気候変動への対応
私たちの基本姿勢
企業活動によって生ずる環境への影響は地球環境全体にも影響すること、地球環境保全は企業の存続と活動の必須要件であることを認識し、「日清製粉グループ環境基本方針」に基づき、自主的・積極的に廃棄物やCO2を削減するとともに、資源やエネルギーの有効活用を図る等の環境保全活動を推進します。
当社グループは製品の製造段階や製品・サービスの提供等の事業活動から排出される温室効果ガスを減らすことで、気候変動の影響を小さくする緩和策に取り組んでいます。また、気候変動が当社グループの事業に与える影響を認識しており、国民の主要食糧である小麦粉等の安定供給を確保し、各事業において安全な製品を供給するという社会的使命を果たすべく、適応策にも積極的に取り組んでいます。
TCFDへの取組み
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日清製粉グループは小麦を起点とする多彩な事業をグローバルに展開しており、気候変動による影響はサプライチェーンの上流から下流まで多岐に渡ります。そこで、気候変動が当社に与える影響についてTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)のフレームワークに沿って気候変動シナリオ分析を行い、情報開示を通じてステークホルダーとの対話につなげていきたいと考え、2021年にTCFD提言に賛同するとともにTCFDコンソーシアムへ加入しました。
2050年時点の気候変動の影響を十分に抑えた世界と成り行きで気候変動が進んだ世界を想定した分析を行い、これらの環境下での当社サプライチェーンにおけるリスク・機会を抽出しました。さらに特に重要度の高いリスクと機会を特定して、それらの対応策について検討を行いました。検討結果を事業戦略に反映させることで、事業の継続性を高めるとともに、持続可能な社会の実現に貢献していきます。
TCFD提言に基づく情報開示(2024年度版)(2.45MB)
中長期目標
当社グループでは気候変動対策として2030年度、2050年の中長期目標を2021年度に策定しました。目標の対象は、GHGの算定対象6ガスのうち当社グループで最も排出量が多いCO2について目標を定めています。
気候変動による影響を緩和し、事業リスクを最小化するため、最新の省エネ技術の積極導入や再生可能エネルギーの活用等を通じてCO2排出量の削減を進め、脱炭素社会の構築に貢献していきます。
目標
- 2050年目標:
- グループの自社拠点でCO2排出量実質ゼロを目指します
- サプライチェーンにおけるCO2排出量削減に取り組みます ※2030年度目標においても同様に取り組みます
2030年度目標:グループの自社拠点でCO2排出量50%削減を目指します(2013年度比)
CO2排出量・原単位の推移
省エネ設備の導入や生産効率の改善、再生可能エネルギーの導入推進により、グループ全体でエネルギー使用量の削減に努めています。新たにOYインド Pvt. Ltd.を算定範囲に追加した影響により、2023年度のグループ全体のCO2排出量は2022年度に対し増加しました。引き続き、グループ全体でCO2排出量の削減に努めていきます。
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対象範囲(6.1MB)
算定対象範囲 | 2013年度 (基準年) |
2021年度 | 2022年度 | 2023年度 |
---|---|---|---|---|
Scope1+Scope2(千t-CO2) | 474 | 381 | 356 | 412 |
自社拠点カバー率(%) | 100 | 100 | 92 | 93 |
※2022年度に連結対象となった熊本製粉(株)の製造拠点については算定範囲に含めておりません。
環境データの詳細(6.1MB)
2050年カーボンニュートラルに向けて
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日清製粉グループの各事業場では、省エネルギー設備の導入や徹底した生産効率の改善に積極的に取り組み、緩和策によるCO2排出量の削減に努めています。また、使用する電力や蒸気について、再生可能エネルギー由来のエネルギー調達や利用拡大を進めています。
中長期目標を達成するために長期的な視点で大規模な設備投資を実行していく必要があるという認識のもと、グループ全体で投資時期や規模・効果の程度を見える化するために、2030年度までのCO2削減についてロードマップを策定しています。また、設備投資の判断基準としてICP(Internal Carbon Pricing 社内炭素価格)を導入しており、2030年までのロードマップに基づき計画的に省エネの徹底と再生可能エネルギー導入を進めていきます。また、燃料転換分野における選択肢の拡大や技術革新の期待とあわせて、2030年以降も引き続き2050年カーボンニュートラルの実現を目指します。
2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | |
---|---|---|---|
エネルギー総使用量(TJ) | 8,026 | 7,944 | 7,645 |
うち再生可能エネルギー使用量(TJ) | 31 | 79 | 294 |
環境データの詳細(6.1MB)
再生可能エネルギーへの移行
太陽光発電設備の導入
日清製粉グループの国内外の事業場では、新規に太陽光発電設備を導入しています。自己投資による設置だけでなく、オンサイトPPA方式を活用した導入が進みました。
太陽光発電設備導入事業場
国内:12事業場(含オンサイトPPA 9事業場)
海外:7事業場(含オンサイトPPA 2事業場)
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館林工場
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長浜工場
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太陽光に恵まれた米国カリフォルニア州にあるミラー・ミリング・カンパニー LLCの製粉工場では、大規模な太陽光発電設備を導入しています。ENERGY STAR Challenge for Industry※に参加し、2024年までの目標達成に向けてCO2排出量削減に取り組んでいます。
※米国環境保護局(EPA)による省エネルギー推進プログラム
再生可能エネルギーの調達
日清製粉グループの国内外の事業場では、再生可能エネルギー由来の電力の調達が進みました。国内では、電力会社が提供するCO2フリーメニューなどを活用し、また、海外事業場においても、国際的な再生可能エネルギー証書(I-REC)により、購入電力の再生可能エネルギー由来の比率を100%とする事業場が増えました。
購入電力における再生可能エネルギー 導入事業場 13事業場(うち使用比率100%達成:11事業場)
再生可能エネルギー証書(I-REC)の活用
使用電力の100%を実質再生可能エネルギー化する取組み
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日清製粉鶴見工場では、2023年11月より丸紅新電力株式会社と連携し、オフサイトコーポレートPPAを活用した太陽光電力の使用を開始し、使用電力の100%を実質再生可能エネルギー化しました(トラッキング付非化石証書の購入による不足分環境価値の補填を含む)。
製粉工場として国内最大規模を誇る鶴見工場(日本で消費される小麦粉の約10分の1を生産)の使用電力のすべてが実質再生可能エネルギーとなり、年間約27,000t強のCO2排出量の削減につながります。
事業場における省エネや節電によるCO2削減
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給水タンク
イニシオフーズ
東大阪工場
省エネや節電、燃料転換といった施策は確実にCO2排出量の削減につながります。工場の新設や設備導入の際は省エネ性の高い機器を優先して導入する、生産ラインをエネルギー効率が高いレイアウトとなるように設計する等、従来から高いレベルで取り組んできました。
これからも積極的に省エネや節電に取り組んでいきます。
惣菜工場の調理工程で発生する蒸気ドレン(復水、約100℃)をボイラーの給水タンクに回収する仕組みに変更。給水タンクへの補給水量を削減するとともに、 廃熱をタンク内の水の昇温に有効利用することでボイラーのガス使用量を削減し、CO2排出量を削減します。
照明の省エネ・節電対策
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(株)日清製粉グループ本社 福岡オフィス
当社グループでは各事業場において、積極的に省エネ・節電対策をしています。例えば、LED照明や人感センサー照明の採用、きめ細かい空調の温度管理により、CO2排出をできるだけ少なくする対策をしています。
物流におけるCO2排出量削減の取組み
当社グループは、製品を運ぶときの環境負荷の把握、包装容器の軽量化、トラックへの積載効率の向上、物流品質の向上、他社との共同配送等により、環境負荷低減に努めています。
国内食品メーカー6社、“食品企業物流プラットフォーム「F-LINE®」”の構築で協働
2016年4月より、6社による初の共同配送(常温製品)を北海道地区で開始しており、これにより配送拠点と配送車両の共同利用を行い、輸送効率の改善を図るとともに、CO2排出量の削減を目指しています。
今後も持続可能な物流体制の実現を目指してまいります。
フロン類の適正管理と排出削減
空調設備や冷凍・冷蔵設備の冷媒として使用されているフロンガスは、大気中に放出されるとオゾン層を破壊するとともに、CO2の数千倍もの温室効果があります。国内では2015年度よりフロン排出抑制法(改正フロン法)に基づき、定期点検や漏えい量の報告等が義務付けられました。
当社グループでは、国内外の全事業場において、対象となるフロン使用機器の管理台帳等を整備しており、機器の点検や更新、廃棄に至るまでの管理を確実に実施するため、自主的な管理基準を設定してフロンガス漏洩防止に努めています。
CO2換算で1,000t/年以上のフロンガスの漏洩が発生した場合には、フロン排出抑制法に基づき、行政に報告を行っています。
また、今後の冷媒転換や機器更新に際してはノンフロン化を推進するとともに、機器の冷媒に使用されているフロンガスのうち、特定フロン(HCFC)を使用している機器については、計画的な設備投資により、2030年までに全廃することを目標としています。
気候変動への適応策
地球温暖化により海面上昇や津波、洪水、集中豪雨による冠水といった自然災害の被害拡大が懸念されます。気候変動がおよぼす当社グループの事業への影響を認識し、さまざまな適応策を講じています。国内最大級のサイロと製粉設備を持つ当社グループにとって、社会に食品を休みなく安定的にお届けすることは社会的使命です。災害発生時でも消費者の皆様の生活への影響を最小限に留めるように、管理体制の確立、設備の補強等、食品供給を確保する対策を実施しています。
2015年に合意されたパリ協定と国連が掲げた持続可能な開発目標(SDGs)により、持続可能な発展を目指す社会の動きは加速しています。当社グループが社会にとって真に必要な企業グループであり続けるためには、これまで以上に多様な気候関連リスクに適応することが求められます。対策に時間がかかることを認識しつつ、2030年、2050年とより長期の将来を見据え、事業とより一体となった環境経営を目指してまいります。
事業への影響の低減策
万一の災害発生時に消費者の皆様の生活への影響を最小限にとどめるように、食品供給を確保する対策を実施しています。
異常気象による降雨パターンの変化により渇水が予想される場合には、製造拠点における水源の状況や供給体制等の影響を評価し、製造への影響を最小限にとどめるべく対策を講じています。
また、水に関連した自然災害に焦点をあてた取組みを全国の事業場で展開しています。ハザードマップの分析結果から、25か所の事業場では洪水や津波による影響が想定されたため、対策マニュアル・手順書の制定及び訓練の実施を通じた対策内容の確認を行いました。
- 対策内容の例
-
- ハザードマップによる自然災害の影響分析
- 発災時の対応マニュアル、手順書の策定
- 緊急事態を想定した訓練の定期的な実施
- 主要な製造設備を建物の2階より上のフロアに配置
- 災害時の電力喪失に備えた自家発電設備の装備
日本最大の製粉工場である日清製粉鶴見工場では、小麦輸送船が接岸する岸壁の崩壊等、被害拡大を低減するために、岸壁や岸壁周囲の地盤の補強といった対策を講じています。また、食品供給等の社会の基盤を維持するという当社グループの社会的責任を果たすため、事業継続計画(BCP)を策定しています。主に地震に伴う津波対策として実施してきましたが、気候関連リスクにおいても安定供給を確保するために役立つと認識しています。
建物の遮熱対策の導入
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(株)日清製粉グループ本社
上福岡研究所群
地球温暖化の影響とみられる夏場の猛暑日が増えています。建物の屋根や外壁に遮熱対策を導入することで、空調の負荷を抑え、効率的な利用を実現しています。
小麦に関する影響調査
地球規模での気温の上昇や極端な気候の発生、降雨パターンの変化により、農作物の育成への影響や病害虫による被害の拡大、生産量や品質の低下が懸念されます。
日清製粉グループでは気象変動が小麦の生育や小麦粉の品質に与える影響の調査、研究を継続してまいります。
気候変動による小麦への影響についての調査(694KB)