しんしんと寒さが身体にしみる夜、温かい部屋の中で、熱々のスープとパンをほお張るひと時の幸福感はなかなかのもの。
そんな、切っても切り離せない仲のスープとパン。その象徴ともいえるのがオニオングラタンスープ。じっくり炒めた玉ねぎの甘みとブイヨンとの調和、スープの旨みを吸い込んだパン、たっぷりのチーズがとろーり&香ばしく焼き上がった様……すべてのパーツがピッタリ調和した味わいは、これぞ“マリアージュ!”ですね。
このスープは、パリの若者にとっては飲んだ後のラーメンやお茶漬け的な存在だそう。24時間営業のビストロで飲んだ後の〆にすするのだとか。そう聞くと味はラーメン、構成はお茶漬けと似ているような気も。フランス版焼きおにぎり茶漬け、でしょうか。
そんな魅力あふれるメニューをオープンサンドに変換したのがこれ。要はオニオン&チーズトーストのスープ漬けです。耳のカリカリ感と、玉ねぎの下のしみパン部分とのコントラストをおたのしみください。こちらは、飲んだ後ではなく、飲みながらがおすすめです。
オニオングラタンスープのおいしさは、なんといっても飴色玉ねぎにあります。本来なら時間をかけて玉ねぎを炒めたいところですが、今作ろうとしているのはたった1枚のオープンサンド。できる限り時短&簡単で、洗い物も少なくしたい。また、市販のブイヨンを使ってガツンと旨みをプラスすることもできますが、それよりも素材の力だけでナチュラルに仕上げたい。そうして思いついたのがこの方法です。
厚切りの玉ねぎにバターをのせて、赤ワインと生クリームをかけ、塩、こしょうしたら、ふんわりとラップをして電子レンジへ。少し長めに加熱することで、玉ねぎの甘みが引き立ち、スープも濃縮されておいしくなります。玉ねぎの、トーストに負けない存在感は厚切りならでは。スープはとっておいて、仕上げにパンにかけて「しみパン」をたのしみましょう。
オニオングラタンスープには、本来グリュイエールやエメンタールなど、山で作られる味も香りも濃厚な硬質チーズを使います。しかし、お値段もお高めですし、どこにでも売っているわけではありませんので、ここでは手軽に、スーパーやコンビニでも手に入るシュレッドチーズを使っています。
シュレッドチーズは親しみやすい味わいが魅力ですが、やっぱりコクが足りないな…と感じることも。そんな時に試していただきたいのが青カビチーズ。ごく少量をちぎって散らすだけで、しっかりした塩味とコク、ピリッと刺激的な味わいがプラスされて、グッと大人っぽくなるんです。青カビチーズを買ったけど使い切れない、少しだけ残ってしまった、という時の活用法として覚えておくと便利です。少量残った青カビチーズを小分けにしてラップに包み、さらに保存袋に入れてから冷凍しておきましょう。
私のおすすめは、フルムダンベール、ブルードーヴェルニュなど、フランスのマイルドなタイプ。シンプルなチーズトーストにもぜひお試しを!
玉ねぎを切った時に目が痛くなるのは、玉ねぎに含まれている“硫化アリル”という成分によるものであり、ビタミンB1の吸収を高め、疲労回復を促すといわれています。また、玉ねぎには抗酸化作用があるため、エネルギーを作る過程で発生する活性酸素を軽減でき、アンチエイジングやお肌の調子を整える効果も期待できます。
管理栄養士 鈴木あすな