中期経営計画2026
短期・中長期の事業環境変化を踏まえ、新たに2022年度から2026年度までの5年間の経営計画として「日清製粉グループ中期経営計画2026」を策定しました。社是、企業理念を胸に、小麦粉を中心とした「食」の安定供給という使命を全うしながら、事業を通じて社会貢献を果たし、食の中心企業として成長を継続していきます。
数値目標
事業ポートフォリオの再構築による選択と集中を図るため、積極的な戦略投資を実行します。
中期経営計画の最終年度である2026年度に、売上高9,000億円、営業利益480億円の実現を目指します。
※CAGR…年平均成長率(Compound Annual Growth Rate)
基本方針
当社グループでは、将来の目指す姿の実現に向けて、以下の3つを基本方針に中期経営計画2026を推進します。
- 基本方針1:事業ポートフォリオの再構築によるグループ成長力の促進
- 基本方針2:ステークホルダーとの関係に対する考え方を明確にした経営推進
- 基本方針3:ESGを経営方針に取り込み、社会の動きに合わせて実行
基本方針1:事業ポートフォリオの再構築によるグループ成長力の促進
120年以上の歴史のなかで築いてきた高い技術力と生産性、お客様からの信頼に裏付けされた強固な販売基盤等、当社グループの強みを活かせる事業領域において、今後も事業ポートフォリオの再構築を行い、グループ全体及び各事業の競争力を強化します。
(1)事業競争力強化戦略
①国内製粉、加工食品、酵母事業のコアビジネス(中核事業)としての継続、発展
各事業で培ってきた強みを発揮し、新たな価値の提供によりシェアを高め、適正な価格を維持します。また、異次元のコスト削減を実行することで高い水準の利益を確保し、今後も当社グループの中心的な役割を果たしていきます。
重点テーマ
- 熊本製粉とのシナジー創出
- ローコスト生産体制に向けた整備(コスト競争力、自動化・省人化)
- 日清製粉ウェルナブランドの育成・浸透
②海外事業(現地完結型)の成長戦略
中期経営計画における利益成長のドライバーであり、中期経営計画最終年度である2026年度には海外事業の営業利益構成比38%を目指します(2021年度は13%)。また、新規投資については、国内における当社グループの強みを活かせることを確認したうえで進めていきます。
重点テーマ
- 海外製粉事業:豪州製粉事業の業績改善、米国製粉事業等の高収益の維持、強化に向けた取組み
- 海外加工食品事業:次なる投資の検討(プレミックス、パスタ、パスタソース、冷凍食品)、日本向け加工食品の海外生産拠点を活用した現地販売の推進
- インドイースト事業:事業の順調な立ち上げ、およびフル稼働による利益成長の実現
③中食・惣菜事業の成長戦略
惣菜市場は、国内食品業界における数少ない成長マーケットです。事業を統括するため設立した(株)日清製粉デリカフロンティアを中心に、競合他社との競争に勝てるコスト競争力を確保するとともに、製粉、加工食品事業との連携による事業の成長を目指します。
重点テーマ
- 研究開発力の強化(チルド・冷凍の惣菜、消費期限延長等)
- 自動化による省人化の推進
- 製粉、加工食品事業との連携による開発力の強化
④健康・バイオ事業の方向性
健康食品事業が取り組むパーソナルニュートリション(各個人専用の健康食品等の提案)と、バイオ事業が進めるバイオマーカー(AGEs)等とのシナジーを図り、健康・バイオ事業の成長実現を目指していきます。
⑤エンジニアリング・メッシュクロス事業の方向性
両事業は、世界的に見ても高い技術力・知見を有しています。今後、自前もしくは外部との連携で、更なる業容拡大を目指していきますが、電子部品市場など両技術が活用されている顧客領域での取組みについては事業連携を実施していきます。また、メッシュクロス事業は、販売する製品を通じて環境貢献や持続可能な社会づくりへの貢献が期待できる点も踏まえつつ、技術優位性を武器に利益成長を図っていきます。
⑥新規事業へのチャレンジ
(詳細は(3)新規事業開発・M&A戦略)
(2)研究開発戦略
国内、海外における競争優位性を確保し、グループの成長を支えるとともに、事業を通じて社会課題を解決する循環成長を生み出し企業価値成長につなげていきます。
重点研究開発領域の研究テーマ
健康機能性素材 | 小麦の成分を中心に、メタボリックシンドロームの予防効果、脳機能、アンチエイジングに関する効果等、各種の健康機能性の研究開発を推進し、事業を通じて健康寿命の延伸に貢献する |
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中食・惣菜加工技術 | 惣菜類の味、香り、色、食感等おいしさを向上させる調理加工技術や消費期限の延長(サプライチェーンを含めた廃棄物の削減)につながる微生物抑制技術等の研究開発を推進し、競争力強化を図る |
フードテック | タンパク質クライシスの懸念やフードロス等の食に関する課題を解決する技術の研究開発に、スタートアップ企業との協業も視野に取り組み、新規事業開発、および既存事業の競争優位の確保につなげていく |
自動化 | デジタル技術(AI、IoT)やロボット技術を活用し、中食・惣菜事業、製粉事業等の更なる省人化・省力化を実現する |
(3)新規事業開発・M&A戦略
既存事業の競争優位性の確保をはじめ、製粉、加工食品、酵母、中食・惣菜事業に次ぐ将来の屋台骨となる事業の獲得・育成、さらにはフードテックや機能性素材等の新領域における将来のイノベーションを見据え、スタートアップ等との協業やM&Aを通じて新規事業開発を推進していきます。
既存事業と新規事業のターゲット領域
(4)デジタル戦略
積極的にデジタル技術を取り入れ、生産性の飛躍的向上、既存事業のモデルチェンジ、さらには新しい事業モデルを創造し、競争力を高めていきます。また、システム体制の検証や見直しを継続的に実施し、サイバー攻撃等への耐性を強化するとともに、デジタル人材の確保・育成を推進します。
基本方針2:ステークホルダーとの関係に対する考え方を明確にした経営推進
当社グループの第一の存在意義は、主要食糧である小麦粉や小麦粉関連製品を含めた「食」の安定供給にあることを認識し、すべてのステークホルダーを大切にし、世の中から信頼される企業を目指します。
そのために、持株会社であるグループ本社と全事業会社が一体となって、お客様や取引先の皆様から信頼が得られるように尽力するとともに、人材戦略を推進し、当社グループの総和で最適となる人材配置、経営人材の育成、女性活躍推進、働き方改革等、組織・人材の活性化に取り組みます。
株主: 長期的企業価値の向上を図り、適切なTSR(株主総利回り)を実現する。
顧客: 製品・サービスあらゆる面で期待以上の価値を提供する。
社員: 適正な報酬と職場環境を確保し、必要なスキルの習得を支援する。
取引先: 公平・公正かつ倫理観を持って対応し、イコールパートナーとなる。
社会: 社会との共生を図り、環境にやさしい企業となる。
人材戦略
人材戦略の重点テーマ
- 採用の強化
- ダイバーシティの推進
- 女性活躍の推進
- 労働環境の改善
- 働き方改革推進 → 心理的安全性向上策
- エンゲージメント調査の活用
- 健康経営の推進 → ホワイト500に認定
- 能力開発の強化
- 経営人材の育成 → 独自の「事業経営者育成プログラム」を実施
- デジタル人材の育成
- グローバル人材の育成等
基本方針3:ESGを経営方針に取り込み、社会の動きに合わせて実行
持株会社であるグループ本社をはじめ各事業の経営トップの責務として、企業価値の極大化を追求し、社会の動きに合わせESG課題に主体的に取り組みます。とりわけ世界の持続可能性に関わるE(環境)への対応を経営の最重要事項に位置付けます。
E(環境)
2050年に自社拠点におけるCO2排出実質ゼロ、2030年度までに2013年度比で50%削減することを中長期目標として設定しており、これら環境目標の達成に向けて、最大限の省エネ設備及び再生可能エネルギー設備の導入を行うとともに、オフサイト(当社グループ以外)の設備からのエネルギー調達も検討しています。
S(社会)
ステークホルダーとの関係に対する考え方を遂行し、品質保証を含めた事業活動全般において、「消費者の視点から説明できるのか」を合言葉に、安全で安心な製品を安定的にお届けしていくという社会的な使命を今後も果たしていきます。また、サプライチェーンを含む人権デューデリジェンスの実施により、人権課題の把握、人権リスクの軽減に取り組んでいきます。
G(ガバナンス)
コーポレートガバナンスのあり方について、今後も経営で議論し必要な改善を行う風土を維持します。リスクについても常に見直し、社内の内部統制制度の運用・強化とあわせて、対応策を平時より準備していきます。一方、リスクを完全に排除することは出来ないことも念頭に、有事においては、グループ本社社長、事業会社社長が陣頭指揮を執り、最悪事態を回避するべく取り組んでいきます。
資本政策
小麦粉をはじめとした主要食糧の安定供給という社会的責任を充分に勘案し、資本効率の向上と財務の安定性のバランスを取りながら資本構成を適切にコントロールしていきます。
中期経営計画の期間中(5年間)に得られる営業キャッシュ・フロー等を積極的に成長投資に活用し、EPS(1株当たり純利益)の成長を継続していきます。また、株主還元については、配当性向40%以上を保持し、増配はタイミングを見据えて常に積極的に検討します。
(1)EPSの成長、適切なTSR実現
稼ぐ力、売る力を高めて事業成長を進め、事業ポートフォリオの再構築による選択と集中を図るため、積極的な戦略投資(設備投資、M&A、研究開発、デジタル、人材育成等)を促進し、EPSの成長を継続していきます。その結果として株主からの信頼を受けた株価を形成し、適切なTSR(株主総利回り)を実現します。
営業キャッシュ・フローの推移と目標
5年間累計のキャッシュ・フロー計画
(2)連続増配の旗印は取り下げるものの、増配は常に前向きに検討
配当性向40%以上を保持し、減配はできる限り回避するものの、常に増配をしていくことを前提にはせず、業績を踏まえて配当水準を決めていきます。ただし、EPSの成長を目指していく中で、増配はタイミングを見据えて常に積極的に検討していきます。
EPSの推移と目標
配当金総額と配当性向の推移
- ※1:2013年10月1日付け、2014年10月1日付けにて、1株を1.1株に株式分割を実施、1株当たり配当金を据え置き実質増配
- ※2:2020年度は、創業120周年記念配当2円が含まれる
(3)社会的責任を踏まえ、財務安定性を確保
当社グループ事業の社会性を勘案し、激甚災害を踏まえた事業継続等も考慮した財務の安定を図ります。政策保有株式については、業務提携や共同事業の強化等の取引関係の構築を踏まえつつ見直しを行います。事業ポートフォリオ再構築とあわせ、適切な投下資本管理を通じ、財務の安定性を確保したうえで、資本効率の向上を目指します。