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2021.11.19 Fri

専門医が教える!健康に役立つ「お風呂の入り方」 ③(全5回)

\疲れた心を癒やそう/「マインドフロ(風呂)ネス」でイライラもスッキリ!

人間にはポジティブなことよりも、ネガティブなことに強く反応してしまう傾向があるといわれています。楽しかったことよりも、嫌だったこと、つらいことばかり思い出してイライラしたり、「もっと悪いことが起こるかも」と落ち込んでしまったり...。今回は、そんなネガティブな気持ちまでスッキリ癒やしてくれる、お風呂の魅力をご紹介します。

人間にはポジティブなことよりも、ネガティブなことに強く反応してしまう傾向があるといわれています。楽しかったことよりも、嫌だったこと、つらいことばかり思い出してイライラしたり、「もっと悪いことが起こるかも」と落ち込んでしまったり...。今回は、そんなネガティブな気持ちまでスッキリ癒やしてくれる、お風呂の魅力をご紹介します。

入浴は最も身近な癒やしツール

これまでに、ぬるめのお湯には心身のリラックス効果があること(第1回)、お風呂でのストレッチでこわばった肩や腰をほぐせること(第2回)をご紹介してきました。

しかし、忙しい現代人に覚えておいてほしいのが、入浴がもたらす精神的ストレスの解消や心を癒やす効果です。

お風呂は身近なものですが、その分、入浴の持つ価値が見逃されがちです。「今日は疲れているから、シャワーだけ」という人もいると思いますが、それはあまりにももったいないこと。湯船につかることで、以下のような解放感が得られることをぜひ知っておいてください。これまでの研究で、毎日習慣として湯船につかる人のほうが、幸福度が高いこともわかっています1)

わざわざ遠くまで出かけたりお金をかけたりしなくても、日々の暮らしで簡単に疲れを癒やしリラックスできるツール。それがお風呂なのです。

シャワーだけでは得られない!
入浴の解放力 2)3)

●日常からの解放

お風呂は衣服を身に着けない「非日常的」な空間。1人でゆったりとお湯につかる時間は、心にとっても体にとっても究極のリラックスタイムです。

●重力からの解放

入浴での浮力作用によって重力から解放。お湯の浮遊感を感じながらゆったりつかると、体はもちろん脳もリラックスしてα波(アルファ波)が出ます。

●緊張や焦りからの解放

ストレスが増えると体は緊張してこわばり、いつまでも脳が興奮して休まりません。38~40℃のぬるめのお湯にゆっくりつかることで、リラックス効果をつかさどる副交感神経が優位になり、興奮状態をオフ。自然とリセットできるのです。
※反対に、やる気が起きないとき、眠くて目覚めが悪いときは、42℃の熱めのシャワーを浴びれば、緊張をつかさどる交感神経が刺激され、体が活動モードに切り替わります。

●緊張や焦りからの解放
ストレスが増えると体は緊張してこわばり、いつまでも脳が興奮して休まりません。38~40℃のぬるめのお湯にゆっくりつかることで、リラックス効果をつかさどる副交感神経が優位になり、興奮状態をオフ。自然とリセットできるのです。
※反対に、やる気が起きないとき、眠くて目覚めが悪いときは、42℃の熱めのシャワーを浴びれば、緊張をつかさどる交感神経が刺激され、体が活動モードに切り替わります。

1日の終わりは
『マインドフロ(風呂)ネス』で
リラックス

考えても仕方のないことにくよくよしてしまったり、不安な気持ちにとらわれて落ち込んだり。そんなネガティブな考えやマイナスの感情にとらわれず、心を「今」に向けた状態に整えることをマインドフルネスといいます。瞑想や呼吸法などさまざまな方法があるようですが、ここでおすすめしたいのが、お風呂の時間に行う「マインドフロ(風呂)ネス」です。

湯船につかってさまざまな解放感を得てリラックスした状態は、マインドフルネスに最適な環境といえます。1日の終わりは、「マインドフロネス」で、最高のリラックスを楽しみましょう。

「マインドフロ(風呂)ネス」の
ポイント

1.40℃のお湯にゆっくりと
基本の入り方は、「医学的に正しいお風呂の入り方(第1回)」と同様です。ぬるめのお湯は疲労回復やリフレッシュ、体の痛みの緩和にもつながります。また、ぬるめのお湯にゆっくりつかることで、唾液に含まれているストレスホルモン(コルチゾール)が減ることが報告されており、毎日湯船につかる人には幸福感が高い人が多いということが明らかになっています1)
2.浴室の照明を落とす
夜に入浴する人が多いと思いますが、就寝前に明るい光を浴びると目がさえて寝つきが悪くなりがちです。私たち現代人の生活は、ここ100年ほどで急激に明るくなりました。しかし人間の体は、生物として「サーカディアン(概日)リズム」という太陽の動きと関係する約24時間周期のリズムで成り立っています。夕方は夕日のオレンジ色、夜はろうそく程度の明かりで暮らしてきたのです。

夜の入浴時にはぜひ、照明を暗めにして心と体を休ませてあげましょう4)キャンドルが面倒なときは、脱衣所からの光を活用して浴室は照明を消すのが手軽な方法です。すりガラスなら柔らかい光が目にも優しいでしょう。お風呂上がりも入眠するまでテレビやスマホをチェックせず、間接照明など薄暗い明かりの中で過ごしましょう。
3.10分間の瞑想タイムを設ける
お湯につかっている10分間を瞑想の時間にします。瞑想といっても難しく考えず「積極的にぼんやり」して、脳に余計な刺激を与えないようにすればOK。考えが浮かんでも呼吸に集中するようにします。腹式呼吸で3秒かけて鼻から息を吸い、5秒かけて口からゆっくり吐き出します。湯船からの湯気を吸えば、鼻やのどが潤い、粘膜免疫の防御力もアップします。好きな香りの入浴剤などを使う芳香浴をしながらの瞑想もおすすめです。エッセンシャルオイルやアロマオイルを使う場合は、肌に触れないよう、お湯を張った洗面器にたらして香りを楽しみましょう。

最近では、お風呂にまでスマホを持ち込んで動画を見たり、SNSをチェックする人が増えているようですが、これでは脳がいつまでたっても休まりません5)お風呂の間だけでも、スマホやタブレットから離れてデジタルデトックス&瞑想で呼吸に集中し、目と脳を休ませましょう。

このシリーズ(全5回)の他の記事を読む

①体が喜ぶ「正しい入浴法」とは?

②\こりにサヨナラ!/お風呂ストレッチ

④\レッツ!温活/キレイを育てる入浴法

⑤\覚えておきたい/お悩みレスキュー入浴法

  • 1)早坂信哉. 最高の入浴法. 大和書房, 2018, p.38-41, p.99.
  • 2)早坂信哉. 最高の入浴法. 大和書房, 2018, p.33, p.36, p.66.
  • 3)早坂信哉. たった1℃が体を変える ほんとうに健康になる入浴法. KADOKAWA, 2014, p.92-93.
  • 4)早坂信哉. 最高の入浴法. 大和書房, 2018, p.78, p.91-92.
  • 5)早坂信哉. 最高の入浴法. 大和書房, 2018, p.81.

<監修>

早坂信哉

東京都市大学人間科学部教授/医師 博士(医学)/温泉療法専門医