自他ともに認めるサンドイッチ好きの私にとって、一番思い入れがあるのはなんといっても「バゲットサンド」。その思いが強過ぎて、拙著『サンドイッチの発想と組み立て』の表紙にもしてしまったほどです。
出会いは20年ほど前のこと。本場のバゲットサンドが食べたい!と訪れたパリでバターとハムだけのジャンボン・ブール(jambon beurre仏語でハム・バター)を初めて食べた時、そのシンプルさの理由に納得し感動しました。それまでは、野菜がないのは寂しい気がしていたけれど、そうじゃないんですね。
パリッと香ばしく焼けた皮の食感と香りをたのしむには、たっぷりのバターと上質なハム「だけ」が一番!噛みしめるほどにバゲットと素材が調和して、これ以上でもこれ以下でもない組み合わせの妙を実感できます。
シンプルなジャンボン・ブールを作る時に悩むのが、バターの使い方です。
パリで食べる本場のジャンボン・ブールは、常温に戻してやわからくなったバターをラフに塗っています。バゲットの気泡の中にゴボッと不均一にバターがはさまったりしている感じがバター感を強調し、いいアクセントになって、これぞジャンボン・ブール!なおいしさを味わえます。
もうひとつのおすすめは、冷蔵庫から出したての冷たいバターをスライスしてはさむ方法。チーズのように大胆にはさまれたバターを、まだ冷たいうちにほお張ると、口の中でスーッと溶けてバゲットとハムと馴染んでいきます。こちらは、五感を研ぎすまして味わいの変化をじっくりたのしみたい使い方です。
もちろん、バター自体にもしっかりとこだわってくださいね。私が使っているのは、無塩の発酵バターです。ちょっと贅沢ですが、フランスのバターならより本格的な香りが堪能できます。
ジャンボン・ブールのメインは、なんといってもハムです。フランスでは、ジャンボン・ブランと呼ばれるスモークのかかっていない大判のボンレスハムが基本です。日本で一般的なスモークされたロースハムだと別物になってしまいます。
バゲットの皮の香ばしさが伝わるように、しっかりと開いたクープ(切れ目)の美しさを意識しましょう。具をはさむための切り込みは、真横からではなく気持ち斜め上から。ほんの少しはみ出るくらい大胆にハムをはさむことで、真上から見ても具材がよく見えます。バターもマスタードもきれいに塗り過ぎないように。こちらもザザッと大胆に塗るほうが、バゲットの雰囲気を引き立ててくれます。
#シンプルイズザサンド