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骨寿命が健康のカギ ①(全2回)
「骨代謝」を高めて、全身を健やかに!
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普段の生活の中で骨のことを意識する機会は少ないかもしれません。けれども、骨は体を支えるだけでなく、体内のさまざまな器官と連携して健康を担うとても重要なパーツです。丈夫な骨をキープして元気にいきいきと過ごせるよう、骨の健康について考えてみませんか。
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普段の生活の中で骨のことを意識する機会は少ないかもしれません。けれども、骨は体を支えるだけでなく、体内のさまざまな器官と連携して健康を担うとても重要なパーツです。丈夫な骨をキープして元気にいきいきと過ごせるよう、骨の健康について考えてみませんか。
骨も「骨代謝」で新しく生まれ変わっている
私たちの体には200個以上の骨が存在しています。それらが3~5年(高齢になると10年)の間にそっくり生まれ変わることをご存じですか?皮膚がターンオーバーをするように、実は骨でも絶えず新陳代謝が行われています。
古くなった骨は、「破骨細胞(はこつさいぼう)」という細胞によって壊され、その部分に「骨芽細胞(こつがさいぼう)」が付着。「骨芽細胞」は、血液中のたんぱく質やカルシウムを利用して、新しい骨をつくります。これを「骨代謝(こつたいしゃ)」といいます。骨代謝によって、骨は毎日少しずつつくり替えられているのです。
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健康パワーに期待!骨ホルモン「オステオカルシン」
骨に関する研究は、近年、飛躍的に発展していますが、とりわけ関心を集めているのが、骨代謝の際に骨芽細胞から分泌される骨ホルモン「オステオカルシン」です。オステオカルシンは、骨をつくる材料の1つであると同時に、最近では、生活習慣病との関連をはじめ、認知・記憶機能の改善や心筋梗塞の予防、筋力の向上、生殖能力を高めるなど、さまざまな分野で研究が進んでおり、その健康パワーに大きな期待が寄せられています。
中でも注目すべきは、糖尿病のリスク低減です。オステオカルシンには血糖値を一定範囲内に保つホルモンである「インスリン」の分泌を促す働きがあります。そのため、骨代謝を上げ、オステオカルシンの分泌を増やすと血糖値が安定し、結果的に糖尿病のリスク低減につながるといわれています。
また、オステオカルシンには脳の活性化やアルツハイマー型認知症とも関係している可能性が考えられています。アルツハイマー型認知症は女性に多い病気で、女性患者数は男性患者数の約2.5倍。その原因の1つに、骨量の少なさがあるといわれています。女性は比較的骨格が小さいうえに、妊娠や授乳期などカルシウムを大量に必要とする時期があったり、閉経後に骨の形成を促す女性ホルモンが減少したりするためです。つまり、骨代謝を活発にしてオステオカルシンの分泌量を落とさなければ、女性特有の体の変化に起因する認知症リスクにおいては、低減できる可能性があるということです。
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骨代謝が落ちると、どんなサインが出る?
とはいえ、そもそも自分の骨代謝が落ちているかどうかはわかりにくいもの。そこで、目安になるチェックポイントをご紹介します。次の「チェックリスト」で1つでもチェックがついたら要注意です。
□背丈が縮んだような気がする
□背中や腰が曲がってきた
□背中や腰に痛みがあり、動作がぎこちない
□息切れしやすい
□歩くのがおっくうになってきた
□外出がつらく、家にいることが増えた
骨代謝の低下は骨の衰えに直結して、日常生活にさまざまな影響が及びます。例えば、動くことがおっくうになって日々の活動量が大きくダウンし、体力や筋力の低下を招きます。また、あごの骨が弱くなることで噛む力が衰え、食べることに不便が生じれば栄養不足につながることも。さらに、猫背になったり、顔のシワやたるみが目立つといった見た目の問題とも無関係ではありません。
骨の衰えをそのまま放置し骨粗しょう症に進行すると、ちょっとしたことで骨折しやすくなるなど、将来的に介護のリスクが上昇します。男性に比べて骨量が少ない女性は骨粗しょう症になりやすく、特に注意が必要です。「まだ若いから大丈夫」と油断せず、早いうちから骨代謝を上げる生活を心がけていきましょう。
適度な刺激で、骨代謝アップ!
骨代謝を上げるための重要なポイント、それは骨への適度な刺激です。骨芽細胞は、刺激を受けることで活性化されます。運動などで骨に重力や圧力がかかると、骨芽細胞から指令が出て骨代謝が活発に。丈夫な骨づくりが進むとともに、オステオカルシンの分泌量も増加します。逆に、体を動かさなくなると、骨代謝が落ちてオステオカルシンの分泌量もグッと減少することに。骨折や認知症リスクにつながる可能性があります。
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骨を刺激するには、適度な運動が効果的です。といっても、ハードなトレーニングではなく、日常生活の中でできる簡単な運動で十分。次回は、具体的な骨のトレーニング「骨トレ」と、その効果を高める食事についてご紹介します。
このシリーズ(全2回)の他の記事を読む
- <参考文献・書籍>
- ・溝上顕子, 川久保(安河内)友世, 竹内弘, 平田雅人. オステオカルシンとインスリン分泌. 日本薬理学雑誌145, 2015, p.201-205.
- ・藤澤孝志郎. 世界一効率よく若返る!1日5秒骨トレーニング!. ビジネス社, 2018.
<監修>
藤澤孝志郎
Dr.孝志郎のクリニック院長/JSIM認定総合内科専門医