果物の中でも、私が特に好きなのがいちじくです。けれども実は、いちじくだけをいただくことはほとんどなくて、他の食材と組み合わせるのが好き。
例えば生ハムといちじく。これは定番ですね。ビストロで、生ハムといちじくの前菜を見つけると絶対に頼んでしまいます!フォアグラにいちじくも鉄板です。和食屋さんで、いちじくの天ぷらを初めていただいたのは20年程前のこと。ふっくらさっくりした衣の中で熱を帯びて甘みを増したいちじくが、お出汁と合わさった時の驚きといったら!それから、いちじくの白和え。白和えはあまり得意じゃなかったのが、これだけはたまに食べたくなるんです。……などなど。
そんないちじく料理の記憶たどっているうちに食べたくなったのがこれです。白和えからヒントを得たすりごまたっぷりのマスカルポーネは、混ぜるだけなので白和えよりも簡単。ごまの風味がプラスされ、スイーツのような料理のような不思議な味わいで、とろりとやわらかないちじくと合わさると、うっとりするおいしさです。
いちじく料理の魅力は冒頭で語った通りですが、もうひとつ、いちじくが好きな理由はとにかくパンに合うから!生でもドライでも、焼いたり煮たりしても、それぞれいちじくならではのおいしさが際立ちます。
今回のレシピのように生で合わせると、フレッシュな食感と繊細な香りがたまりません。ドライいちじくを練り込んだパンは、濃縮された甘みに加えてプチプチした食感がたのしく、ブリーチーズとの組み合わせは特に好き。
他にも、コンポートにしてタルティーヌにのせてもよし、また、生のままスライスして、丸く伸ばしたブリオッシュ生地にのせて焼き上げても、とびきりのおいしさです。
このメニューを最初に試作した時は普通の白和えを合わせていたのですが、ふと冷凍庫のマスカルポーネを見てひらめきました。お豆腐を水切りしたりなめらかにしなくても、ここにまったり濃厚でなめらかな白いクリームがあるじゃないですか!
早速合わせてみると、なかなかいける。イタリアチーズとすりごまのマリアージュ、イタリアと日本の融合メニューは、こんなに簡単なのにまさかのおいしさでした。
「似た食感、似た色の食材を置き換えて再構築」する。この手法は、新しいメニューを組み立てる時に役立ちます。
いちじくのサンドイッチを作るにあたり、デザート系にするかおつまみ系にするかとても悩みました。いちじくは甘いものとしょっぱいもののどちらに合わせてもおいしいからです。
なのでここでは、両方を味わえるアレンジをご紹介します。それは、いちじくとマスカルポーネの白和え風オープンサンドに、プロシュートとルッコラをプラスするだけ。デザートサンドがワインによく合うおしゃれな前菜サンドに大変身!甘じょっぱい組み合わせにルッコラの爽やかな香りと辛みがアクセントになり、大人っぽいおいしさがたのしめますよ。