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体をつくるたんぱく質のチカラ ①(全2回)
意外と知らない「たんぱく質」の基礎知識
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私たちの体をつくるうえで欠かせない栄養素、「たんぱく質」。炭水化物、脂質と並ぶ三大栄養素の1つといわれています。たんぱく質といえば筋肉のための栄養素というイメージを抱いている人が多いと思いますが、実は役割はそれだけではありません。今回は、たんぱく質とはどんな栄養素なのかをわかりやすく解説します。
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私たちの体をつくるうえで欠かせない栄養素、「たんぱく質」。炭水化物、脂質と並ぶ三大栄養素の1つといわれています。たんぱく質といえば筋肉のための栄養素というイメージを抱いている人が多いと思いますが、実は役割はそれだけではありません。今回は、たんぱく質とはどんな栄養素なのかをわかりやすく解説します。
たんぱく質の役割は?
たんぱく質は、筋肉をはじめ、臓器、血液、皮膚、髪、歯、爪など、体のあらゆる組織をつくる材料になる栄養素です。加えて、体の機能を調整するホルモンや酵素、抗体、神経伝達物質などの材料でもあり、免疫や代謝、血圧の調整、神経機能の維持などにも重要な役割を果たしています。
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たんぱく質の種類と必須アミノ酸
私たちの体内には、10万種類ものたんぱく質が存在しています。筋肉を構成する「アクチン」や「ミオシン」をはじめ、皮膚や軟骨などを構成することでおなじみの「コラーゲン」、血液の成分である「ヘモグロビン」、血糖値をコントロールする「インスリン」などもたんぱく質の一種です。
たんぱく質は、20種類のアミノ酸で構成されており、その組み合わせや数によって性質や働きが異なります。また、20種類のアミノ酸のうち、11種類は体内で合成できますが、残りの9種類は体内で全く合成できないか、できてもその量が極めて少ないため、食べ物から摂取しなければなりません。これらを必須アミノ酸といいます。
肉類、魚介類、卵、乳製品などに含まれる「動物性たんぱく質」のほとんどは、9種類の必須アミノ酸すべてを含んでいます。一方、米や小麦などに含まれる「植物性たんぱく質」の多くにおいては、一部の必須アミノ酸が不足していますが、大豆たんぱく質には9種類がバランス良く含まれています。
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たんぱく質が不足すると?
たんぱく質不足はそのまま体をつくる材料の不足となり、肌荒れ、髪のダメージ、爪が割れやすくなるなど、わかりやすい形でトラブルがあらわれます。筋肉がつくられなくなり疲れやすくなる、基礎代謝が落ちて太りやすくなる、冷え、むくみなどもよく聞かれる症状です。また、傷が治りにくくなるといったことも起こり得ます。
さらに、生活習慣病や認知症とも密接な関係があることがわかっています。なぜなら、たんぱく質が不足すると筋肉量が減少し、筋肉のブドウ糖消費量が減って血糖値が上がりやすくなり、糖尿病のリスクが上昇します。また、筋肉は、脳から送られた電気信号を神経を通じて受け取り収縮し、筋肉が動くと今度は筋肉から脳へと電気信号が送られます。つまり、筋肉と脳は相互に刺激を受け合っているため、筋肉を動かすことは脳のトレーニングにもつながっているのです。よって、筋肉量が減少すると、脳への刺激も減って認知機能にも影響が出やすくなるというわけです。
なお、たんぱく質は代謝の過程で老廃物が発生しますが、腎臓がそれを「ろ過」し、尿として排出しています。そのため、たんぱく質の摂取量が増えて老廃物が増えると、腎機能に関する数値が一時的に変化する可能性があります。しかし、体には状態を一定に保つ機能があるため、次第に腎臓の働きが調整され、中長期的に見ると数値への影響はほとんどないといわれています。とはいえ、たんぱく質を多く含む食品は脂質も含んでいることが多く、たんぱく質自体もエネルギーを持つ栄養素ですから、食べ過ぎは脂質やエネルギーの過剰摂取につながることを忘れずに。
※腎疾患をお持ちの方は、医師または管理栄養士の指導に従ってください。
多くの重要な役割を担うたんぱく質ですが、忙しさやダイエットなどで偏った食生活になると、慢性的に不足しがちです。健やかな人生のために、ぜひ、毎日必要量のたんぱく質を摂ることを意識しましょう。たんぱく質の摂り方のポイントについては、次回に詳しくご紹介します。
このシリーズ(全2回)の他の記事を読む
- <参考文献>
- ・葛谷雅文. 超高齢社会におけるサルコペニアとフレイル. 日本内科学会雑誌 第104巻第12号, 2015, p.2602-2607.
- ・Marta Cuenca-Sánchez, Diana Navas-Carrillo, Esteban Orenes-Piñero. Controversies Surrounding High-Protein Diet Intake: Satiating Effect and Kidney and Bone Health. Advances in Nutrition, Volume 6, Issue 3, May 2015, Pages 260-266. 2017-5-2015.
https://doi.org/10.3945/an.114.007716
<監修>
藤田聡
立命館大学スポーツ健康科学部 教授