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2023.02.10 Fri

「なんとなく不調」を整える自律神経のお話 ④(全5回)

自律神経を整えて、頭も腸も穏やかに

頭痛は頭部、便秘・下痢は腸、それぞれに問題があると考えていませんか?人間の体は複雑で、思わぬところが思わぬ部分に影響を与えているものです。そのカギを握るのが自律神経。交感神経・副交感神経の収縮・拡張の仕組みを理解することで、突然やってくる頭の痛みや腸の不調を予防したり和らげたりする手立てを探っていきましょう。

頭痛は頭部、便秘・下痢は腸、それぞれに問題があると考えていませんか?人間の体は複雑で、思わぬところが思わぬ部分に影響を与えているものです。そのカギを握るのが自律神経。交感神経・副交感神経の収縮・拡張の仕組みを理解することで、突然やってくる頭の痛みや腸の不調を予防したり和らげたりする手立てを探っていきましょう。

頭痛の代表「片頭痛」「緊張性頭痛」とは?

「片頭痛」や「緊張性頭痛」にお悩みの方は多いのではないでしょうか。片頭痛は、血管が拡張することで感じる、ズキズキと脈を打つような痛み。頭の片側あるいは両側が痛みます。緊張性頭痛は、反対に血管が収縮することで感じる、頭全体が締めつけられるような痛み。どちらも血管の収縮・拡張に起因しており、自律神経と深い関わりがあります。

片頭痛が起こる原因はまだはっきりとは解明されておらず、気温の変化や気圧の急変、特定の食べ物を食べることなどで引き起こされるのではないか...と考えられています。女性ホルモンも関与していて、女性に症状が出やすいのはそのためという説も。気象病については第2回で詳しく取り上げましたが、気圧の変化によって片頭痛が起こる仕組みを簡単にご紹介しましょう。

一方、緊張性頭痛は、首から肩、頭の後ろの血行不良によって老廃物が溜まり、それが神経を刺激して起こるといわれています。デスクワークなど長時間同じ姿勢を続けていると起こりやすいようです。

片頭痛と緊張性頭痛には、さまざまな治療法が試みられていますが、どちらの頭痛にも効果が見込まれる対策は、やはり血管の収縮・拡張をつかさどる自律神経を整えること。片頭痛と緊張性頭痛にお悩みの方は、それぞれに適した対策を取り入れてみてはいかがでしょうか?

片頭痛には、血管の拡張を抑える対策を

・体を動かさず、できれば横になって安静に。アイマスクなどで光の刺激を遮断するのもおすすめ。

・こめかみを冷やして血管を収縮させて。入浴は血管が余計に拡張するので湯船につかるのは避け、軽めのシャワーで済ませましょう。

緊張性頭痛には、血管の収縮を抑える対策を

・ストレッチやウォーキングで血行を促進。普段から姿勢を正しくして首や肩に負担をかけないようにするのも効果的。

・体を冷やさず、肩や首まわりは特に温めて!ぬるめのお風呂にゆっくりつかって収縮した血管をゆるめましょう。

自律神経を整えて頭痛をケア

指先を使って、顔や頭、体をトントンと軽く叩くことを「タッピング」といいます。特にツボの多い顔や頭を一定のリズムでやさしくタッピングすると、自律神経が整い、リラックスにつながります。なんとなく頭が重たいと感じたときや、これは頭痛かな?と感じたとき、すぐにできるセルフケアといえそうです。一定のリズムを刻むことは普段の生活にも応用できます。イライラしているな、緊張しているな、と感じたら、自身の腕をやさしくゆっくりと叩いてリズムを刻んでみましょう。あわせて深呼吸をすると、自律神経が整い、心が落ち着いてくるはずです。

自律神経を整えるタッピング
人差し指から薬指の3本の指先を使って、①~⑥の順に30秒ずつやさしくトントン叩きます。

お腹の不調は自律神経の乱れ?腸と自律神経の深い関係

腸は、ぜん動運動によって腸内の不要なものを排出してくれるのですが、このぜん動運動も自律神経によってコントロールされています。血管の場合、交感神経が優位だと収縮、副交感神経が優位だと拡張するのに対し、腸の場合は交感神経が優位だと拡張(抑制)、副交感神経が優位だと収縮(活発)します。緊張感のある外出先ではなく、家に帰ってホッと気持ちが落ち着いたときに便意をもよおすことがあるのは、こうした自律神経の働きによって引き起こされているといえそうです。

また便秘や下痢になるのは、ぜん動運動が、自律神経の乱れに左右されてしまうことが原因の1つ。腸内環境を整えるために、発酵食品や乳酸菌入り食品などを積極的に摂取していてもあまり効果が出ない場合は、自律神経にも着目してみましょう。ちなみに排便は必ずしも毎日なくても大丈夫。2日や3日に1回でも、それが定期的なリズムであればOKです。

副交感神経を優位にして朝すっきりな毎日を

腸は交感神経が優位だと拡張、副交感神経が優位だと収縮する、ということは、リラックスモードは快便に欠かせないポイントといえそうです。自律神経が整っていると、夜にリラックスをつかさどる副交感神経が優位になるので、体は"お休みモード"になりますが、腸は"働きモード"にチェンジ。朝に向かってせっせとぜん動運動を行っています。目覚めて"朝のおたより"があるのは、睡眠中に働く副交感神経のおかげといえるでしょう。

自律神経が整う3つの習慣を日々取り入れて、すっきり爽快な毎日を目指してみませんか?

●副交感神経を優位にする3つの習慣
その1:目覚めに水を飲む水は、消化管を刺激し副交感神経の働きを良くします。朝起きて、まず1杯の水を飲むことを習慣にしましょう。こまめな水分補給で、1日1~2リットル飲むのがおすすめ。
その2:よく噛む咀嚼(そしゃく)のリズムは副交感神経の働きを良くします。ゆっくりとリズミカルに、よく噛んで食べましょう。
その3:夕食は寝る3時間前に夕食中は交感神経の働きが高まりますが、食後は胃腸が働きはじめ、副交感神経の働きが徐々に高まり、交感神経の働きは反対に低下。お休みモードに切り替わります。この切り替えには食後3時間かかるといわれているので、夕食は就寝3時間前までに済ませましょう。

このシリーズ(全5回)の他の記事を読む

①自律神経はメリハリが大切!

②季節の変わり目はなぜ体調を崩しがち?気候と自律神経の密接な関係

③調子が悪いのは、年齢のせいだとあきらめていませんか?

⑤自律神経が整う、朝昼晩おすすめルーティーン

  • <参考書籍>
  • ・小林弘幸(講師). NHK趣味どきっ!カラダが変わる!自律神経セルフケア術. NHK出版, 2019.
  • ・小林弘幸. 眠れなくなるほど面白い 図解 自律神経の話. 日本文芸社, 2020年初版, 2021年第21刷.

<監修>

小林弘幸

順天堂大学医学部教授/日本スポーツ協会公認スポーツドクター