パンのテーブル、世界の味。 vol.7 パンとたまご フランス 朝のたまご、夜のたまご パンのテーブル、世界の味。 vol.7 パンとたまご フランス 朝のたまご、夜のたまご

フランスで朝食を食べるなら……?

旅の予定を考える時、真っ先に思い浮かべるのはフランスです!私が食の仕事に関わって行きたいと思うきっかけとなったおいしいものが、フランスにはあふれています。何度訪れても、新しい発見がありワクワクします。パリでは、キッチン付きのアパルトマンに滞在することが多いので、朝から近所のパン屋さんに行ったり、気になるカフェやビストロに出かけたりします。朝、昼、夜、それぞれの時間ならではの食を楽しみたいので大忙しです。

新しいお店を開拓したいと思う一方で、リピートする老舗店も色々あります。例えば、ラデュレ。子連れでも安心して行けますし、パリが初めて!というお友達にも喜ばれます。朝食のパン・ペルデュは定番人気。丸い円柱形のブリオッシュ・ムースリーヌを使っているのが特徴で、とてもシンプルな仕立てですが、食べてみると口溶けの良さに驚かされます。
プレーンなものは、メープルシロップとクレーム・シャンティ(甘味のある泡立てた生クリーム)が添えられます。こちらも美味ですが、ローズ風味のクレーム・シャンティとラズベリーピュレ&ラズベリーが添えられたもの(①)も、うっとりするおいしさです!シンプルに焼きたてのヴィエノワズリーを選ぶのもいいですね。息子はパン・ペルデュよりもパン・オ・ショコラが好きなので自分で選んでいました(②)。

フランスでは、パン・ペルデュをブリオッシュで作るのは定番で、ビストロのデザートメニューで登場することもあります。ブリオッシュ生地自体がたまごとバターがたっぷりでとてもリッチなので、これだけでスイーツとして完成された味わいになるのです。パリの人気ビストロの子どもコースのデザート(③)のパン・ペルデュはブリオッシュ・ナンテールで作られたものでした。こちらもなかなかのおいしさでした。
※ブリオッシュ・ナンテール….パリ郊外のナンテールのブリオッシュ。長方形の型に入れて焼き上げます。

パン・ペルデュ

材料(2枚分)
ブリオッシュ・ナンテール
(30㎜スライス)
2枚
無塩バター
12g
メープルシロップ
適量
【たまごのアパレイユ】
たまご
1個
ひとつまみ
グラニュー糖
10g
【牛乳のアパレイユ】
牛乳
200ml
グラニュー糖
20g
バニラビーンズ
1/4本
  1. ※パン・ペルデュ(Pain perdu)とはフランス語で、直訳すると「失われたパン」の意味です。英語ではフレンチトースト(French Toast)と言いますね。元々は、古くてかたくなった残り物のパンを無駄にしないために生まれたメニューです。

作り方
  • たまごのアパレイユを作る。たまごをボウルに割り入れてカラザを取る。塩ひとつまみを加えてよく溶きほぐし、グラニュー糖も加えてよく混ぜる。
  • 牛乳のアパレイユを作る。牛乳、グラニュー糖20g、バニラビーンズ(縦半分に切り、ペティナイフで種をこそげ取る)をさやごと鍋に加える。沸騰直前まで温めてグラニュー糖を溶かす。
  • ②を目の細かいザルかシノワで漉してバットに入れる。ブリオッシュ・ド・ナンテールをひたして、耳までしっかりとアパレイユをしみ込ませる。
  • ③を①のアパレイユにくぐらせ、全体にたまごをからめるようにする。
  • フライパンに無塩バターの半量を溶かし、④を中火で焼く。焼き色が付いたら裏返し、残りの無塩バターも加えてバターが焦げないように香りよく焼き上げる。両面に焼き色が付いたら側面を立てるようにして、耳も焼き色を付ける。
  • 器に盛り、メープルシロップをかけていただく。お好みでフルーツや、生クリーム(10%のグラニュー糖を加えて泡立てる)を添えてもよい。
調理のコツ!
  • 一般的なパン・ペルデュのレシピでは、たまごと牛乳を合わせたアパレイユをパンにしっかりしみ込ませて作ります。でも、たまごが入ったアパレイユはパンにしみ込みにくく時間がかかります。焼く際には、中までしっかり火を通すのも時間がかかり生焼けになってしまうことも。
    おすすめは、たまごと牛乳を分けて使う作り方です。バニラが香る甘い牛乳はあっという間にパンにしみ込みます。ブリオッシュにはたまごがたっぷり入っているので、牛乳だけでも充分リッチな味わいです。たまごは表面にからめるだけ。これなら、中まで火を入れなくても焼き色が付けば完成です。短時間で、失敗なくおいしく作れます!

アレンジレシピ

ウフ・ア・ラ・コックとムイエット

ウフ・ア・ラ・コックとムイエット

フランスの朝食の定番といえば、たまごかけご飯ならぬ、たまご付けパンです!
たまごは殻付きのとろとろゆでたまごで、これをフランス語ではウフ・ア・ラコック(Œuf à la coque)と言います。ここに添えるパンは、細切りにするのが基本です。細切りにする理由は、たまごの殻の中に入れやすいから。食べてみると納得のバランスなのです。この細切りパンはムイエット(Mouillette)と言います。
とろとろゆでたまごのゆで時間はたったの3分。忙しい朝にぴったりのスピードメニューなのです。

材料
たまご
1個
角食パン(8枚切り)
1枚
塩、黒こしょう
少々
作り方
  • 小鍋に湯を沸かす。沸騰したらたまごを入れて3分ゆでる。
  • 角食パンは耳を切り落とし、細切りにしてからトーストする。
  • ①をエッグスタンドにのせ、殻の上部をペティナイフを使ってカットする。
  • たまごに塩、黒こしょうで軽く調味して、②に付けながらいただく。

POINT

フランスのパンというと、バゲットのイメージが強いのですが、型に入れて焼いた食パンも定番です。
たまごに添えるムイエットもですし、クロックムッシュに使うのも基本は食パンです。
フランス語では、パン・ド・ミ(Pain de mie)と言いますが、ミとは中身のこと。バゲットが皮を楽しむパンであるのに対して、パン・ド・ミは中身のパン。中身の白いところだけをいただくほうが上品な味わいです。
でも、耳も好き!という方は、耳もトーストして、食感や香りの違いを比べながら楽しむのもいいですね。

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夜のたまご、ウフマヨネーズ!

朝のたまごもいいですが、夜にたまごをいただくのもいいものです。フランスで、夜のたまごの代表メニューと言えば、“ウフ・マヨネーズ(Œufs durs mayonnaise)“です(パリのビストロにて①②)。その名の通り、たまごとマヨネーズを合わせただけのシンプルな一皿ですが、気取らないビストロの定番前菜メニューなのです。

食べ比べてみると、お店ごとに味の印象がずいぶんと違うことに驚かされます。シンプルがゆえにマヨネーズの味付けやたまごのゆで加減で、ガラッと味が変わります。なかなか奥が深いメニューです。
パンを添えれば、たまごサンドそのものでワインにも合うんですよね(パリのビストロにて③)。ということは、たまごサンドを買ってきて、ワインと楽しむのもありかもしれません。味が足りないなーと思ったら、ディジョンマスタードやカイエンヌペッパーをひと振りするか、アンチョビをちょっとプラスするとおつまみ仕様のたまごサンドになりますよ。
でも、どうせなら、やっぱりマヨネーズから手作りして、究極のおつまみウフマヨサンドを作るのが良さそうですね。