パンのテーブル、世界の味。 Vol.5 パンとチーズ スイス ラクレットとチーズフォンデュ パンのテーブル、世界の味。 Vol.5 パンとチーズ スイス ラクレットとチーズフォンデュ

何はなくとも、チーズにはパンを。

パンにおいしいチーズを合わせたい!と、パン好き人間はついパンが主語になりますが、パンはチーズがなくてもおいしくいただけます。そう、バターだけだって、充分おいしいもの。でも、逆にチーズを主語にしてみると話が違います。チーズだけを食べるより、パンを合わせたほうが断然おいしい。ましてや、チーズフォンデュとなるとパンは必須です!
うちの夫がスイスに出張に行った時、スイス人の同僚クリストフの実家に誘われたそうです。ご両親が用意してくれていた食事は「チーズフォンデュ」。
それも自宅で食べるのではなく、チーズの入った鍋とパンを持たされて、牧場を通り抜けて森の中へ。11月の寒い夜、森の中でキャンドルを灯し、たき火の準備をしてとろーりアツアツのチーズをパンに付けながら、ただひたすらチーズとパンだけを食べたとか。このことをうらやましく思っていたら、なんとその後、私もクリストフの実家に遊びに行けたのです!

私がスイスを訪れたのは夏。
その時は、チーズフォンデュではなくラクレットをいただきました。
“ラクレット(Raclette)” とはスイス南部で生まれた山のチーズです。溶けたチーズをナイフで削るという意味の “ラクレ” がその料理とチーズの名前になっています。スイスだけでなく、フランス、ドイツでも冬の定番料理として親しまれていて、ラクレットグリルと呼ばれる専用ホットプレートは多くの家庭にあるそうです。ラクレットも本当は冬の料理なんだけどせっかくだから、とクリストフのお母様が広い庭先にテーブルを出して、素敵にセッティングしてくれました(①)。
この時はパンはなくて、炭水化物はじゃがいも(②)だけ!皮ごと蒸したじゃがいもは、こうやって皮をむくのよ!(③)とマダムに教わって、溶けたチーズをたっぷりとかけていただきました。パンは自分で買って行けばよかったなと思いながら、じゃがいもとチーズでお腹がいっぱいになりました。

チーズフォンデュ

材料(2人分)
お好みのチーズ
200g
白ワイン
100ml
ニンニク
1/2片
片栗粉
小さじ1
白こしょう
少々
(あれば)ナツメグ
少々
バゲット
適量
(お好みで)ブロッコリー、じゃがいも、ミニトマト等
適量
  1. ※チーズは、グリュイエールとエメンタールをブレンドすれば本格的な味わいです。なければお好みのチーズをすりおろすか細かく切って使ってください。ブルーチーズを少量加えると、コクがでて、大人っぽいおいしさになります。

作り方
  • チーズはすりおろすか細かく切って、片栗粉をふりかけて全体を混ぜ合わせる。
  • 鍋の底に、ニンニクの断面をこすりつけて香りを付けてから、白ワイン入れて火にかける。沸騰させてアルコール分を飛ばし、①を2〜3回に分けて加えながら溶かし混ぜる。
  • 白こしょう、ナツメグを加えて香りを付ける。
  • 一口大に切ったバゲット、お好みの野菜を添えて、チーズをたっぷり付けながらいただく。
調理のコツ!
  • 小さなお子様や、アルコールが苦手な方がいらっしゃる場合は、白ワインを牛乳に変えて作ることも出来ます。
    チーズフォンデュ専用の鍋があると便利ですが、ない場合はカセットコンロでごく弱火にかけて。鍋底が焦げ付きやすいので、パンにチーズをからめる時は、鍋底からすくうように混ぜながら付けましょう。
    途中で、お好みのハーブやスパイス、刻んだトマト等を加えて味に変化を付けながら楽しむのもおすすめです!

アレンジレシピ

ラクレット

ラクレット

暖炉の火でチーズをあぶり、とろとろになった所をパンにのせてほお張る…… 子供の頃に「アルプスの少女ハイジ」のワンシーンを見てあのチーズパンが食べたい!と憧れた人は多いのではないでしょうか。本格的な冬を迎え、焼いてとろけたチーズとパンの組み合わせがしみじみとおいしく感じられます。
ハイジが食べていたのが “ラクレット(Raclette)” !
スイスが本場ですが、今は日本でもラクレットと同様の製法のチーズを作っているところもあり、食パン専門店のトーストメニューでも人気になっています。
本物のラクレットチーズで挑戦していただきたいところですが、手に入りにくい場合は、市販のシュレッドチーズやスライスチーズを溶かすだけでも雰囲気は楽しめます。
パン以外の定番はじゃがいもとキュウリのピクルス。
ほくほくのじゃがいもにとろーりチーズはそれだけでも美味。ピクルスの酸味を間にはさむと、飽きずにおいしくいただけます。生ハムを合わせて、サンドイッチにするのもおすすめです。

材料(2人分)
お好みのパン
適量
お好みのチーズ(あればラクレットで!)
適量
(あれば)生ハム、じゃがいも、ピクルス
適量
  1. ※パンはカンパーニュやライ麦パンがおすすめです。「アルプスの少女ハイジ」のように、黒パンにたっぷりのせると雰囲気満点です!
作り方
  • テフロン加工のフライパンにチーズを入れて中火にかける。チーズが溶けたらフライパンからすべらせるようにしてチーズをパンにのせる。
  • お好みで、蒸したじゃがいも、生ハム、ピクルスを添えて一緒にいただく。

アレンジレシピ

プルアパートブレッド

プルアパートブレッド

海外のSNSで人気が広がった “Pull Apart Bread(プルアパートブレッド)” は、パンとチーズのおいしさを手軽に楽しめるメニューです。簡単なのに、パーティーの主役になるビジュアルも魅力的。みんなでわいわい、手でちぎりながらいただくのも楽しいものです。
ハムやベーコンをプラスするとより豪華になります!
冷蔵庫にある食材を組み合わせて、色々アレンジしてお気に入りの組み合わせを見付けてみてください!

材料(2人分)
ブール
1個
お好みのチーズ
適量
アンチョビ
4〜6枚
EXVオリーブオイル
大さじ2〜4
イタリアンパセリ
少々
  1. ※お店によってブールの大きさが違うので、チーズはパンの大きさに合わせて調整しましょう。
作り方
  • ブールは、下まで切り落とさないように、格子状に切り込みを入れる。手でちぎった時に食べやすい大きさの幅にする。
  • 切り込みの間にすりおろすか細かく刻んだチーズをはさむ。さらにアンチョビをちいさく刻んでチーズの間に入れる。
  • ②をアルミホイルにのせ、上面にEXVオリーブオイルをかける。200度に予熱したオーブンに入れ、チーズが溶け、軽く焼き色が付くまで焼く。
  • 仕上げに刻んだイタリアンパセリをのせる。

POINT

チーズはハード系、セミハード系を2〜3種類組み合わせるとコクがでますが、市販のシュレッドチーズを使うと手軽です。チーズフォンデュと同様に、ブルーチーズをアクセントで少量加えても美味。
モッツァレラチーズを使う場合は、生ハムやバジルを合わせて塩分と香りをプラスするとバランス良く仕上がります。

はちみつをかけてもおいしくいただけます。

小型のブールなら、オーブントースターで焼くことも出来ますが、上面が焦げやすいのでアルミホイルをかぶせて焦げないように注意しましょう。
ブール以外にも、お好みのパンでアレンジできるので、オーブントースターで作るなら、食パンでお試しください!1斤を3等分に切った3枚切りの厚さがおすすめです。

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溶かさないでいただく、スイスのチーズ

スイス料理といえば、チーズフォンデュやラクレットなど、溶かしていただくチーズ料理が有名ですがもちろんそのままでいただくものもあります。
前述のクリストフ宅でラクレットをいただく前に、最初に出来てきたのはテット・ド・モワンヌ(①、②)でした。テット・ド・モワンヌとは、スイスの修道院で作られはじめたチーズで、直訳すると「修道士の頭」。グリュイエールやエメンタールのような大型のチーズと比べると小ぶりで、確かに頭のようなコロンとした形をしています。1個800g位。水分が抜けて凝縮しているので見た目よりもずっしり重たく感じます。
ジロールという専用の道具で削っていただくのですが、これがとても楽しいのです!チーズの真ん中に芯を突き刺して、刃をくるくる回しながら削る(①)と花びらのようにまとまります(②)。息子は口をあけて見入っていました。

ラクレットをいただいたメインのテーブルとは別に、アペティフ用の丸テーブル(③)があり、テット・ド・モワンヌはこちらでシャンパンと一緒にいただきました。
チーズがメインで、手のかかる料理は何もないのですが、さわやかな空気の中でのひとときは、何にも代えがたい贅沢な時間でした。ただ一つ、心残りだったのは、ここにもパンがなかったこと!今度クリストフ宅に行くことがあれば、駅前でパンを買って行こうと心に決めています。