.
- 7)樋口智子, 濱田広一郎, 今津屋聡子, 入江伸. 朝食欠食および朝食のタイプが体温, 疲労感, 集中力等の自覚症状および知的作業能力に及ぼす影響. 日本臨床栄養学会雑誌. vol.29 no.1, 2007, p.35-43.
- 8)香川靖雄. なぜ午後6時の夕食は太らないのか?時計遺伝子ダイエット. 集英社, 2012, p.73-75.
- 9)Imai S. et al. Effect of eating vegetables before carbohydrates on glucose excursions in patients with type 2 diabetes. Journal of Clinical Biochemistry and Nutrition. 2014, 54(1):7-11, doi:10.3164/jcbn.13-67.
<監修>
香川靖雄
女子栄養大学副学長/自治医科大学名誉教授/栄養科学研究所所長