コニャラの誕生秘話や、CMのBGM、コピーなど制作にまつわる話を詳しく聞いてみました。
※2010年CM公開当時のインタビューを掲載しております。
Q1.なぜ猫をキャラクターに使用したのですか?
実は宮﨑駿監督も僕も犬好きなんです。でも、映画の中ではなぜか、猫を描くことが多い。たとえば、「魔女の宅急便」のジジ。この猫ジジは13歳のキキのもう1人の自分なんです。映画のラストで、ジジが突然話せなくなるのですが、それはキキがひとり立ちしたという意味です。あと、「耳をすませば」のムーンとか、「猫の恩返し」は、それこそ全編、猫だらけの作品だし(笑)。最新作の「借りぐらしのアリエッティ」でも猫が登場します。どうしてなんでしょうねえ(笑)。
Q2.BGMはこの動画のために作曲したものですか?
仕事でつきあいのある矢野顕子さんに相談したら、ちょうど吹き込んだばかりの曲が5~6曲あるということで、まだミックスの終わっていない曲を聴かせてもらったんです。そしたら、「ただいまの歌」が気に入り、使わせもらうことになったんです。矢野顕子さんと森山良子さんがユニットを組み、矢野の「や」と森山の「もり」で「やもり」という名前でこの夏に、各地でコンサートをやるんだそうです。ぼくは知らなかったんですが、矢野さんは大の猫ファン。こういう偶然もあるんですねえ。CDは、7月に発売になります。
Q3.「未来へずっと」というメッセージから日清製粉グループの未来をどのように想像されますか?
目の前のことをこつこつ「一所懸命」にやり続ける。そうやって開ける未来もある。そう解釈しますねえ。日清製粉グループは小麦をひたすら挽いて小麦粉にしてきましたよね。一粒の麦なれど、続けていくのは人間なんだと思います。
Q4.日清製粉グループの百十周年は鈴木プロデューサーにとってどんなイメージですか?
信頼ということだと思います。
Q5.キャラクターの猫にどんな想いを込めて描かれましたか?
いつごろだったか、毛筆で字を書くようになりました。そんな昔の話じゃありません。そのうち、絵を描きたくなり、最初に描いたのが猫の絵。それを宮さん(宮﨑駿監督)が目ざとく見つけてくれて、「鈴木さんが描いた、これまでの絵の中で一番いい」と褒めてくれたんです。びっくりしましたねえ。だって、宮さんに褒めてもらおうと思って描いた訳じゃなかったし、まさか、褒めてくれるなんて。
キャラクター名ですか?日清さんで使うのだから、“コニャラ”はどうかと思いついたんです。日清さんは粉の会社、“粉”という言葉をいじると、“コニャラ”なんです(笑)。
かわいいだけの猫は描きたくなかったですねえ。たとえば、『吾輩は猫である』に登場する「癖のある猫」にしたかった。人に見られる猫じゃなく、かっこよくいえば、人間を見ている猫というのでしょうか。なんだか、かっこよすぎますかねえ(笑)。
Q6.「昔から、人と麦は仲良しだったんだよ。」というコピーは大変すばらしいと思いますが、この言葉が生まれたエピソードは?
あの言葉そのものは、「となりのトトロ」のパロディです。さつきとメイのふたりにお父さんが「昔、人と木は仲良しだったんだよ」という印象的なシーンがあるんですが、そこから作りました。
Q7.CM動画全体からどんなメッセージを伝えたいと思われましたか?
筆でアニメーションを描くというのは、ジブリでも初めての経験です。その昔、若き日の高畑勲監督が鳥獣戯画をやってみたいと夢を語っていたそうですが、ぼくにしても、短くてもいいのでやってみたかった。で、「崖の上のポニョ」で作画監督をやった近藤勝也君に話を持ちかけたら、受けてくれた。嬉しかったですねえ。だって、彼だって、普段は鉛筆で描いている。でも、うまく行かなかったら、鉛筆に戻るとか言いながら、挑戦してくれたんです。そしたら、宮さんが、のぞきに来て、勝也君にいろいろ注文を出すんです。こうしたらとか、ああしたらとか。いや、宮さんだって、筆でアニメーションを描くというのはやったことが無いので関心が深かったんだと思います。ついでにいいますが、例の麦わら帽子を被った猫というのは、宮﨑監督のアイデアで、麦わら帽子を大きく描くのがみそだと言っていましたが、さすがだと思いました(笑)。