パンラボ池田浩明が毎回ゲストをお迎えし、お気に入りのパンを “もぐもぐ” しながらパンについて語る座談会。
最終回にふさわしいあのパン女子登場!パンコーディネーターであり、「パンクラブ」を主宰するひのようこさんが、長年培ったパンの楽しみ方を教えてくれました。
池田浩明
パンクラブできたのいつですか?
ひのさん
1999年。今年20周年なんです。
池田浩明
そんなに長く!
ひのさん
子供産んでたら二十歳だよ(笑)。食べたパンをぜんぶデータベースにしてる。7万種類超えました。
池田浩明
すごい!
ひのさん
写真とデータ。それだけ集めると、パンの表情だけ見て、食べなくてもこの子はこんな感じかなとわかる。でも、食べてみて予想を超えてさらにいいとすごくうれしいんだよね。
池田浩明
わかります! それがパンをいろいろ食べることのよろこびだよね。
「入門パン」を決める
池田浩明
パンをそんなに好きなったきっかけは?
ひのさん
最初にいちばん衝撃受けたのが、徳多朗さんのミルクフランス。シンプルなパンとクリームだけでしょ。それなのに、なんておいしいんだろう。それから、他のお店でもミルクフランスを見たら絶対買うの。私の入門パン、きっかけになったパン。食べ比べてみると、同じミルクフランスでもこんなにちがうんだってわかる。生地がソフト系だったり、ハードだったり。クリームの練乳っぽさが強いもの、口当たりが軽いもの、まったり系とかいろいろあるでしょ。
池田浩明
固定のパンはあったほうがいいよね。同じパンをいろんな店で食べていると座標軸ができてくる。そうすると、食べたパンを座標軸の中に位置付けることができるようになりますから。それが「わかる」っていう感覚なんじゃないかな。
「入門パン」と同時に「買うべきパン」も買ってみる
ひのさん
池田さんは、必ず買うパンってないの?
池田浩明
僕は店によって変えます。お店の原点のパンを知りたいんですよ。
ひのさん
シグネチャーってやつね。私もそれは買っちゃう。はじめて行ったお店の人に聞くのは「どれもおすすめだとは思うんですけど、『今日これを買わずに帰るのか?』と内心思ってるパンはどれですか?」って訊いちゃうの(笑)。1番人気とかはポップに書いてあっても、「実はこっちがすっごいおいしいのよ」とか。隠れおすすめパン。
池田浩明
たとえば「入門パン」が食パンだったとして、フランスパンにこだわりのある店でも食パンしか買わないのだったら、そんなに楽しめていないかもしれない。
ひのさん
うん。「入門パン」と、プラスお店の方に聞いて「買うべきパン」と。そうすると、お店の個性もわかるし、プラス自分の好みも広がっていくかもしれない。
店の人と話す
ひのさん
お店の人と話すのもいい。
池田浩明
おすすめを訊いたり、店のポリシーを知る上で、絶対大事だと思う。
ひのさん
話しかけるタイミングは、やっぱり空気を読まないと。話すのもそうだけど、予約の電話もお店が落ち着いてる時間にするとか。開店からお昼どきは忙しい。15時とか16時とかに電話します。
池田浩明
お店の人が忙しそうにしてたら話しかけにくくない?
ひのさん
混んでるときはしつこくきかないけど、私は販売の人に話しかけちゃうな。「はじめてきたんですけど」「この前これ食べておいしかったです」とか。
池田浩明
お客さんの感想はお店の人も求めている部分。おいしかったらおいしかったと伝えてあげるのは、すごくいいことだと思う。モチベーションを上げて「またおいしいパンを作ろう」って、きっとがんばってくれるでしょう。
お店の雰囲気を楽しむ
ひのさん
陳列棚にきれいに並んでたり、1個1個丁寧に作られてたりすると、お店の人の思いを感じるな。きれいに並んでるとふぁーってなるよね。
池田浩明
愛情を感じるね。きれいに掃除されていたり、かわいい飾りつけ、クリスマスとか季節の飾りつけなんかも、パン屋の楽しい部分。
ひのさん
よく「いいパン屋さんってどんなパン屋さん?」って聞かれるんですけど、お店の人の雰囲気、買ってる人の雰囲気が楽しそうだと、それは外れないんだよね。笑顔でお仕事されてる、お客さんが楽しそうに選んでいるお店は外さない。パン屋さんってそういう存在なんだよね。わりと日常に近くて、幸せな気持ちになれる場所。
池田浩明
楽しさにもいろんなパターンがあるよね。サンス・エ・サンスみたいな真剣勝負の空気とか。この人どれだけ研ぎ澄ませてパンを作っているんだ、というのが、扉開けた瞬間にわかっちゃう。
ひのさん
ツオップさんみたいに300種類もあって、テーマパークにきたみたいなわくわく感がある店も。「焼きたてでーす」って運んできてくれたりとか。
池田浩明
パン屋さんそれぞれの世界観を知るのがおもしろいんだろうね。
パン日記をつける
ひのさん
記録するのも楽しいかもね。パン日記。ショップカードと買ったパンの写真なんかを張り付ければいい。
池田浩明
どんなことを記録していく?
ひのさん
値段や名前、感想。お店に断ってポップ(プライスカード)を撮らせてもらう。食べるときに材料を確認しながら食べると、よりおもしろい。ナッツも、くるみなのかアーモンドなのかわかるとうれしいし。
池田浩明
いまはすべてデジタルで記録できるし、Instagram をパン日記がわりにするのもいいですね。
旅でパン屋に行く
ひのさん
パン旅はよくします。
池田浩明
お店はどうやって調べるんですか?
ひのさん
友達に聞いたのや雑誌で見てメモしたのを、Google map にプロットすると、どの順番にまわるか地図上で決めやすい。忘れずに定休日を調べないと、行ったときに閉まってたら泣いちゃう(笑)。
結局出会いが好きなんだと思う。行ったことのない店、食べたことのないパンのときにすごくテンション上がる。
池田浩明
パン屋ばっかり行かなくても、旅程に一軒入れるだけですごく楽しくなる。たとえば、海にドライブしますと。道の駅で新鮮な野菜買って、漁港の魚屋で魚買って、晩ごはんは家でパンといっしょに食べるとすごく楽しい。おとといも埼玉県の飯能に行ったんですよ、食パンがおいしいアンペルという店がバーベキュー場の近くにあって。川で魚釣りして、パンバーベキュー。パン嫌いを公言しているうちの子供も大絶賛だった。
ひのさん
山登りの好きな人が、山の上でパンを食べるのが楽しくて、パン好きになった人もいる。
池田浩明
マラソンの途中にパン屋に寄って、ごほうびパンとか。
ひのさん
移動のときに新幹線の中とかで食べるのもいいよ。私はお弁当は買わなくて、パンをもって新幹線に乗る。
池田浩明
パンだけじゃなく、ワインも買っちゃって、パンとワインで東京まで帰ってくる。
ひのさん
私、このまえやった。新大阪駅にパンデュースさんあるでしょ。ビール買って、パンとビール。
池田浩明
やりたい放題だね(笑)。
#02 につづく