「コニャラの歌」篇について、作品に対するこだわりや、子コニャラ登場のエピソードなど詳しく聞いてみました。
※2012年CM公開当時のインタビューを掲載しております。
Q1.新CM(今作)を制作する事が決まった時のお気持ちはいかがでしたでしょうか?
コニャラが好評だったという事でしょうから、もとの猫の絵を描いた僕としては嬉しかったですよね。(構成・作画を担当した)近藤勝也君も彼の娘さんが声(ナレーション)で出演していて、彼女(娘さん)も大好きなCMの第2弾を制作できると喜んでいました。
Q2.コニャラの子ども(子コニャラ)が登場するという新CMのアイディアはどのような考えから生まれたものですか?
実は御社からの提案だったんです。映画でも今まで一度もパート2(続編)は制作したことがなくて、実際やりはじめたら難しかったんですよ。初めは、りんごや毛糸を出してみるとか色々と(演出を)試したんですが、どこかしっくりしない。小賢しいというか。そこへ「子猫を出して欲しい」と言われたんです。正直あまり乗り気はしなかったのですが、これがやってみたら上手くいって。2匹の猫を描くしんどさはありましたが、それによって道が開けました。だから御社からの提案は非常に素直な案で、みんながどこかで求めていた事なのかなって思いましたね。
Q3.このCM(作品)の根底にある考え方はなんでしょうか?
我が家には4匹の猫がいたんです。そのうちの1匹がゴローっていうんですけど、今年の正月に亡くなったんですよ。なんと19年の大往生。やっぱりそれだけ長く一緒に過ごしたので、家族や娘の友達とかみんな集まってお通夜をしましたね。実はそのゴローが亡くなった時期と、この作品が誕生した時期が重なってるんです。だからこのCMに込めた想いは、一種の供養だったのかもしれませんね。
Q4.今回のCMコンセプトは「絆・希望」ということですが、その想いは?
実際のところ制作にあたって、そういったことは考えてないんです。というのも、ものづくりをする中で抽象的なことを考えるのは無意味なんですよ。文章は「絆・希望」といった抽象的なことを表現するのにむいているんですが、映像っていうのは常に具体的でなければいけない。観ている人に同じように思ってもらうためには何をどのように表現すればいいかって。これは職業意識で常に思っていますね。
Q5.新CMには“コニャラ”の親子が登場しますが、ジブリの描く親子像に特別のこだわりや特徴はありますか?
自分の話で恐縮なんですけど、最近孫が出来たんですよ。それで自分の子供が生まれた時のことを思い返したんですが、子供たちには1人で生きていける子になってほしいと強く思ったんです。子供の期間はやっぱり親と子の関係は大事だけど、ある期間が過ぎたら巣立たなきゃいけない。僕はそれが親子だと思っているんですよね。
Q6.出来上がった新CMをご覧になっての感想をお聞かせください。
正直なところ、自分も制作に関わっているので情緒的な感想っていうのはなかなか生まれないんです。でも、CMを見ていてコニャラと子コニャラがじゃれあう姿は気持ち良くなりますよね。だから、30秒あるいは15秒とはいえ、1本の作品になっているという事が嬉しかったです。おこがましいですが、ジブリらしさが出せたかなという気がしています。
Q7.前回同様、毛筆アニメーションならではの難しさがあったかと思いますが、(コニャラ・子コニャラの)2匹を描く事など、工夫された点や苦労された点はどこでしょうか?
今回の制作は実はとても時間がかかっているんです。たった30秒なんですが、勝也君がずっと1人で描いているので、確か2~3ヵ月ぐらいかかったでしょうか。その中で一番こだわったのはコニャラが尻尾で子コニャラを温める最後のシーンですね。映像は文章と違って伝えたい事を感じてもらう為に具体的な表現が必要なんです。だから気まぐれな部分もあるコニャラだけれど、最後のシーンで根底には子供を愛する気持ちがあるという事を上手く表現できたと思っています。
Q8.新CMは、コニャラ親子の愛くるしい姿に、「コニャラの歌」が絶妙な癒しのスパイスになっていると思います。この曲の生まれたきっかけや楽曲を担当された(作詞作曲)矢野さんの想いなどがありましたら、教えてください。
制作が決まった時、曲は矢野さん以外に考えられないと思いました。彼女に話をしたら「やるやる」とふたつ返事で受けてくれましたね。実は、彼女は大の猫好きなんですよ。彼女からは唯一「コニャラは男か?女か?」と質問が来たんですが、困りましたね。考えていませんでしたから。だから「お好きなように」と返したんですが、あんまり男とか女とか決めないで、観る人によって違っていて良いと思っているんですよね。そうして出来た曲ですが、本当に素晴らしい。形容詞がなく、必要な事だけ言っている詞なんですよ。彼女も仕上がった作品を観て、とても喜んでくれました。
Q9.「ずっと一緒。」というシンプルながら力強いキャッチコピーがとても印象的です。その言葉に込められた想いを教えてください。
実はこのコピー、今までで初めての事なんですが、勝也君が案を出したんですよ。初めはもう少し長いものだったんですが、(前回から踏襲している)「未来へずっと」の語呂合わせにもなると考え「ずっと一緒。」と短くしたものに決定しました。こういうご時世で、みんながばらばらの時代ですから、1人で居るより誰かと一緒に居た方が良いっていうメッセージになるかなという気がしています。
Q10.お陰様で、“コニャラ”は弊社のオリジナルキャラクターとして大変ご好評いただいております。改めて、このキャラクター(コニャラ)の魅力は何だと思われますか?
決して可愛いだけじゃないところですかね。創作の秘密っていうのか、可愛さの中にちょっと憎たらしさを入れるんです。コニャラで言えばあの目。こいつは一体何を思っているんだろうって感じさせられる、そうした部分を入れる事でお客さんが見てくれるような自立したキャラクターになるんじゃないかと思うんですよね。