パンラボ池田浩明が毎回ゲストをお迎えし、お気に入りのパンを “もぐもぐ” しながらパンについて語る座談会。
最終回にふさわしいあのパン女子登場!パンコーディネーターであり、「パンクラブ」を主宰するひのようこさんが、長年培ったパンの楽しみ方を教えてくれました。
冷凍の楽しみ
池田浩明
旅先で買ったパンはクール宅急便(冷凍)で送ると、後日おいしく食べられますよね。宅急便の着日は1週間後まで指定できるから、帰宅後の日にしておけば、自分で受け取れる。余裕を持って、なるべく後ろの日にしておけば、その日までに冷凍庫の中のパンを食べて整理しておくこともできます。
ひのさん
ジップロックの中にショップカードを入れとくと、わかりやすいですよ。
池田浩明
どこで買ったパンかわかんなくなっちゃうもんね。
ひのさん
気をつけないと、冷凍庫の奥のほうから化石みたいなのが出てくるから(笑)。
トーストにこだわる
池田浩明
コーヒーを丁寧に淹れるみたいにトーストの焼き方にこだわると楽しいですよね。食パンにはみんな個性があるけど、焼きすぎると個性がなくなってしまう。トーストしたときも、そのパンがよろこぶようなトーストをしてほしい。
ひのさん
私はいつもトーストするときはトースターの前から離れない、見張ってるの。
池田浩明
本当に好きなんだなー(笑)。どれぐらいの焼き加減がいいってある?
ひのさん
「いまだ!」って瞬間がある。経験値でわかるの。
池田浩明
やってみましょうか? ひのさんが持ってきてくれた「銀座に志かわ」の食パン。これのベストを目指そう。4枚切りぐらいの厚めで食べてみたいな。
ひのさん
私は温度調整ができるタイプを使っていて、いつも180℃ぐらいで焼いています。
池田浩明
じゃあ、甘めのタイプは焦げやすいので温度を低くして、ハードトーストみたいなのは温度高くしたり?
ひのさん
うん、かりっとさせるときはね。こうやってタイマーをとりあえず5分以上にして、スタート! (オーブントースターの前で頬杖をつき)こうやってずっと見てるの。
池田浩明
まだ見なくていいんじゃない?(笑)
ひのさん
ずっと見てるのが楽しいの。朝方とか薄暗い中、トースターから出てくるオレンジの光を見て(笑)。いったん水蒸気がついてガラスが曇ったあと、また引くでしょ。そしたら気を抜いてはいけない。パンから水分が出たあとに焼き色がついてくるから。眺めてるのが至福の時なんだ。ほらほら色が変わってきた。
池田浩明
ここから大事だね。
ひのさん
ここ! 私が好きなのはこの焼き加減。
池田浩明
いいですね! これだけ分厚いともっちり感がおいしい。
ひのさん
かりかりいい音しますね。中がほかっとしてて。
池田浩明
この食パン、生のときはぷりんとした食感ですけど、焼いたほうが食感も軽くなって、ふわっという感じ。厚く切ると、ぱりぱりとふわふわの両方の食感が楽しめるのもいいですね。
お気に入りのトースターを買う
ひのさん
高級トースターが流行ってますよね。
池田浩明
買った人はみんなパンが好きになるよね。
ひのさん
こんなにトースターによっておいしさがちがうんだって思うじゃない? トーストする頻度が高い人は買う価値がありますよ。
池田浩明
いいナイフを選ぶのも大事ですよね。
ひのさん
スライスした面のなめらかさは、ナイフによるところが大きい。
池田浩明
よく切れるのじゃないと、断面が荒れて、つぶつぶになっちゃうよね。切れないのでやってると時間がかかって、パンを切るのが億劫になる。
ひのさん
私はパンによって変えています。ハード系なら、ドイツの GUDE みたいな波刄がいい。
池田浩明
食パンだったら文化包丁のほうがいいかもしれない。ブレッドナイフは厚みがあるので、粉が出ちゃう。
ひのさん
先が尖ってて小回りが利くのはクロワッサンみたいな小さいパンのとき便利。ブレッドボードもいっぱいあるとパン食が楽しくなる。道具にこだわるのもいいかもね。
持ち寄りパンパーティ
池田浩明
みんなで集まってパンを食べたら楽しいかな。メンバーそれぞれ自分の家の近所とか来る途中で寄れる好きなパンを持ち寄ってパーティすると、いろんなパンが食べられて楽しい。
ひのさん
パンって、しょっぱいのも甘いのもあるから、手分けしていろんな味で持ってきたら楽しいし。
池田浩明
準備をそんなにしなくていいからハードルは低い。ホスト役が準備するんだったら、その人がくたくたになっちゃうし、メンバーも気を使う。
ひのさん
ナイフとフォークさえあれば、簡単にできるからね。持ってきた人が、自分の好きな店を語るときの表情をみてるのが楽しくて。
公園で食べる
ひのさん
パン屋さん巡りを友達といっしょに行くのも楽しい。大きいパンはシェアできるし。
池田浩明
ひとりだと買える個数が限定されるので、シェアできるといろんなパンを少しずつ食べられたり。
ひのさん
公園パン、バーベキューパン最高だよね。
池田浩明
神楽坂のパン・デ・フィロゾフは近くに、白銀公園があって、子供とか遊んでてのどかな雰囲気。平和な風景見ながらぼーっとするのも貴重な時間。
ひのさん
外パンデートもおすすめしたい。
池田浩明
どこかいいスポットあります?
ひのさん
……は? あ、過去の記憶が走馬灯のように浮かんでぼーっとしちゃって(笑)。
池田浩明
どれを披露しようか選びきれなかったんじゃない?(笑)
ひのさん
えーと(汗)、日比谷公園とかいいと思いますよ。プチメックで買って。甘いパン、しょっぱいパン買って、飲み物買って、公園に行って、なにをするでもなくおしゃべりするだけでも、ピクニックみたいな気持ちになれる。
池田浩明
最高ですよね。子供がいる人とかもいいよね。お店で食べるときみたいに、まわりに迷惑がかかることを心配しなくていい。
すぐ食べる
池田浩明
パン屋さんを出たら、すぐ食べるというのもいいかもしれない。
ひのさん
パンっておいしいタイミングってあるじゃない、シュトーレンだったら日々の変化を楽しむパンだからいいんだけど。サンドイッチってはさみたてのおいしさがあるじゃない。私もよくミルクフランスを、お行儀悪いんだけど歩きながら食べたりとか。
池田浩明
僕も買ったらすぐ食べる派です。フランス人もパン屋を出たらすぐ袋からクロワッサンを取り出して食べはじめるけど、皮がぱりっとして本当においしいですよね。
晩ごはんでパン
池田浩明
晩飯で食べるっていうのいいかもしれない。パンは朝食で食べるイメージがあるけど、それだと前日に買ったのを食べることになる。買ったその日のほうがやっぱりおいしい。晩飯で食べるといろんなおかずといっしょに食べるでしょ。ドンピシャな組合せがあると、それでまたはまったりする。バンズを買ったから晩ごはんハンバーグにしちゃおうとか。パン屋さんでバンズ買って家でハンバーガーってものすごく贅沢。パンと料理といっしょに食べたほうが、パンだけ食べるより絶対おいしいし。
ひのさん
夜にパン食べるっていうの、ビーフシチューの日はバゲットとか、ワンパターンになりがちですけど、夜のパンもいろいろ楽しめますよ。和惣菜とかパンといっしょだと意外とおいしいんです。カンパーニュと納豆とか発酵食品。お味噌とバタートースト。カレーは普通に合うし。お酒との合わせ方でも広がりますよね。
パンイベントに参加する
池田浩明
いまはパンイベントもパン祭りもいっぱいあるから。そういうのに参加してみると、パンを好きになるきっかけになるかも。
ひのさん
パンクラブのイベントに来てもらう。Instagram とかブログとか Twitter で試食会の前に募集をしているので、そこから申し込みをすることができます。あ、宣伝しちゃった。
池田浩明
一度にいろんなパンが食べられるし、パン友もできてすごく楽しいですよね。