パンラボ池田浩明が毎回ゲストをお迎えし、お気に入りのパンを “もぐもぐ” しながらパンについて語る座談会。
記念すべき第1回目はゴスペラーズの酒井雄二さんが登場!ご自身の Twitter では「ローカルパン☆ハンター!」として全国ご当地パンを紹介しているほどのパン愛好家。食べ方のこだわりも強く、会議は思わぬ方向へ…!
北山陽一、黒沢 薫、酒井雄二、村上てつや、安岡 優からなるヴォーカル・グループ、ゴスペラーズのメンバーとして、1994年12月21日、シングル「Promise」でメジャーデビュー。以降、「永遠(とわ)に」「ひとり」「星屑の街」「ミモザ」など、多数のヒット曲を送り出す。他アーティストへの楽曲提供、プロデュースをはじめ、ソロ活動など多才な活動を展開。日本のヴォーカル・グループのパイオニアとして、アジア各国でも作品がリリースされている。
10月3日には16枚目となるオリジナルアルバム「What The World Needs Now」をリリースし、アルバムを引っさげ10月19日から2019年2月23日まで「ゴスペラーズ坂ツアー2018〜2019 “What The World Needs Now”」を全国36都市40公演で開催することが決定している。
オフィシャルサイト
Gostudio http://www.5studio.net/
GosTV http://www.gospellers.tv/
ローカルパン☆ハンター降臨!
池田浩明
本日はよろしくお願いいたします
酒井さんはすごく早かったですよね。いまみんなが『ご当地パン』って言ってる
酒井さん
たとえば、沖縄の人は知ってるけど、県外の方はぜんぜん知らないパンがありますよね。秋田にも、青森にも、岩手にも、北海道にも『愛されて60年』みたいなパンがごろごろしている。
そういうパンに惹かれるんです。
池田浩明
時代がハンターに追いついてきた。
酒井さん
池田さんだけです、そう言ってくれるのは(笑)。
ツアーに行った先で、コンビニに行くと知らないパンがある。それをどうしてもみなさんにお伝えしたくて。情報番組とかでこぞって『ご当地パン』を取り上げるようになって、わーって波がきた。これはいいことだと思ったほうがいいなと思いつつ、若干の悔しさがある(笑)。早くから、音楽番組で、岩手の福田パンとか各地から取り寄せてだーって並べたり、そういう企画をやったのは相当早かった自負がある。その後、僕のところに取材が来なかった(笑)
ローカルパンという異文化体験
酒井さん
パンは鮮度が大事だから、長距離輸送に向かない。そう考えれば、地方にパンメーカーがあって、独自のパン圏、文化圏を作っているのはうなずけますよね。
池田浩明
新幹線や高速道路が発達していま距離がなくなってるみたいだけど、距離があることによって文化って生まれてくる。それが楽しいわけです。異文化に行くという。
酒井さん
そう。これをお読みのみなさん、ぜひ旅をしてほしい。旅先のパン事情がお住まいの地域とぜんぜんちがうことにぞくぞくしてほしいんですよね。
たとえば札幌に行くと、我々が『フジパン本仕込み』だと思っていたものが、『ロバパン本仕込み』として売られている(笑)。沖縄のパン事情は、日本のその他の地域とぜんぜんちがう。
スーパーに行くとおもしろいですよ。
池田浩明
オキコパン!
酒井さん
それから、ぐしけんパン、第一パン…すごい花盛りなんですよ。なかよしパンのカエル君、ゼブラパンのしまうま君も見てほしい。
コンビニのパン棚すら驚きいっぱい。見慣れたパンが日常だと思っているのを壊してほしい。
パンマスクとはパンとの合一である
――― パンを食べながらやりましょう。
酒井さん
ファーストタッチは焼かずに行きたいなと(笑)
池田浩明
焼かずにいきましょう。
僕も、必ず最初は一回焼かずに食べてからのトーストなんです。
酒井さん
パンマスク(食パンで顔を覆うこと)をやりましょうよ。
池田浩明
僕、ぜひいっしょにやりたくて、買ってきたんですよ。
(といいながら3斤棒[3斤がひとつになっている長い食パン]を取り出す)
酒井さん
同じお考えでしたね。実食ならぬ…
池田浩明
実一本食いのほうをしていきたい(笑)。
ポンパドウルのパンドミを買ってきました。
酒井さんは、いつもスライスせずに、がばっと行かれてますよね。
酒井さん
はい、ちぎりで(笑)
池田浩明
ちぎらせていただきます。
酒井さん
この山と山のあいだの谷のところからワンブロックいくのが好きでして(笑)。この繊維というか…
池田浩明
ストリングチーズ的な(笑)。ミシン目のようにおのずとちぎれる感じで(笑)
酒井さん
ここから切ってほしかったみたいな。パンの切り取り線(笑)
池田浩明
ひと山が 1 単位ということですね。6 枚切りとかではなく。
酒井さん
ワンブロック(笑)
池田浩明
パンマスク、これがパンとの合一の形だと考えています(笑)。顔面にもってくると全世界がパンになるじゃないですか(笑)。香りであり、肌に触れる感じであり。パンに飛び込んでいく感覚。
酒井さん
イントゥザブレッド(笑)。ネコ好きがネコにほおずりするのって、そういうことなんですよね(笑)
池田浩明
ムツゴロウさんの『かわいい! かわいい!』と同じですから(笑)
酒井さん
あー、もちっとしっとりしていて。
池田浩明
小麦の純粋な香りが感じられる。ポンパドウルのパンドミは副材料が少ないパンなので。
酒井さん
さらに縦裂きにします。どういうふうに気泡ができているかがわかるじゃないですか。
池田浩明
気泡は発酵の履歴ですので。どういうふうにのびてきたかを表している。
(食パンのちぎれた先端を指して)ここがいいですよね。
ひょいっとなったのが。このふるふる感。
酒井さん
ここホイップクリームみたいな(笑)
池田浩明
角(つの)ですか(笑)。ここが立ったらホイップクリームが立った証拠、みたいな。
酒井さん
パンの角が立った(笑)
池田浩明
いつも、どこから行きます?
酒井さん
そんなに考えないことが多いですけど、まさにいまここから食べてくれみたいに角が立ってますね(笑)。
失礼します(と言って食べる)。
いいですねー!
池田浩明
このやわらかさ!
酒井さん
パンドミの醍醐味。よだれが噴出してきた(笑)
なにもつけないのがパン食系男子の流儀
酒井さん
僕が Twitter で、食パンをそのまま食べると言うと、『え、なにもつけないんですか?』ってメンションがつくんです。それに対して僕は本気で怒る(笑)
池田浩明
逆に『つけるのか!?』って話じゃないですか(笑)
酒井さん
いちばん怒っちゃうのが『味がないじゃないですか』っていう言葉。『味がないのに、なにもつけないでよく食べられますね』。『味付けと味はまったくちがうんだよ!』ってなかば切れ気味で返信することがある(笑)
池田浩明
でっかい音ばかり聞いていると、ささやき声が聞こえなくなる。
酒井さん
ペンキ塗られてる感じというんですかね。ジャム塗るとか。バターやマーガリンを塗ると、せっかくの。
池田浩明
塗るのは後でいいですよね。
酒井さん
一回そのままで味わってほしい。
北海道でおかめやというパン屋さんに行ったんですけど、そこで買ってきたパンが、翌日食べたとき、ぜんぜんおいしかったんですよ。そういうとき、いいパンだなと、ますます評価が上がる。
僕は素のパンで評価していきたい。
食べるたびにおいしくなるパンがある
池田浩明
ドミニク・サブロンのクロワッサンを一週間置いておいて食べたら、まだうまかった。
酒井さん
本当のことですよね?(笑)
池田浩明
本当です。
それを世界的な職人であるご本人に言ったら、すごくよろこんでくれた。そこがいちばんパンの真価が問われるところだから、気づいてくれたのはすごくうれしいと。ちゃんと発酵ができているパンって、時間が経つとおいしくなるのに、ちゃんとできてないパンは衰える。
酒井さん
衰える?
池田浩明
ちゃんとできてるものは変化していく。熟成と衰えることはちがいます。スーパーで売っているお肉は悪くなっていく一方、熟成肉とか生ハムって1年とか置いていてもおいしくなってくる。
そこの領域に行っているパンがある。
酒井さん
つまり、その日ごとにおいしくなる、そういうことまで考えて作っているパンなのか、『うちのパンは 1 日 2 日でぱさついちゃうんで、早めに』っていうパンか。そういう別の評価軸があるんですね。
池田浩明
音楽とかでも、絶対あると思うんです。10 年後も歌われるのか、今日流行っただけですたれていくのか。
酒井さん
刺激やパンチでうまいと言わせる。ラーメンでそれを感じるんですよね。味濃いめ、刺激強めにして。客をうまいといわせて帰すことだけ考えてる、毎日食べてると体を壊すような刹那的なラーメンってあると思う。
そういう音楽はやだなーって思っているんです。『先々月出たアルバムまだ聞いてるんですけど、いいなと思うポイントまた見つけました』って言われるとうれしいですね。
池田浩明
ラーメンマニアの方って、コレクションのようにいっぱいまわる。1 日何杯食べました、1 年何千杯食べましたとか。だから、1 回こっきりに向けたものが多い気がして。
パン屋さんって近所に住んでる方が買いにくるから、1 回こっきりじゃだめなんですよね。何回食べてもおいしいなと思うものを作ってらっしゃる。
酒井さん
リピートしてもらいたいんですね。
池田浩明
1 回で地金がばれるものじゃなくて、何回も耐えるものを作るという覚悟が、いいパン屋さんってある。派手なものではなく、地道な仕事。それが僕には魅力的に映るんです。
ゴスペラーズの
ニューアルバム聞きどころに迫る!
池田浩明
そういえば、待望のニューアルバムが発売されるそうですね?
酒井さん
10 月 3 日に『 What The World Needs Now 』というアルバムが出ます。
我々の代表曲『永遠(とわ)に』を一緒に作った、アメリカのブライアン・マイケル・コックス、パトリック“ジェイ キュー”スミスがかなりの曲数参加している。いままでのようにメンバーそれぞれに曲を書いてカラフルに仕上がるというのとはまたちがって、アルバム通したトーンが感じられる。R&B 風の仕上がり。さすがグラミー取った人はちがうなと。
ぜひパン好き女子のみなさんに、パンを食べながら聞いていただければと思います。
ゴスペラーズ
What The World Needs Now
2018.10.03
アルバム
¥3,000+税
http://www.sonymusic.co.jp/artist/Gospellers/discography/KSCL-3093
芳しい香りに包まれているもぐもぐ会議室。パンへの愛が強すぎて時間を忘れるほど...。ということで、次回はパンに合わせるものは何か、小麦粉や炭水化物へのこだわりに続く。
全 3 回に分けてお届けします。