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同じものを食べても、時間次第で効果が変わる!?時間栄養学でおいしく健康に ③(全5回)
時間栄養学を実践!その1 食べ方や時間を変えてメタボ脱出計画!
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メタボリックシンドローム、略してメタボはすっかりお馴染みの言葉になりましたが、詳しくご存じですか?今回は、メタボをきちんと知った上で、効果的にメタボからの脱出およびメタボ予防をしていただくためのポイントをご紹介します。
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メタボリックシンドローム、略してメタボはすっかりお馴染みの言葉になりましたが、詳しくご存じですか?今回は、メタボをきちんと知った上で、効果的にメタボからの脱出およびメタボ予防をしていただくためのポイントをご紹介します。
メタボは何がいけない?なぜメタボになるの?
メタボは内臓脂肪の蓄積があり、かつ血圧、血糖、血清脂質のうち2つ以上が基準値から外れている状態を指します。目安は、腹囲が男性85センチ以上、女性90センチ以上であり、心臓病や脳卒中などのリスクが高くなります1)。
さて、メタボの主な要因は、①生活リズムの乱れ、②高脂肪食、③運動不足の3つですが、現代ではこの3つを行ってしまっている人がとても多いのです。例えば、残業などで夕食や寝る時間が遅くなると、睡眠不足から朝の爽快感がなく、また、夕食を遅く摂っているので空腹感も感じないことから、朝食を抜きがちになります。そのため、お昼になると猛烈な空腹感からボリュームのある昼食を摂り過ぎてしまい、太る要因になります。そして、太りだして体が重くなると運動がおっくうになる、というように、この3つはセットで悪循環に陥りやすいのです2)。
メタボ脱出、メタボ予防のための食スタイル
肥満気味の方には脱・メタボ対策、またスリムな方にはメタボ予防に効果的な食スタイルをご紹介します。何をいつ食べれば良いかがわかると、思った以上に楽で、確実な対処が可能になるでしょう。
●バランスの良い朝食を食べることが大切
メタボ予防のためには内臓脂肪を減らすことが大切となりますが、その点において、朝食はとても重要です。アメリカの国民調査では、朝食を食べる人と食べない人を比較すると、朝食を食べない人の方が1日の総カロリーは500キロカロリー低くなるのですが、太りやすさは5倍に上がってしまうという科学的データが示されました3)。
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朝食を食べないと、「末梢時計遺伝子」のリセット機能が働かず、体温も代謝も上がりません。体は危機感から省エネモードに入り、次に食べ物が入ってきたときにエネルギーへ変えることをできるだけセーブして、脂肪として蓄えようとします。こうして代謝が悪い状態が続くと、当然太っていきます。太らないためには、朝食をしっかり食べることが第一。起きて2時間以内にバランスを考えた朝食を摂りましょう4)。
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●低GI食品を食べよう
肥満予防のキーワードの1つに、グリセミック・インデックス(グリセミック指数、以下GI値)があります。GI値とは、食事を摂った際の糖質の吸収されやすさを表す数値です。
例えば、多くの日本人の主食となるご飯やパンはGI値が高い食べ物で、食後の血糖値を一気に上げることになります。一方、GI値が低い食べ物の代表は野菜です。また玄米、全粒粉パン、そば、パスタなどもGI値が低く、主食を白いご飯から玄米、あるいは白いパンから全粒粉パンに変えたり、麺類ではそばやパスタを選ぶだけでも血糖値の上昇を緩やかにすることができます。
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では、血糖値が一気に上がることがなぜいけないのでしょうか。血糖値が一気に上がると、それを下げようとインスリンが分泌されます。インスリンは脂肪の合成を促進するので、大量に分泌されると肥満につながるのです。
食事は「まず野菜から」とよくいわれますが、それはGI値の低い食べ物から箸をつけて血糖値の上昇を緩やかにするためです。また食べるスピードも重要。血糖値の急上昇を防ぐために、ゆっくりとよく噛んで食べましょう5)。
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●ボリュームのあるものはお昼に、夕食は20時までに
肥満予防のもう1つのキーワードに、脂肪の合成を促進する「ビーマルワン」というたんぱく質があり、その量は1日の中で変化しています。
例えば、朝起きて日中仕事をしている方の場合、「ビーマルワン」が低下している時間帯は朝6時~15時となります。この間に食べたものは脂肪として蓄えられにくいので、ボリュームのあるもの、甘いものを食べるのなら、ここを狙いましょう。
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一方で「ビーマルワン」の量が多くなるのは、夜から深夜にかけて。20時からぐんぐん上昇して深夜にピークに達し、2時頃までは脂肪が蓄えられやすい状態です。ですから20時までには夕食を済ませるようにしましょう。もし21時以降の食事になるようなら、主食のおにぎりなどを18時までに食べ、21時以降はおかずを食べるなどの「分食」をおすすめします。
ただし、起床時間が遅くなるとその分「ビーマルワン」が低下している時間帯も遅くなりますので、甘いものを食べる時間帯にはご注意ください6)。
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総まとめ!時間栄養学でメタボ脱出するための10か条
第1回、第2回を含め、これまでにご紹介した内容から、日常生活におけるポイントを下記の10か条にまとめました。健康的な生活リズムの実現によって、メタボとサヨナラしましょう。
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このシリーズ(全5回)の他の記事を読む
①知らないと損!時間栄養学は、食べ方ひとつでもっと健康になれる"虎の巻”
②頭脳にもスポーツにも長生きにも深イイ関係 朝食を食べる、食べないで人生が変わる!?
- 1)厚生労働省 e-ヘルスネット. メタボリックシンドローム(メタボ)とは?, https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-01-001.html, (accessed 2022-3-14).
- 2)Kagawa Y. Chronological nutrition and prevention of lifestyle-related diseases. Nihon Rinsho. 2012, Jul;70(7):1233-40, doi:10.7600/jspfsm.63.293.
- 3)Ma Y, Bertone ER, Stanek EJ 3rd, Reed GW, Hebert JR, Cohen NL, Merriam PA, Ockene IS. Association between eating patterns and obesity in a free-living US adult population. Am J Epidemiol. 2003, 158:85-92.
- 4)Ma X et al. Skipping breakfast is associated with overweight and obesity: A systematic review and meta-analysis. 2020, Jan-Feb;14(1):1-8, doi: 10.1016/j.orcp.2019.12.002.
- 5)金本郁男, 井上裕, 守内匡, 山田佳枝, 居村久子, 佐藤眞治. 低Glycemic Index食の摂取順序の違いが食後血糖プロファイルに及ぼす影響. 糖尿病. 53巻 2号, 2010, p.96-101, doi:10.11213/tonyobyo.53.96.
- 6)Shimba S. et al. Brain and muscle Arnt-like protein-1 (BMAL1), a component of the molecular clock, regulates adipogenesis. PNAS. 2005, 102:12071-12076, doi: 10.1073/pnas.0502383102.
- 7)Paoli A, Tinsley G, Bianco A, Moro T. The Influence of Meal Frequency and Timing on Health in Humans: The Role of Fasting. Nutrients. 2019, Mar 28;11(4):719, doi: 10.3390/nu11040719.
<監修>
香川靖雄
女子栄養大学副学長/自治医科大学名誉教授/栄養科学研究所所長