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2022.10.21 Fri

同じものを食べても、時間次第で効果が変わる!?時間栄養学でおいしく健康に ④(全5回)

時間栄養学を実践!その2 いつ何を食べる?おいしくて健康に良い食生活とは

健康のためには規則正しい食生活が重要であり、その理由を第3回で詳しくお伝えしました。ここでは現代人が注目している健康に関するキーワード別に、おいしい健康生活の実践ポイントと、まとめとして理想的な食生活をご紹介しましょう。

健康のためには規則正しい食生活が重要であり、その理由を第3回で詳しくお伝えしました。ここでは現代人が注目している健康に関するキーワード別に、おいしい健康生活の実践ポイントと、まとめとして理想的な食生活をご紹介しましょう。

肥満、高コレステロールとサヨナラするために

生活習慣病予防のために健康診断でよく問題になるのが、肥満と高コレステロール。肥満はメタボにつながり、高コレステロールはLDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)が高い状態で、140mg/dL以上になると脂質異常症と診断されます。高コレステロールは、メタボとは別にそれだけでも動脈硬化を進行させるので注意が必要です1)

肥満や高コレステロールは、脂質代謝異常に原因があります。代謝をつかさどる臓器といえば肝臓。最近の研究では、肝臓の概日リズムが乱れると、肝機能がうまく働かなくなってコレステロール代謝が異常になり、高コレステロールにつながることがわかってきました。高コレステロールの予防には規則正しい食生活による概日リズムの維持が大切なのです2)

血圧が気になる方必見!減塩生活の味方は16時~20時

高血圧も動脈硬化や心疾患のリスクを高める要因の1つ。けれども年齢を重ねるとともに血管の弾力性が失われるので、どうしても血圧は高くなる傾向にあります。「血圧が高め」といわれたら、まず食生活の見直し、塩分摂取量の制限が必要になってきます。

しかし、減塩生活を味気ないと感じることもあるでしょう。どうしてもつらい、少しは塩気のあるものが食べたい、と思ったなら、16時~20時の時間帯が狙いめ。この時間帯は、アルドステロンという塩分を蓄える働きをするホルモンの分泌が最も抑えられており、多少塩分を摂っても体の外に出ていくことになります。

ですから朝や昼間は我慢、夕食ならば多少、塩気のある食事をしてもよいのです(注:高血圧の病型にもよるので、必ず医師にご相談ください)3)。体の1日のリズムにあわせて、かしこく無理なく減塩生活を続けたいものですね。

骨を丈夫にしたいなら夜、血圧を抑えたいなら朝に摂りたい乳製品

ある程度の年齢になると気になるのが骨粗しょう症。骨の強さが低下して骨折しやすい状態になるので、日頃から予防を心がけたいものです。骨を作るのはカルシウムなので、骨の健康のためには十分な量のカルシウムを摂る必要があります。

ここで気をつけたいのが、カルシウムを摂る時間帯。骨の形成には、夜間に多く分泌される「成長ホルモン」が関係しており、「骨は夜作られる」といえます。ですから、カルシウムは夕食後や寝る前に摂るのが効果的です。カルシウムが手頃に摂れる食品といえば、牛乳、ヨーグルト、チーズなどの乳製品。骨を丈夫にしたいなら夜に摂るのがおすすめです。

一方、これらの乳製品は、良質なたんぱく質が豊富で、血圧の上昇に気をつけたい朝にも適しています。1日の体の代謝を正しく行うためにはもちろんのこと、朝1杯の牛乳は、血圧を抑えることができ、血管の病気の予防にもなるのです4)

朝昼夕のバランスは、3:3:4

これまでのおさらいになりますが、健康に良い食べ方を考えたとき、一番大切なのは朝食。そして頭脳労働には、糖質、たんぱく質、ビタミン、ミネラル、食物繊維などのバランスを考えた朝食が必要です6)。一方、朝食抜きの生活は、肥満になりやすく、メタボや糖尿病につながる可能性が。その理由は、朝食抜きが概日リズム、すなわち体内時計のズレを引き起こし、脂質代謝の乱れにつながって体重増加をもたらすからです。もう1つ、ダラダラ食い(昼夜のメリハリのない食生活)も健康にはNGです。食事のタイミングが不規則なだけで、脂質代謝の異常が引き起こされるという研究結果も出ており、原因は、概日リズムの乱れだとわかっています。

健康に良い食べ方は、朝食をしっかり摂り、規則正しく3度の食事を摂ること7)。1日の食事で摂る好ましいエネルギーバランスは、朝食:昼食:夕食=3:3:4といわれています。これは日本人サラリーマン健康意識調査と栄養クリニックでのメタボ治療で決めた比率です8)

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①知らないと損!時間栄養学は、食べ方ひとつでもっと健康になれる"虎の巻”

②頭脳にもスポーツにも長生きにも深イイ関係 朝食を食べる、食べないで人生が変わる!?

③時間栄養学を実践!その1 食べ方や時間を変えてメタボ脱出計画!

⑤時間栄養学の総決算!寿命のカギを握る「テロメア」を長持ちさせるには?

  • 1)厚生労働省 e-ヘルスネット. 脂質異常症. 2019-11-25.
    https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-05-004.html, (accessed 2022-3-14).
  • 2)香川靖雄, 柴田重信, 小田裕昭, 加藤秀夫, 堀江修一, 榛葉繁紀. 時間栄養学―時計遺伝子と食事のリズム. 女子栄養大学出版部, 2009年初版, 2016年第6刷, p.72.
  • 3)加藤秀夫他. JJPEN 23. 2001, p.557-593.
  • 4)Fekete ÁA, Giromini C, Chatzidiakou Y, Givens DI, Lovegrove JA. Whey protein lowers blood pressure and improves endothelial function and lipid biomarkers in adults with prehypertension and mild hypertension: results from the chronic Whey2Go randomized controlled trial. Am J Clin Nutr. 2016, Dec;104(6):1534-1544, doi:10.3945/ajcn.116.137919.
  • 5)F. Joseph. et al. The Circadian Rhythm of Osteoprotegerin and Its Association with Parathyroid Hormone Secretion. The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism. 2007, 92(8)3230-3238, doi:10.1210/jc.2006-1832.
  • 6)樋口智子, 濱田広一郎, 今津屋聡子, 入江伸. 朝食欠食および朝食のタイプが体温, 疲労感, 集中力等の自覚症状および知的作業能力に及ぼす影響. 日本臨床栄養学会雑誌 vol.29 no.1. 2007, p.35-43.
  • 7)小田裕昭, 中島俊介, 孫淑敏. 臨床栄養. Vol136, No.3, 2020.3, p.336-337.
  • 8)高橋孝子, 冨澤真美, 伊藤公江, 森野眞由美, 上西一弘, 石田裕美. 首都圏在住の既婚勤労男性の1日のエネルギー摂取量の配分の実態. 日本栄養・食糧学会誌. 2008, 61:257-264.

<監修>

香川靖雄

女子栄養大学副学長/自治医科大学名誉教授/栄養科学研究所所長