人権尊重の取組み

私たちの基本的な考え方

当社グループは、「日清製粉グループ企業行動規範及び社員行動指針」のなかで、人間性の尊重を明記しています。2018年には、社外から専門的助言を取り入れ、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づく「日清製粉グループ人権方針」を取締役会の承認のもと制定し、その対象を(株)日清製粉グループ本社及びその連結子会社、当社グループの事業に関連するビジネスパートナーやその他関係者としています。
当社グループは人権を尊重する企業経営を推進することで、持続可能な社会の実現に貢献していきます。

人権の取組みの推進体制

推進体制については、(株)日清製粉グループ本社の執行役員 人事・労務本部長が委員長を務め、事業会社の人事労務担当取締役で構成される人権推進委員会を組織しています。
また、(株)日清製粉グループ本社人事部に人権推進室を設け、グループのさまざまな人権課題に適切に対応しています。同様に、各事業会社においても、人権推進委員会を設置し、取組み状況の確認や各課題の意見交換を行っています。
また、人権に関する重要事項については、適宜、サステナビリティ委員会及びグループ運営会議、取締役会に上程しています。

人権デュー・ディリジェンスの実施

当社グループの事業活動が影響を及ぼし得る人権リスクを特定・評価し、優先的に対処すべき人権リスク上の重要課題を把握するため、人権デュー・ディリジェンスに取り組んでいます。
(株)日清製粉グループ本社が各事業部門に対して取組み状況のモニタリングを行い、いずれの事業でも特定された高リスクについて順次対応を進めていることを確認しています。
2021年6月より、国内の売上構成比の高い3事業部門(製粉事業、加工食品事業、中食・惣菜事業)において開始し、2022年11月からは、新たに健康食品事業、エンジニアリング事業、酵母・バイオ事業、メッシュクロス事業に対象を拡げました。
引き続き、各事業における人権リスク及び重要課題への対応を進めていきます。

人権デュー・ディリジェンス全体のプロセス

国連ビジネスと人権に関する指導原則(Guiding Principles on Business and Human Rights)

①人権方針の策定
人権対応へのコミットメントとコミュニケーション
- 「人権方針」「人権方針附属書」の策定・公表
- 方針に関する社内研修及び主要取引先への周知実施

②人権への影響評価
顕在的・潜在的な人権への負の影響を特定・評価
- 事業会社ごとの人権リスクを特定

③是正措置
人権への影響評価を基に、低減に向けた行動
- 特に優先度の高いリスク項目から低減・防止策を検討し、実行

④実施状況確認
是正措置の実施状況の確認
- 取組みの進捗状況について社内確認

⑤情報開示
人権への影響と取組み状況を開示
- 統合報告書やWebサイトを通して開示

人権影響評価のプロセス

Step1

外部有識者の協力を得て、各事業の生産、開発、調達、物流、管理部門等の関連部署へヒアリングを実施、事業活動の特性も勘案して、自社及びそのサプライチェーン上の人権リスクを事業会牡ごとに抽出。

Step2

人権リスクの「影響の大きさ」と「発生の可能性」を軸にリスクマップを作成し、高リスク項目を特定。なかでも「労働者の安全衛生」と「外国人労働者(技能実習生、特定技能等)の人権」を人権リスク上の重要課題と位置づけ。

Step3

特定された高リスク項目について、リスク低減のための具体的な対応策を検討し、実行。

グループ全体で取り組む高リスク例

上記の「人権影響評価のプロセス(Step2)」の中で特定した顕在的、潜在的なリスク項目

危険作業・労働災害/外国人労働者の労働に関する権利侵害/物流会社の労働者の安全衛生管理/サプライヤーを含む長時間労働・連続勤務/贈賄等腐敗的行為/当社商品やサービスによって起こされる可能性のある消費者の健康被害/労働者へのハラスメント/広告における差別的表現/個人情報の漏洩/工場閉鎖・移転に伴う雇用への影響/非正規労働者への人権教育の不足

人権リスクの特定にあたっては、「人権問題の影響の大きさ(グラフ横軸)」と「発生可能性(グラフ縦軸)」に、当社グループの関与度(HIGH/MIDDLE/LOW)を考慮に入れ、取り組むべき優先度を決定。

製粉事業、加工食品事業、中食・惣菜事業の人権リスクマップ

人権リスク上の重要課題

❶ 労働者の安全衛生

重要である理由:製造工場を持つ当社グループでは、工場における危険作業や労働災害等の課題が生命に直接的な影響を及ぼす可能性があるため。

❷ 外国人労働者の人権

重要である理由:自社工場(主に中食・惣菜事業)・協力工場、サプライヤーにおける外国人労働者の人権に関する取組みは、社会的重要度も高く優先的に取り組む必要があるため。

重要課題への取組み

課題 取組み内容 該当事業
①労働者の安全衛生
労働災害
  • 「 安全衛生管理方針」に基づきPDCAのサイクルを運用
  • (株)日清製粉グループ本社による国内外事業会社の監査(2023年度 34事業場)及び第三者診断の実施
  • 発生した労働災害の分析を行い問題を抽出し、特に注力すべきと判断した労働災害(機械へのはさまれ・巻き込まれ、高年齢作業者による転倒災害等)について設備対策や安全教育の強化を実施
  • 労働安全衛生に関する階層別研修の実施(2023年度受講者300名)

    労働安全衛生

製粉事業加工食品事業中食・惣菜事業
健康食品事業エンジニアリング事業酵母・バイオ事業メッシュクロス事業
サプライヤー管理
  • 物流会社との定期的な対話の実施による長時間労働等の是正の取組み
製粉事業加工食品事業中食・惣菜事業
健康食品事業エンジニアリング事業酵母・バイオ事業メッシュクロス事業
  • 物流会社に対する過積載の実態把握等を目的としたコンプライアンス調査の実施
製粉事業加工食品事業中食・惣菜事業
  • 国内事業の主要サプライヤーを対象に「責任ある調達方針」及び「サプライヤー・ガイドライン」の周知、CSRセルフ・アセスメント調査を実施(評価項目:人権・労働、従業員の雇用形態、環境等)
  • 改善の余地があるサプライヤーには、結果のフィードバックや訪問を通じて、自社の課題や取組みの重要性を周知、継続して対話
  • 調査を行ったサプライヤー数:2023年度57社、累計561社
製粉事業加工食品事業中食・惣菜事業
健康食品事業酵母・バイオ事業メッシュクロス事業
②外国人労働者の人権
労働環境
  • 危険個所・危険設備について外国人労働者の理解を促すことを目的として、多言語やイラストで注意喚起
  • マニュアルや掲示物の多言語表記及び通訳(一部の言語)の配置
  • 多言語対応の労働安全動画の視聴
中食・惣菜事業
  • 外部有識者講師による外国人労働者の人権保護とマネジメントを目的とした研修の実施(2023年度 211名受講)
製粉事業加工食品事業中食・惣菜事業
健康食品事業エンジニアリング事業酵母・バイオ事業メッシュクロス事業
モニタリングと救済
  • 第三者によるCSR監査の実施(一部の惣菜工場)
  • 救済窓口として、相談者のプライバシーを守りながら会社に相談できる仕組みの構築・運営(目安箱、改善提案箱等)
中食・惣菜事業
外国人労働者への人権啓発
  • 人権方針の周知・浸透を目的とした人権方針の多言語化(中国語、ベトナム語、インドネシア語、タイ語、トルコ語)と海外事業場への展開
製粉事業加工食品事業中食・惣菜事業
酵母・バイオ事業メッシュクロス事業

その他課題への取組み

責任あるマーケティング強化を目的とした「広告における差別的表現」への対応
(高リスク項目への対応)
  • 広告表現等における差別的な表現を未然に防止するため、人権担当部署による各社広告媒体の事前チェックを実施(TV、新聞、雑誌、Web、屋外広告等)
  • 広告における差別的表現をテーマとした外部有識者講師による広告宣伝・マーケティング担当者向け研修の実施(2021年より継続、2024年3月・4月実施時は加工食品事業・健康食品事業・(株)日清製粉グループ本社の社員48名が受講)
「労働者へのハラスメント」対策の強化
(高リスク項目への対応)
  • 2022年6月よりハラスメント外部相談窓口を新設
  • 外部有識者を講師に招いた新任組織管理者向けのハラスメント研修の実施
  • 外部相談窓口の案内と人権方針を記載した携帯用カード「Human Rights Card」の制作と配布
「物流会社の労働者の安全衛生管理」の推進
(高リスク項目への対応)
  • 「物流2024年問題」を切り口に、トラックドライバーの実態等について人権視点をもって考えるべく、外部有識者講師による物流担当者向け人権研修を実施(2024年7月・8月、グループ内11社167名が受講)

ビジネスと人権に関する社外プログラムへの参加

ステークホルダー・エンゲージメントプログラム

(株)日清製粉グループ本社は、経済人コー円卓会議日本委員会(以下、CRT日本委員会)が主催するステークホルダー・エンゲージメントプログラム(人権デューディリジェンスワークショップ)に2018年度から参加しています。本プログラムでは、有識者、NGO/NPOと幅広い人権問題をテーマに議論を行い、同プログラムに参加した食品企業各社とともに、UNEP FI(国連環境計画・金融イニシアティブ)策定の「人権ガイダンスツール」を参考に策定した「業界毎に重要な人権課題」の見直しを行い、食品業界における人権課題について理解を深めました。

2023年度プログラム最終報告書

日本語:2023年度 ステークホルダーエンゲージメントプログラム(人権デューディリジェンスワークショップ)

英語:2023 Human Rights Due Diligence Workshop (Stakeholder Engagement Programme)

CRT日本委員会

UNDPビジネスと人権アカデミー

国連開発計画(UNDP)が主導する「日本企業進出先国等における責任ある企業行動の促進」プロジェクトに参画し、海外事業場での人権デュー・ディリジェンスの展開等の検討を進めています。
UNDP主催の「ビジネスと人権アカデミー」には、2022年度から参加を継続しています。2023年2月実施の個別ガイダンスセッションでは、国内外の有識者との対話を通じ、自社の人権の取組みに対する助言等をいただきました。

人権に関する社内啓発の取組み

毎年12月の人権週間に合わせて、従業員に人権尊重の重要性を伝えるべく、(株)日清製粉グループ本社取締役社長によるトップメッセージを発信しています。
また、国内全役員・社員が受講対象の「人権啓発研修」のほか、新入社員及び中途入社社員、新任管理職、新任組織管理者の3階層に分けた研修や、グループ内各事業場の人権推進担当者向けの研修も毎年実施しています。
さらに、社内イントラや社内報等を利用した「人権カフェテリア」という媒体を通して、全従業員向けに人権に関するさまざまな情報を定期的に発信しています。

人権啓発研修

同和問題、職場のハラスメント問題、ジェンダー平等、LGBTQへの理解促進、ビジネス遂行上の人権問題等のさまざまなテーマを継続的に取り上げた動画を配信し、従業員が人権を身近な問題として考える機会としています。

  2021年実績 2022年実績 2023年実績
人権啓発研修受講率 100.0% 100.0% 100.0%

人権啓発研修ワークショップ

従業員一人ひとりが職場や日常生活の中で感じる人権に対する生の声を聞くコミュニケーションの機会を設け、ハラスメント等の防止につなげる目的で、2024年2月より国内事業場単位のワークショップを開始しました。組織におけるダイバーシティ&インクルージョンについて考える対話型カードゲームを使用した全員参加型のディスカッションを実施しています。2024年8月現在、6事業場149名が受講しました。

人権啓発標語

毎年、社員とその家族を対象に人権啓発標語を募集しています。社内審査にて選ばれた優秀作品は、社内ポスター等に掲示しています。

  2023年実績
人権標語応募数 社員 家族 合計
5,322点 374点 5,696点

ハラスメントへの対策

相談窓口の設置とハラスメント防止のための取組み

(株)日清製粉グループ本社には、グループの従業員を対象に、ハラスメント全般の相談受付、解決に向けた対応、再発防止に向けた施策を行う「ハラスメント社内相談窓口」と「ハラスメント外部相談窓口」を設置しています。
相談にあたっては、相談者及び行為者等のプライバシー尊重と、相談することにより相談者が不当な不利益を受けることはないことを周知徹底し、安心して相談できるよう努め、それぞれの相談について適切に対応を行っています。

また、各相談窓口の詳細や人権方針が掲載されている携帯用のカード「Human Rights Card」を配布し、相談者がいつでも相談できるよう環境を整えています。
窓口の設置・周知だけでなく、新任組織管理者研修や新任管理職研修等の場において、部下等からハラスメント相談を受けた場合の対応方法、管理職としての職場環境への配慮等についての知見を深めてもらうことで各種ハラスメントの防止に日頃から取り組んでいます。このほか、各種ハラスメント防止のためのハンドブックを作成し、企業行動規範・社員行動指針に従い職場におけるハラスメント行為の根絶に取り組んでいます。

  2021年実績 2022年実績 2023年実績
社内窓口相談件数 6 4 5
  • 対象範囲:(株)日清製粉グループ本社、日清製粉(株)、(株)日清製粉ウェルナ、オリエンタル酵母工業(株)、日清ファルマ(株)、(株)日清製粉デリカフロンティア、日清エンジニアリング(株)、(株)NBCメッシュテック

海外事業場の取組み

現地労働法令等の遵守

当社グループでは、すべての海外事業拠点(現地法人)において、ILOをはじめとした国際的規律を遵守した雇用を行っています。特に主要な事業拠点であるアジア地域では、現地における雇用の最低年齢を把握し、具体的な本人年齢の確認方法、実際の従業員の最低年齢についての定期的な調査を2007年度から実施しています。
また、労働条件、安全衛生等、広範囲におよぶ包括的なチェックリストを用いて、現地企業の代表者自らが現地における各種関連法令を遵守していることを確認するよう義務付けています。

差別・ハラスメントの禁止

海外子会社においても、差別やハラスメントのない働きやすい職場づくりに努めています。
文化や価値観の違いにより現地従業員の人権を侵害してしまうことを未然に防ぐため、海外子会社に派遣する社員に対して社内外での研修を通じた教育を行っています。宗教上祈祷が欠かせない土地においては礼拝室を設置し、就業時間内の礼拝を認めたりするなど、現地の文化や伝統、慣習を尊重しています。
また、採用活動においても、人種、性別、信条等による差別をせず、基本的人権を尊重しています。

労務問題に関するリスク評価

新規事業で発生しうる労務問題を防止、または軽減する取組みを、専門家の助言を受けるなどのリスク評価の仕組みを通じて行っています。既存事業においては、上記取組みの継続に加え、労使間で定期的にミーティングを行い、従業員とコミュニケーションを図って良好な関係づくりに努めています。