パン×ビール

昨今大人気のクラフトビール。ピルスナーにIPA、ペールエールにホワイトエールなど、多種多様なビールが楽しめます。パンもハード系や菓子パンなど、パン屋さんの店頭にバリエーション豊かに並んでいて、どれもこれもおいしそうで、決められないループにはまった人も多いはず。同じ麦から生まれたパンとビールはもちろん相性抜群。そんなおいしいペアリングを紹介します。

ピルスナービールと塩バターロール

ピルスナービールと塩バターロール

ビールといえば思い浮かぶのがピルスナー。1842年に現在のチェコ共和国のピルゼンで誕生したビールです。当時、ドイツ・ミュンヘンを中心に人気だった濃色のビールと同じようなビールを作りたいと、ドイツ人技術者をチェコに招き醸造したところ、予想外に生まれたのがこの黄金色のビール、ピルスナーでした。それは、ドイツが硬水でチェコが軟水だという偶然が生み出した透き通るように輝くビール。その美しさのみならず、麦芽とホップのバランスが抜群で、今や世界のビールの70%を占めると言われています。そんなビールにおすすめのパンは、大人気の塩バターロール。適度な塩気と歯切れの良さが、ビールホップの心地よい苦味にぴったりです。また、このビールは、誕生したチェコ周辺でよく食べられているポテト料理とも相性がよく、塩バターロールにポテトサラダをサンドすればさらに満足度がぐっとUPします。また、ぜひ試してみて欲しいのが季節で登場する生のイチジクをカットして載せたデニッシュ。生イチジクのどこか青さのある上品な甘さは、ビールのホップのさわやかな苦味にぴったりで、デニッシュの香ばしさがビールの麦芽の旨みとハーモニーを奏でます。ぜひ試してみてください。

ホワイトエールとフルーツブレッド

ホワイトエールとフルーツブレッド

ビールの基本的な原料は、麦、ホップ、水。麦は大麦が殆どですが、小麦やライ麦などを使用するものもあります。小麦を使う代表的なビアスタイルに、コリアンダーやオレンジピールを副原料に使うベルギー生まれのホワイトエール、そしてスパイスなどの副原料は使わないけれどバナナのような香りと柔らかな甘さのあるドイツ生まれのヴァイツェンがあります。これらは苦味を作るホップの使用量が少ないため、ビールは苦いから苦手という人でも「これはおいしい」と評判のビアスタイルです。フルーティでハーバルな香りを持つホワイトエールには、オレンジピールなどのドライフルーツをたっぷり練り込んだフルーツブレッドがぴったり。薄くスライスしてクリームチーズを載せれば、さっと作れるおしゃれなおつまみに変身します。その他、おすすめするのは、小麦のふくよかな甘さが重なり合うパンケーキ。明るい光の中、冷えたグラスにホワイトエールを注ぎ、ほんのり湯気の立つ柔らかなパンケーキと季節のフルーツで休日のブランチを楽しみませんか。心も体も柔らかくほぐれて幸せな気持ちになること間違いなしです。

スタウトとあんぱん

スタウトとあんぱん

スタウトは黒ビールの一種です。この他にもポーターやシュバルツといったビアスタイルもありますが、総じてコーヒーやチョコレートのような香ばしい風味が楽しめます。ビール原料の麦は醸造するため水につけて発芽させ、麦芽にします。その発芽状態を保つために乾燥させますが、単なる乾燥だけでなく、例えばコーヒー豆の浅煎り、深煎りの焙煎のように、麦芽を段階別に色付かせることで、それがビールの仕上がりの色に影響します。香ばしい深煎りの麦芽を使った黒ビールはスイーツ系のパンとの相性抜群。中でもぜひ試してもらいたいのがあんぱんです。聞いた瞬間には“まさか”ですが、一口食べ合わせれば、小豆のふくよかな甘さとビールのローストの深みが絡み、そのベストマッチに納得すること間違いなし。その他にもロースト同士が寄り添うパンオショコラ、フルーティさやミルキーな味わいを香ばしさが引き立てるラズベリー・クリームチーズなどのデニッシュもおすすめです。

改めて、ビールとパンは、古代、同じ麦から生まれました。ひょんなことからそれぞれの道を歩み始めた双子は、時代とともにそれぞれバラエティ豊かに成長し、そのおいしさで常にたくさんの人々を笑顔にしてきました。昨今話題のクラフトビールの種類の豊富さは、長い歴史の中で、人類が“もっとおいしいものを飲みたい”と生み出してきた宝物なのです。それはパンも同様で、パンとビールのおいしい組み合わせはまだまだたくさんあります。そんなおいしいもの探しをぜひ一緒に楽しみませんか。

この記事を書いた人

宮原佐研子

宮原佐研子(みやはらさとこ)さん

日本ビアジャーナリスト協会所属ビアジャーナリスト、日本パンコーディネーター協会認定パンコーディネーターとして、雑誌『ビール王国』(ワイン王国別冊)、食のキュレーションサイト『ippin』、webマガジン『ビール女子』他で執筆中。

  • フェイスブック
  • Instagram
  • 日本パンコーディネーター協会