飲食業界の人手不足に一石を投じる
“ポンとおくだけ”というアイデア

近年、ますます深刻化している飲食業界の「人手不足」。
この課題に対して、日清製粉ウェルナは長年培ってきたさまざまな知見を生かして、
“省人化と品質標準化”を両立した新たなソリューションの開発に取り組んでいる。
その代表的な製品が、具材一体型の冷凍ソース「ポンとおくだけ!ポーションソース」だ。
従来の発想にとらわれずに新たな製品開発をすることで
飲食業界の課題解決に挑んでいる成長事業開発部の担当者に、
開発の舞台裏と今後の展望を聞いた。

PROFILE

株式会社日清製粉ウェルナ

商品開発本部 成長事業開発部 開発グループ グループリーダー

辻 章人

2012年入社。入社後は品質管理、研究開発、海外駐在等、多岐にわたる経験を積む。その後「お客様に近いところでソリューションを提案したい」という想いから営業職へ異動。2023年からは新規事業の企画・マーケティングを担当し、2024年4月からは研究開発のバックグラウンドを生かして、顧客のニーズに対応した製品開発に取り組んでいる。

きっかけは、お客様からの“ある相談”

飲食業界における人手不足は、改善傾向にはあるものの、依然として深刻な社会問題となっている。帝国データバンクの「人手不足に対する企業の動向調査(2024年4月)」によれば、飲食店における人手不足の割合は正社員で56.5%、非正社員で74.8%の水準である。

「特に飲食店や旅館・ホテルでの調理現場で人が足りなくなっているようです。その影響でお店によっては提供するメニューの品質にばらつきが出ることがあると聞いています。」(辻さん)

これまでも日清製粉ウェルナは、天ぷらやパンケーキ等を作るために必要な原料が配合された調整粉である「業務用プレミックス」を始めとした、調理工程の効率化に貢献する製品を製造・販売してきた。

そのような中、情報共有のために定期的に開催されている営業部門の社内ミーティングで、「カレーパンに使うカレーフィリングを冷凍したものは作れないか?」というお客様からの相談があった、と報告があった。この報告を機に「冷凍のフィリングは我々の知見を生かせるのでは?」「お客様がもっと手軽に作れる方法はないか?」等、さまざまなアイデアが生まれていった。

「それが『ポンとおくだけ!ポーションソース』の原点となりました。」(辻さん)

※フィリング・・・具材のこと。

さまざまな知見によって出来上がった新製品

具材一体型冷凍ソース「ポンとおくだけ!ポーションソース」は、パンやパイ等の生地にのせて焼くだけで、誰でも簡単に具材入りの惣菜パンに仕上げることができ、品質にばらつきがなくなるため、人手不足解決の手助けとなる画期的な製品として注目されている。しかし、開発の道のりは平坦ではなかった。特に大きな課題となったのは、パスタソースとパン用のフィリングでは材料の最適な配合比率が全く異なる点だった。

「日清製粉ウェルナには、『青の洞窟』ブランド等で培った“おいしいパスタソース”に関する技術があるので、それをパン用のフィリングに応用できたら良いのではないかと考えていましたが、冷凍のソースを生地と一緒に焼成するとソースから水分が出て、生地に焼きムラができることが分かりました。」(辻さん)

こうした開発上の課題を解決するため、グループ会社である日清製粉の製パンに関するノウハウやオリエンタル酵母工業のパン用のフィリングに関する知見等、グループシナジーを生かした開発が始まった。その結果、ソースから出る水分を防ぎ、時間が経っても見た目とおいしさを維持できる独自の配合技術にたどり着いた。さらに、お客様に協力いただき、発売前の1年間でテスト販売も実施した。

「テスト販売を通じてお客様からいただいたご意見は、発見の連続でした。例えば、1トレイに6個という少量パッケージにしたのも、お客様からのご要望がきっかけです。これまで主流だった常温やチルドのパン用のフィリングは1kg単位が多いので、一度にパンを大量に作る必要がありますが、本製品はこれまでにない冷凍フィリングなので店舗で必要な数だけ使用でき、廃棄を抑えられます。」(辻さん)

こうして完成したポーションソースは、省人化、品質の標準化、食材ロス削減という3つの特長をあわせ持つ。具材一体型の設計により調理の手間を大幅に削減し、経験の少ない従業員でも一定の品質で作ることができる。さらに個別包装によって在庫管理や食材ロスへの対応が容易になった点が、顧客から評価されている。

「ポンとおくだけ!ポーションソース 」を通じたソリューション

グループシナジーで広がる新たな可能性

インタビュー画像

「『ポンとおくだけ!ポーションソース』は、当社だけではなかなかアプローチできなかったお客様に対しても、日清製粉やオリエンタル酵母工業の販売チャネルを活用して広がっています。そういう意味でも、開発から製造、販売まで一貫したグループシナジーを生かした良い例になったのかなと思います。新しい製品にも、こうしたグループの力を生かせれば、さまざまな可能性が出てくると思います。」(辻さん)

また、福利厚生の食環境でも人手不足対応製品のニーズがある。そうした新たな市場でのチャンスの掘り起こしも、部署のメンバーやグループ各社とディスカッションしながらやっていきたいと語る。

「日清製粉グループだからこそできる社会課題へのアプローチがあると思うのです。だからこそ、私はこれからも日清製粉ウェルナの一員として、社会課題の解決につながる製品開発に携わっていきたいと考えています。私自身、これまでさまざまな職種を経験し、多くの知見を蓄積してきました。その経験と知識を生かしながら、より多くのお客様の課題解決に貢献していきたいですね。グループの総合力を結集し、新たな価値を提供し続けることが、私たちの使命だと考えています。」(辻さん)

顧客の声に耳を傾け、グループの技術を結集し、新たな価値を提供する。日清製粉グループの挑戦は、これからも続いていく。

Focus
新たな提供方法を開拓し、「人手不足」を解消!

コロナ禍で社員食堂を閉鎖し、従業員への食事提供でお困りの企業向けに、冷凍自販機を活用した日清製粉ウェルナの取組みが注目を集めている。同社は、社員食堂の代替手段としてトレイ・フォーク付きで購入できる冷凍レンジ向けパスタを発売。自販機代理店と協働で冷凍自販機と冷凍自販機に対応する同社製品を組み合わせて提案を進めている。この取組みは、単なる社食代替にとどまらず、オフィスビルやゴルフ場、アミューズメント施設など、食事提供の人手不足にお困りのさまざまな場所での設置が期待され、新たな可能性につながっている。

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