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イベントレポート Vol.6
「穀物由来の食物繊維の機能性について学ぶ」セミナーを開催
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2022年3月11日(金)、女子栄養大学駒込キャンパスにて「穀物由来の食物繊維の機能性について学ぶ」セミナーを開催しました。当セミナーは、管理栄養士など栄養の現場に携わる方々に、小麦全粒粉等の全粒穀物に含まれる栄養素や最新の研究で得られた機能性のエビデンス等をお伝えすることを目的とし、会場参加のほかオンラインでも同時配信し、約300名にご参加いただきました。
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2022年3月11日(金)、女子栄養大学駒込キャンパスにて「穀物由来の食物繊維の機能性について学ぶ」セミナーを開催しました。当セミナーは、管理栄養士など栄養の現場に携わる方々に、小麦全粒粉等の全粒穀物に含まれる栄養素や最新の研究で得られた機能性のエビデンス等をお伝えすることを目的とし、会場参加のほかオンラインでも同時配信し、約300名にご参加いただきました。
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第一部(前半)全粒穀物の栄養学
第一部の前半は、女子栄養大学副学長の香川靖雄先生による「全粒穀物の栄養学」。現代の日本人はビタミン、ミネラル、食物繊維が不足しており、その原因として、高度経済成長とともに精製加工された食品を喫食するようになったこと、食品を選択する際の重視点として、栄養価よりもおいしさや価格、好みを優先するようになったこと等を解説。ビタミン、ミネラル、食物繊維不足の改善策として、全粒穀物を食事に取り入れることが有効であること、また全粒穀物を喫食することによるその他のメリットについても説明しました。
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例えば、小麦全粒粉パンと通常の食パンを比較した場合、前者を食べたときの方が血糖値の上がり方が緩やかになること、また、全粒穀物の摂取が多いほど、さまざまな疾患のリスクが低いこと、食物繊維の摂取は免疫力の維持や腸内環境改善に役立つこと、さらには高齢者の脳や筋力との関連性など、いくつものデータを示しながら多岐に渡って教示。
最後に、各国の栄養政策にふれながら、全粒穀物が浸透していない要因として、健康維持に役立つことが知られていない、お店に売っていない、調理法がわからないなどさまざまな要因を挙げ、克服するための取り組みを紹介しました。
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第一部(後半)穀物由来の食物繊維の機能性について
後半は、大妻女子大学教授の青江誠一郎先生が登壇。「穀物由来の食物繊維の機能性について」講じました。
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はじめに、最新の食物繊維の定義から、日本人の食事摂取基準(2020 年版)における食物繊維の摂取目標量と理想とする摂取量、日本人の食物繊維摂取量の変遷、穀物に含まれる食物繊維の種類についてわかりやすく解説した後、発酵性食物繊維の話に。これまでは水溶性か不溶性かで分類することが多かった食物繊維ですが、それだけでは機能を分類できないことがわかり、最近では発酵性か難発酵性かを考慮するようになったと教えてくれました。
発酵性食物繊維は、全粒穀物、根菜類に多く含まれていますが、それぞれに含まれる発酵性食物繊維の種類が異なっており、今回は穀物に含まれる発酵性食物繊維に着目。小麦全粒粉や小麦ふすまに含まれる「小麦由来アラビノキシラン」と、大麦やオーツ麦に含まれる「β-グルカン」について取り上げました。
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小麦由来アラビノキシランについては、小麦粉100%配合パンと全粒粉100%配合パンをそれぞれ12週間食べ続けたところ、後者は内臓脂肪が減ったデータや、小麦ふすまを摂取することにより腸内で酪酸等の短鎖脂肪酸が増え、腸内環境が改善されたデータ等を紹介。続いて、β-グルカンについては、オーツ麦や大麦ごはんを食べて続けることで、コレステロールが低下するデータや血糖値の上昇を抑えるデータを示し、これらの有効性を語りました。
これらの素材について、食を楽しむ意味でも上手にローテーションしながら継続して取り入れることを推奨し、話を終えました。
第二部 全粒粉を使用したメニュー 動画紹介
第二部は、料理家や商品開発プロモートとしても活躍する女子栄養大学非常勤講師の外川めぐみ先生による「全粒粉を使用したメニュー 動画紹介」。一部で学んだ素材を具体的にどのように活用するか、栄養現場での大量調理を考慮した3つのレシピを動画で紹介しました。
もっちりカップ全粒粉肉まん
全粒粉をたくさん使用するメニューというとパンやピザを思い浮かべますが、大量調理の現場では、できあがったものを購入することが多く、現場で調理することはあまりありません。そこで、現場で作れるメニューとして考えたのが肉まんです。生地で肉あんを包むのではなく、アルミカップに肉あんを入れ、その上に生地をかぶせて蒸し上げることで大量調理に対応します。
全粒粉カリカリから揚げ
全粒粉の使用量は少ないですが、高い頻度で取り入れられるメニューです。全粒粉を用いると、衣がはがれにくくなるので揚げやすく、冷めても衣がはがれにくいので、から揚げに限らずフリッターなどにも応用できます。
全粒粉かりんとう
全粒粉と黒砂糖で気軽に作れる素朴なおやつです。生地をのばしたり、棒状にねじったり、お子さまが作業できる工程も多く、食育にも利用できるメニューです。一緒に作ることで食べ物に興味を持ち、栄養について考えるきっかけになります。
各講師の講演後に設けられた質問タイムでは、会場で参加された方からの質問や事前に寄せられた質問に、一つひとつ丁寧に回答。講演中、先生方の話を聞き逃すまいと熱心にメモを取る方も多く見られ、参加者のみなさんの熱意が伝わってきました。ご参加いただいたみなさん、ありがとうございました。
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各講師の講演後に設けられた質問タイムでは、会場で参加された方からの質問や事前に寄せられた質問に、一つひとつ丁寧に回答。講演中、先生方の話を聞き逃すまいと熱心にメモを取る方も多く見られ、参加者のみなさんの熱意が伝わってきました。ご参加いただいたみなさん、ありがとうございました。
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女子栄養大学 副学長
香川靖雄
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大妻女子大学 教授
青江誠一郎
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料理家/女子栄養大学 非常勤講師
外川めぐみ