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2021.10.29 Fri

専門医が教える!健康に役立つ「お風呂の入り方」 ①(全5回)

体が喜ぶ「正しい入浴法」とは?

お風呂に入っても疲れが取れない、反対に疲れてしまう、ということはありませんか?それは間違ったお風呂の入り方が原因かもしれません。今回は、体もココロも喜ぶバスタイムを過ごせる、正しいお風呂の入り方をご紹介します。

お風呂に入っても疲れが取れない、反対に疲れてしまう、ということはありませんか?それは間違ったお風呂の入り方が原因かもしれません。今回は、体もココロも喜ぶバスタイムを過ごせる、正しいお風呂の入り方をご紹介します。

医学的にも実証!入浴の3大健康効果

すでに1,300年も前の日本の書物に、「入浴は健康に良い」と書かれています。当時は医師や病院にかかることは一般的ではありません。体の不調や病気に対抗するための手段の1つが温泉による入浴療法でした1)2)。驚くことに、約6,000年前の縄文人も温泉に入っていたとか1)2)。日本人は長い歴史の中で入浴の効果を、それこそ「体」で知っていったのですね。もちろん現代ではその効果は医学的に証明されています。

入浴の3大効果 3)4)

1.温熱作用
●体を温めて血流アップ
温かいお湯に入ると体の皮膚の表面温度が上がります。皮膚の表面近くの血管から温まった血液が全身を巡り、血流がアップ。新陳代謝を促し、体内の老廃物や疲労物質などが体外に排出されるため、肩こり、腰痛、筋肉痛などが緩和されて疲れも取れます。これらは、お湯に肩までつかる全身浴だから起きる効果です。シャワーだけでは、この効果はほとんど得られません。
2.静水圧作用
●しめつけて「むくみ」を解消
お湯の水圧によって全身がマッサージされたような状態になり、「温熱作用」と同様、血流が良くなります。立ち仕事などによりむくみやすい人は、お湯につかってしめつけ効果を働かせれば、むくみ解消につながります。この効果も全身浴で発揮されます。
3.浮力作用
●筋肉や関節をゆるめて緊張をとる
肩までお湯につかると体重が10分の1程度になります。重力から解放されてリラックスできると同時に、筋肉や関節への負担も減少します。

要注意!間違いだらけの危険な入浴

健康に効果がある入浴ですが、自己流の入浴法では逆効果になってしまう、命にかかわる危険な一面が潜んでいます。知らなかったでは済まされません。やりがちな間違った入浴法を正して、お風呂をあなたの健康を守る味方にしましょう。

その入浴法、危険です!

×42℃を超える熱いお湯につかる

「熱いお湯でなければお風呂に入った気がしない」という人は要注意。42℃を超えるお湯につかると、「交感神経」が刺激されて急激に血圧が上がり、「ヒートショック」を起こしてしまう危険性があります5)6)

*「ヒートショック」とは、急激な温度差により血圧が大きく変化することです。失神や心筋梗塞、脳卒中などを引き起こし、体へ悪影響を及ぼす要因になります。お風呂場やトイレなどで発生しやすく、事故の大半が気温の低い冬場に起こっています。

* 「自律神経」とは内臓や血管などの働きを、自分の意思とは関係なく24時間コントロールしている神経のことです。アクティブモードの「交感神経」と、リラックスモードの「副交感神経」がバランスを取って心身の健康状態を保ってくれています。

「暖房のない寒い脱衣場から42℃を超えるお湯へ直行」「温まったお風呂場から寒い脱衣場にあわてて出る」など極端な寒暖差は、血管の急激な収縮や拡張を引き起こし、血圧を大きく変動させてしまいます5)6)。湯船から急に立ち上がることも危険です。水圧から解放され、心臓へ戻る血液が急激に少なくなり、脳への血流も減少。立ちくらみを起こしやすい状態になります。湯船から出るときは、ゆっくり立ち上がりましょう6)

×長風呂をする
40℃程度のお湯でも長くつかると体温が上がりすぎるため、体内の熱を放出できなくなる「浴室熱中症」になりかねません7)。脱水状態になると、のどや気管、鼻の粘膜が乾くため、ウイルスが侵入しやすくなります。体内の水分が不足するため血液がドロドロになり血栓もできやすく、心筋梗塞、脳梗塞などのリスクも高まります6)
*「浴室熱中症」とは、入浴中に起きる熱中症のような症状をいいます。体温より高いお湯の中では、皮膚の表面温度だけではなく、体の中心の体温も上昇。体温が上がりすぎると、体温調節機能が乱れ、熱をうまく放出できなくなります。ひどい場合は命の危険にもつながります7)

そのほかにもある危険な入浴
×食事直後の入浴

入浴すると血液が体の表面に集中するため、胃腸の働きが悪くなります。また食後は自律神経の作用により眠たくなり、ついウトウト......。浴槽内の事故を引き起こす原因になりかねません。さらに極端な睡眠不足や飲酒後も危険な入浴と知っておきましょう6)

これぞ安心&ヘルシー!専門医推奨の入浴法

最新の研究では、毎日お風呂に入る(湯船につかる)人は健康状態が良くなるだけではなく、「幸福度」も高まるといわれています8)9)。専門医が勧める正しい入浴法を実践して、あなたも実感してみませんか?

医学的に正しいお風呂の入り方 10)11)

●お湯の温度は40℃
40℃程度のぬるめの温度には、リラックスモードの「副交感神経」を優位にして、心身ともにリラックスさせる効果があります。
●入浴時間は10分
研究結果から10分がベスト!心身に大きな負担がかからず、しっかり体が温まります。
※ただし浴室の温度が低い場合、十分に体温が上がるのに15分ほど時間がかかる場合もあります。
●半身浴より全身浴
全身浴でこそ「入浴3大健康効果」が発揮されます。しっかり肩までつかることが大切です。
※心臓や肺に疾患がある方は、水圧がかからず体温が上がりすぎない半身浴にしてください。
●入浴前後に水分を摂る
1回の入浴で約800㎖の水分が体から抜けてしまいます。入浴前後にコップ1杯200〜300㎖の水分を補給しましょう。おすすめはミネラル入りの麦茶です。
●入浴は就寝1~2時間前に
人間は体温が下がっていくときに眠くなります。就寝1~2時間前に入浴すると、寝るころには体温が下がり睡眠が促されます。少し休むと副交感神経が優位になり、脳の興奮を静められるため、眠りにつきやすくなります。
実践してみよう!

このシリーズ(全5回)の他の記事を読む

②\こりにサヨナラ!/お風呂ストレッチ

③\疲れた心を癒やそう/「マインドフロ(風呂)ネス」でイライラもスッキリ!

④\レッツ!温活/キレイを育てる入浴法

⑤\覚えておきたい/お悩みレスキュー入浴法

  • 1)早坂信哉. 最高の入浴法. 大和書房, 2018, p.22-25.
  • 2)早坂信哉, 古谷暢基. 入浴検定公式テキスト. 日本入浴協会, 2017, p.208-209.
  • 3)早坂信哉. 最高の入浴法. 大和書房, 2018, p.30-34.
  • 4)早坂信哉. たった1℃が体を変える ほんとうに健康になる入浴法. KADOKAWA, 2014, p.12-14.
  • 5)早坂信哉. 最高の入浴法. 大和書房, 2018, p.48-50.
  • 6)早坂信哉, 古谷暢基. 入浴検定公式テキスト. 日本入浴協会, 2017, p.92-96.
  • 7)早坂信哉. たった1℃が体を変える ほんとうに健康になる入浴法. KADOKAWA, 2014, p.23-24.
  • 8)早坂信哉. 最高の入浴法. 大和書房, 2018, p.38-41.
  • 9)早坂信哉, 古谷暢基. 入浴検定公式テキスト. 日本入浴協会, 2017, p.22-24.
  • 10)早坂信哉. 最高の入浴法. 大和書房, 2018, p.68-72.
  • 11)早坂信哉. たった1℃が体を変える ほんとうに健康になる入浴法. KADOKAWA, 2014, p.15-17.

<監修>

早坂信哉

東京都市大学人間科学部教授/医師 博士(医学)/温泉療法専門医