いつもの食事で食物繊維不足を解消!?
革新的な小麦粉「アミュリア」誕生の物語

消費者の健康志向が高まる中、いつもの食事で“おいしく”健康に貢献できないか。日清製粉は、その想いをパンや麺類等に使われる「小麦粉」を通して実現すべく、“食物繊維を豊富に、おいしく摂れる”高食物繊維小麦粉「アミュリア」を2023年2月に開発。この“小麦粉の革命児”は、どのようにして生まれたのか、アミュリアによってどんな世界が訪れようとしているのか――その誕生の物語をつづる。

増田さん(左)上原さん(右)

PROFILE

日清製粉株式会社

技術開発本部 セールスサポートチーム 主査(麺担当)

増田 久美子(左)

2011年入社。東灘工場で品質管理業務に従事し、大阪営業部、生産本部品質管理グループへの配属を経て、2020年から現職。幅広い業務で得た知識を生かして、おいしさと機能性を両立する製麺技術の開発に携わる。「アミュリア」開発においても、社内外への麺に関する技術情報の発信を任されている。

営業本部 営業企画部 部長

上原 岳夫(右)

2002年入社。営業本部で販売管理から統合基幹業務システムの開発に従事。その後、中四国、東京、札幌、東京(2回目)と営業現場で小麦粉販売一筋。2019年からは新規ビジネスへの特別販売チームのリーダーとなり、2022年より現職。

製品化に挑んで約3年、
“新時代の小麦粉”の開発に成功

インタビュー画像

日清製粉が構想を描いてから約3年、ついに日本初となる高食物繊維小麦粉「アミュリア」の開発に成功した。

日清製粉は、オーストラリアのARISTA社が育種した高食物繊維小麦の日本における独占輸入・販売権を2020年に取得。それから、小麦の挽き方の工夫と小麦粉をパン・麺・菓子等においしく加工するための長い研究開発に入った。

これまで、パンや麺等の食物繊維を増やすには、食物繊維素材や添加物の添加が必要だった。

「ただ、その方法だと本来のパンや麺とは違う味わいや食感になります。アミュリアなら、そうした課題を根本から解消できます。」と話してくれたのは、今回の開発に携わった技術開発本部 セールスサポートチームの増田さんだ。

完成したアミュリアは、食物繊維素材等の添加を一切していない、高食物繊維小麦100%の小麦粉。それでいて100g中に、約17gの食物繊維を含み、そのうち約8gは「レジスタントスターチ (難消化性澱粉)」が占めているのが最大の特徴だ。

「アミュリアの場合、原料となる小麦そのものに豊富な食物繊維が含まれているので、何かを添加する必要がありません。また当社が蓄積してきた製粉技術を注ぎ込んで、おいしくパンや麺等に加工いただける挽き方で仕上げています。そのため小麦粉をアミュリアに置き換えるだけで、おいしさを損なわずに食物繊維の摂取量を大幅に増やすことができます。」

現状、パンや麺、菓子等を作る二次加工メーカーへアミュリアの普及は、どれだけ進んでいるのだろうか。営業活動を牽引する営業本部 営業企画部の上原さんに聞いた。

「現在は原材料の供給量がまだ限られているため急激な拡大はできませんが、手を挙げていただいた約60社以上のお得意様へ提供が進んでいます。すでに一部のお得意様からは、アミュリアを使った製品が発売されています。」

日本人の年代別食物繊維摂取量
日本人の年代別食物繊維摂取量

製品化するには「常識を超える」必要があった

しかし、製品化にこぎつけるまでの道のりは「決して順風満帆ではなかった」と増田さんは言う。

「いざ研究を始めてみると、従来の小麦とは製粉する際の特性が違っていたり、パンや麺等を作る際にも生地の吸水量が全然違っていたりとこれまでの常識だけでは対応できない特徴がありました。」

また、パン・麺・菓子等さまざまな食品に加工する際に、アミュリアの特徴を活用して、どのようにおいしさを実現させるかを突き詰めなければならなかった。従来の小麦粉とは違う性質があるので、一つひとつ試作を繰り返して、製粉方法とパンや麺等の加工方法の両面から研究していった。

「アミュリアの特徴を生かしながらおいしいパンや麺に仕上げることや、食物繊維量をできるだけ多く含ませるために、できる限り多くアミュリアを配合できるようにすることに心血を注ぎました。これまでの小麦粉の常識が通用しないことも少なくなく、何度も研究がふりだしに戻りました…。」と増田さん。

研究の中では、製パン用イーストを製造販売するオリエンタル酵母工業などが持つ、日清製粉グループ内の知見とネットワークが貴重な助けになったという。開発に約3年の歳月をかけ、ついに2023年2月、アミュリアの製品化が実現。結果、単なる“高食物繊維小麦100%の小麦粉”ではない、おいしさをあわせもつ、知見と技術を注ぎ込んだ日清製粉ならではの高食物繊維小麦粉が完成した。日清製粉では、アミュリアを使用した製品開発を進めているお得意様に、配合や加工法の提案等もしている。

食べたくて選んだおいしい食事が、
健康にも寄与する世界を

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昨今は、腸内環境に関する研究が大きく進み、食物繊維への注目も非常に高まっている。

「アミュリアを展開するにあたっては、そうした追い風もひしひしと感じています。アミュリアに多く含まれるレジスタントスターチに注目する人も、以前より明らかに増えてきています。」(上原さん)

現状ではアミュリアの機能性については、「食物繊維が豊富に摂れる」ことのみがうたえる。ただ、日清製粉では腸内環境の改善や食後血糖値の上昇抑制等、レジスタントスターチに認められている健康機能性について、アミュリアでも訴求できるよう日清製粉グループ本社の基礎研究所とともに研究を進めている。今後、二次加工メーカーはもちろん、腸内環境に関する高い知見をもつ企業等ともコラボレートしていく。

また、消費者にもひと目で「アミュリアを使った食品である」ということが認知してもらえるよう、例えばお得意様のさまざまな製品に、共通ロゴをつけていただくなどの仕組み作りも視野に入れている。

ちなみに、日清製粉では社員がアミュリアを一定期間摂り続けて体調がどう変化するか試す「アミュリアチャレンジ」を行った。「便秘が良くなった」「便の量が増えた」「便の臭いが改善した」といった声が多数上がっており、参加者の8割が何らかの良い変化を体感している。

「食べ続けることで変化を感じやすい食品なので、今日はうどんで明日はパン、というふうに、色んな加工メーカーから、色んな食品が発売されることで、毎日食べ続けられる世界を実現させたいです。」(増田さん)

「おいしさと機能性を両立したアミュリアを使った食品が世に広く浸透することで、『健康になるために選んで食べる』のではなく『食べたくて選んだおいしい食事が、健康にも寄与する』というのがあたりまえになることを目指しています。その結果、健康寿命が延びた、そんな研究結果がでるようなスケールにまでアミュリアを広げていきたいです。」(上原さん)

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