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2022.03.25 Fri

ウェルナビ×&Premium Vol.3

文筆家 甲斐みのりさんの機嫌よく過ごすための7つのメソッド

与えられた時間は平等なのだから、より楽しく生きたほうが得。そうわかってはいるけれど、実践するのは案外難しいことかもしれません。嫌なことがあっても気分を害さず、毎日を楽しく過ごす。「それにはちょっとしたコツがあるんです」と話してくれたのは、文筆家として活動している甲斐みのりさん。誰にでも真似できる、自分の機嫌をとるための7つのメソッドを教えていただきました。

与えられた時間は平等なのだから、より楽しく生きたほうが得。そうわかってはいるけれど、実践するのは案外難しいことかもしれません。嫌なことがあっても気分を害さず、毎日を楽しく過ごす。「それにはちょっとしたコツがあるんです」と話してくれたのは、文筆家として活動している甲斐みのりさん。誰にでも真似できる、自分の機嫌をとるための7つのメソッドを教えていただきました。

プロフィール
甲斐みのり
プロフィール

甲斐みのり

文筆家。プロダクションLoule(ロル)主宰。旅、散歩、お菓子、手みやげ、地元パン、アイス、クラシックホテルなどを主な題材に、書籍や雑誌に執筆。食・店・風景・人、その土地ならではの魅力を再発見するのが得意。著書は40冊以上。地方自治体の観光案内パンフレットの制作や、講演活動も行う。http://www.loule.net

1 よく歩く

「以前は取材や講演などで月に数度は旅に出ていましたが、ここ数年は思うように遠出することができなくなりました。そこで私は、毎日を過ごす自分の街を好きになろうと思ったんです。まずは街を知るために、散歩をすることにしました。普段から1〜2駅くらいなら歩いてしまうし、時間のある日は1万歩以上歩くこともあります。散歩って、どの道を選んでもいいし、好きなように寄り道していいし、すべてを自分で選択できるすごく自由な時間だと思うとうれしくなる。とはいえ目的があるほうが歩く気になるので、隣町の友人の家への届け物を目的にしたり、歩数ごとにポイントが貯まるアプリを入れたりもしています」

2 好きなお店に通い続ける

「新しいお店も好きですが、街に昔から根づいているようなお店が特に好き。どこにいたってお取り寄せができる便利な世の中ですが、"自分の街の味"を大切にしたいと思っています。いつでも行けると思うと後回しにしてしまうかもしれませんが、閉店してしまったら後悔先に立たず。お店がいつまでも続きますようにという応援の気持ちも込めて、なるべく足しげく通おうと心がけています。通ううちにお店の人と仲よくなることもあって、会話をするのが散歩の楽しみにもなっています」

『藤の木』
東京都杉並区西荻北3-16-3
電話:03-3390-1576
営業時間:8:30~19:00 日曜・祝日休

3 喫茶店を書斎代わりに使う

「自分の家のほかに、居心地のいい場所があるってうれしい。だから私は気になるお店には、迷わず入ってみることにしています。緊張することもあるけれど、自分が体験したうえで、誰かの評価ではなく自分で星をつけることが信条。それが旅先の地方だと、ヨソモノ感丸出しで浮いてしまうこともありますが、そのおかげで常連客の方々が話しかけてくれるので楽しいんです。逆に東京では、初めて行ったお店でもすっとなじめるのがいいところ。お客さんがみんなそれぞれ、自分の世界に入っている感じがとっても好きです。私もコーヒーを飲みながら静かに仕事をしたり、手持ちの本やお店の蔵書を読んだりして過ごします」

『どんぐり舎』
東京都杉並区西荻北3-30-1
電話:03-3395-0399
営業時間:10:00~21:00 無休

4 公園で過ごす

「散歩の途中で歩き疲れたら、公園でひと休みすることが多いです。公園のベンチに座って花を見て季節を感じたり、街ゆく人を眺めたり。どの街にも公園はあって、予想以上にいろんな人がいて面白いんですよ。自分のことを棚に上げて(笑)、この人は平日のこんな時間にいったい何をしているんだろう?なんて観察していると、まるで映画を観ているような感覚に。散歩の途中に買ったパンやお菓子を食べることも楽しみなので、いつもコーヒーとお茶を入れたポットを2つ持って歩いています」

5 お気に入りのワンピースを着る

「ウォーキングをするというとスポーツウェアにスニーカーを選ぶ人も多いと思いますが、私はいつもの服装に、歩きやすいお気に入りの靴で出かけます。いちばん好きなのはワンピースです。今日着ているのは、昔のフランスの看護服をイメージして作ったというもの。大好きなワンピースを着ているだけで、なんだか自信がわいてきて、自分のことまで好きになれるから。落ち込んでいる時や、疲れている時は、好きな服を着ると元気が出るかもしれませんね」

6 加点法でものを考える

「がっかりすることって損じゃないですか?あらゆることを加点法で考えるようにすると、だいたいのことが楽しくなります。例えばお店や宿で、普通ならマイナスに感じる出来事があったとしても、それを面白いと捉えて、友人に笑って話すだけで楽しい思い出になる。この考え方が癖になったのは、好きなことを書き出すという作業のおかげだと思います。好きなものや好きなことが増えていくと、それだけで自分が強くなれる気がして、若い頃からずっと習慣にしているんです。人の評価や星を信じるよりも、自分のものさしで、いいところを見つけて価値観をつくり上げていくほうがずっと面白い」

7 銭湯でリフレッシュ

「古き良き昔ながらの銭湯が好きで、自分の街の銭湯がある場所を頭の中にインプットしています。好きな場所が増えることで散歩の楽しみは増えるし、街から消えゆく銭湯に残ってほしいという応援の気持ちもあります。散歩に出かける時は、帰り道に気軽に銭湯に寄れるよう、いつも手ぬぐいを持ち歩いているんです。体を洗うのと拭くのとで2枚を必ず。手ぬぐいは持ち歩くのにかさばらないし、濡れてもすぐに乾くし、本当に便利。好きな色柄のものをいくつか持っていて、夏は首にかけて帰ることも。私のバッグの中の必需品は、お化粧直しのコスメよりも手ぬぐいです(笑)」

『天狗湯』
東京都杉並区西荻南1-21-4
電話:03-3333-9461
営業時間:15:45~23:45 火曜・金曜休

甲斐さんの7つのメソッドの効果とは?

甲斐さんが機嫌よく過ごすために普段から実践している7つのメソッドを、臨床心理士の宮本典子さんに心理学的観点から検証していただきました。

「悲観的になったり、イライラしたりすることなく、日々を楽しく過ごすには、誰かに頼るのではなく、セルフケアをきちんとすることが大切。甲斐さんは自分がどうしたら楽しくなるかを知っている、言ってみれば自分の常備薬をわかっています。だからポジティブに生きていけるんですね。
心理療法の中に認知行動療法というものがあります。私たちのものの考え方や受けとり方(認知)に働きかけ、気持ちを楽にしたり、ストレスに上手に対処できるようにする療法です。『街を歩いて好きなところを見つける』『好きなことやものをリストアップする』などは、自然に認知行動療法の手法が身についているといえますね。特に書き出すという行為は、意識を外在化することによって強化できるとてもよい方法です。『好きな服を着て歩く』ということも、表層を変えることによって内面(気持ち)を変えることにつながります。
また、喫茶店や銭湯のように、自分が安心できる場所を知っていることも、ストレスケアの大切な要素です。公園で過ごす時間を大切にされている甲斐さん、『よく観察をする』とのこと、ここが重要です。というのも、人はただ座ってぼんやりしているつもりでも、実はいろいろなことを考えてしまっているのです。観察するということは、今見えているものに集中して感じとるということ。"今、ここ"に意識を向けることで心を安定させるマインドフルネスにつながります。
『昔ながらの店を応援するつもりで通う』というのも、心を強くする心理的効果があります。コロナ禍で『利他』という言葉が注目を集めていますが、他者のために何かをする行為は、その人自身をも強くもするのです。
甲斐さんはこれらを続けることによって、結果的に自分のものさしを持てるようになっています。ものさしが固い人は周囲と軋轢を起こしやすいけれど、甲斐さんの場合は年代や環境によって変化させることができるような柔軟性があるのもいいですね。
また、甲斐さんのようにいくつものメソッドを持っていると、臨機応変に対応できるから安心。誰もがすぐに真似できる方法がたくさんあるので、自分に合うか試してみるのもいいと思います」

プロフィール

宮本典子

臨床心理士、公認心理師。都内精神科クリニック、中・高・大学のスクールカウンセラー、企業の産業カウンセリングなど、20年以上、さまざまな場所で幅広い世代を対象に心理臨床経験を積んでいる。

記事制作/マガジンハウス「&Premium」編集部 出演/甲斐みのり 解説/宮本典子 撮影/馬場わかな 取材・文/藤井志織