Cooking Men料理男子紹介
とにかく振る舞う おもてなし料理男子
前田 塁Rui Maeda
- Age
- 30代
- Job
- インターネット系会社勤務
- 料理こだわりエピソード
- 自主開催イベント年間58回、1年間で2000人分の料理を振る舞いました。
- 料理歴
- 約16年
- 好きな調理道具
- 最近購入した低温調理器
Interview
5年間のアルバイト経験で培った、もてなしの心
前田 塁さん
学生時代に、京都の創作和食店でアルバイトを始めたのが料理のきっかけでした。とはいえ、本格的な店だったので、アルバイトが料理を作ることはなく、5年間、ひたすら盛り付けだけを担当しました。単調な仕事に聞こえるかもしれませんが、盛り付けにこそ、おもてなしの心が宿っているんです。ある時、一組のカップルが来店し、1年前にこの店で出会って結婚したお祝いをされるということを聞きつけ、お祝いのデザートプレートをサプライズでお出ししたことがありました。号泣するお客さんを見て、もてなすことの喜びを知りました。今でも忘れられないエピソードです。
また、町屋を改装した店舗なのでテーブル席は少なく、カウンター越しにお客さんと触れ合う機会に恵まれていました。幸い会話をするのも好きだったので、楽しんでいるうちにトークで食事を楽しませる、という自分スタイルの原点はここにあるのかもしれません。
プライベートで料理をし始めたのもこの時期でした。料理を習ったことがなかったので、基本的にはバイト先の先輩の見よう見まね。味はともかく、盛り付けとトークには磨きがかかっていきました(笑)。美味しい料理を極めること以上に、楽しい食事の時間を過ごしてもらうことにやりがいを感じていて、今も、この「もてなす欲求」は変わらず、強まる一方です。
「食」を通じて広がり続けるネットワーク
僕は家で料理はほとんどしません。その代わりに、週に1~2回のペースで、料理イベントを開催し、旧友から初対面の人まで、さまざまな人に食事を提供しています。気づけば、2018年は、年間58イベントを主催し、累計2000人分の料理を作っていましたね(笑)。朝食イベントやクラブイベント。自分で主催するものから、依頼があって参加するものまで、1日に複数のイベントをはしごすることもありました。
ここまでアクティブに人と触れ合っている背景に、大好きな飲食業界にポジティブな影響を与えたいと思っているからです。実は僕も小さい頃、料理人になって自分の店を持つことが夢でした。ですが、学生時代にバイト先の先輩が、社員になってもバイトの僕よりも安い給料で働いていることを知り、現実の厳しさを知りました。先輩たちを含む料理人たちが、今以上に潤いのある生活を送るには、どうすればいいのか?と参加者に問題提起し、僕が描いている「理想の飲食業界の姿」も共有します。
料理人が自由に夢を追いかけられる理想の社会を目指して
僕の目標は、全ての人に最低限の食を保証する食のベーシックインカムを実現させることです。そのための手段として、基本となる食事を無料提供するシステムを社会に根付かせることを考えています。これが実現すれば、これまで日常的に食費に消えていた数万円を、別の「ちょっといい食事」に充てる、つまりは、外食頻度が増え、結果業界が潤うのではと考えています。
「ちょっといい食事」の定義は人それぞれだと思いますが、僕は「付加価値を提供してくれる料理人」が活躍する社会になるといいなぁと思っています。例えば、料理に使われている塩一つをとっても、その塩が取れる海、ミネラルを運んでくれる川、そして森の話と、語ることはいくつもあります。その食材や料理に込められた「物語を味わう」体験に対してお客さんが対価を払うような文化を根付かせるために、自分ができることをやっていければと思います。
こんな僕の考えに共感し、一緒に活動してくれる仲間を増やすために、イベントを開催し、啓蒙活動に取り組んでいるのです。今後も、ネットワークを広げていきたいですね。
食は、人が生きていく上でなくてはならないもの。衣食住の中で、最も大切なものだと思っています。その食に携わる料理人が自由に夢を追いかけられる世の中になってこそ、みんなが安心して暮らせる社会になるのだと信じています。