Column男の探求コラム
DIY料理男子による包丁のすゝめ 第三回
料理をする上で必要な道具、「包丁」について語るこの企画、第三回目となりました。
これまでに包丁の切れ味について、そして選び方について語りましたが、今回はそんな包丁を自分で作る工程の紹介をしたいと思います。
「包丁を自分で作る・・・?」と思われるかもしれませんが、包丁の産地で体験型アクティビティとして実施されている包丁作り体験(一泊)が人気だったり、趣味で包丁を作り続けている若者達がSNSで交流したりと、実は密かなブームが来始めているのです。
とはいえ家庭でやるには設備などの不安もありますが、家具を作るのとそこまで大差ない設備でもできますので、参考にしてもらえたら幸いです。
自分好みの包丁をレッツメイキング
材料と道具の用意
まずは、材料を準備します。
「え?デザイン決まってないのに?」
と思われるかもしれません。
確かに、思い通りのデザインをしてそれを形にするのがDIYの醍醐味の一つだったりします。
ですが、デザインによっては材料費が超割高になることがあるのです。
材料はある一定の規格などで統一され、それにより流通が最適化されていたりするので、規格外の材料は、従来の2倍の大きさなのに価格は3倍4倍ということも珍しくありません。
家具などのDIYも、1×4や2×4といった流通が多く、コスパの良い材料から取り掛かるのがセオリーです。
いきなり特注材料を使うと、材料費がスゴイことになるだけではなく、失敗して完成すらしなくて大ダメージ・・・となることもあるので、まずは買える材料に合わせてデザインすることが現実的だと思います。
では、今回使用する材料等を紹介します。
■鋼材
包丁の本体とも言える金属部分のことです。
金属なら何でも良いわけではなく、熱処理をすることで固くなる刃物用鋼材を使用します。
熱処理しなくとも刃物として利用できる硬さを持つ金属を使うこともできますが、硬いが故に加工がとんでもなく大変になり、消耗品のコストもスゴイことになります。
今回使用するのは、RWL34という、ちょっと珍しい鋼材です。
加工性がよく、錆びにくく折れにくいといった、包丁にも向いてる鋼材です。
これ以外に、銀紙1号、銀紙3号、V金10号あたりが性能、コスパや入手難度的にも良いので、こちらもおすすめです。
入手に際しては、ネット販売も行っている専門店で購入するのが確実です。
■ハンドル材
包丁の持ち手となる部分です。
和包丁の場合は、刃体より細くなった日本刀のナカゴのような形状のものを穴の空いた柄に差し込む手法ですが、今回の万能包丁は持ち手部分の両面をハンドル材で挟み込む手法で作ります。こちらの方が差し込み穴の調整などがないので、簡単に作ることができます。
今回ハンドル材は、このスタビライズドウッドを半分に割ったものです。
スタビライズドウッドとは、木材に染料と樹脂を染み込ませ硬化させた、木の見た目の美しさと樹脂の安定した性質を併せ持つハイブリッド素材です。
水が浸透しにくいため、カビたり腐食しにくく、乾燥して割れたりすることもない、非常に優れた素材です。
包丁にはやはり、洗ったり水に浸かったりするのに適した素材がオススメです。
強度がある天然木に蜜蝋を塗り込んだり、「マイカルタ」と呼ばれる積層樹脂材を使ったりするのも良いかと思います。
■その他のパーツ(フィッティング材)
鋼材とハンドル材の他に必要な材料としては、
鋼材とハンドル材を固定する組ネジやピン
鋼材とハンドル材の間に入れる、口金・ボルスターやスペーサーがあります。
組ネジやピンについては、ハンドル材を固定する際に使用します。
接着剤だけで固定することも可能ですが、強度的に不安なため、使ったほうが良いです。ただ、昨今の接着剤は強力なものもあるので、それらを使用すれば包丁としては問題ない強度でもあります。
見た目も含め、判断してください。
口金・ボルスターとは、刃体とハンドルの間につける金属の盛り上がった部分です。
この箇所は切断時に物が当たったり水分が多く当たったりするため、付けることでハンドルの腐食等を抑えることができます。
また、見た目の装飾的効果もありますので、デザインやハンドル材の特性に合わせて判断してください。
自分好みの包丁をデザイン
さあ、材料が揃ったらデザインです。
自分で作るからには自分好みの包丁、世界に一本だけのマイ包丁にしたいと思いませんか?
技術習得が目的ならばスタンダードなデザインを模倣することから始めるのがセオリーですが、ここは趣味の延長線上のDIY包丁づくり。自分の好きなデザインの包丁を作って使うことが第一の目的です。細かい事は目をつぶって、とにかくかっこいい包丁を作りましょう!
とはいえ、多少の使いにくさはともかく、全く使えない道具になってしまうともったいないかなと思います。
そんな時は、従来の包丁を実寸大で紙に書き写し、それを参考に形を書くと実用性を大きく損なうこと無くデザインをすることが出来ます。
その上で、崩さないほうが良い点だけ下記にまとめますので、参考にしてください。
■洋包丁の万能包丁やペティナイフをベースにする
前回の包丁の選び方でも紹介しましたが、最近の家庭事情では万能包丁やペティナイフがよく使われています。また、自作する上でも構造的に真似がしやすいため、今回は万能包丁やペティナイフをベースにした包丁という前提でお話させていただきます。
なにより和包丁となると、包丁を寝かせたときに下側が平になる片刃で、その平らな部分に裏スキと呼ばれるくぼみがあり・・・といったような構造的な難しさが有り、DIYでやるには難易度が高くなるからです。まずは万能包丁からやってみましょう。
■持ち手は10cm以上に
包丁の柄(持ち手・ハンドル)の部分の長さは、自分の手の大きさや使い慣れた包丁を参考にしてください。おおよそ、10cm~15cmくらいです。
長くしすぎるとデザインが壊れたり、使いにくくなったりするので注意です。
■先端を尖らせすぎない
用途によっては尖らせる事も必要ですが、何よりも作る際に怪我をしやすくなります。また、製作工程で欠けてしまい、当初の予定よりも短い包丁になってしまう可能性が高くなります。従来の万能包丁くらいの刃先の鋭さにすることをオススメします。
■【絶対に!】背に刃をつけない
包丁ですので、背に手を置いたりするため、背に刃をつけると実用性が失われてしまうだけではなく、銃刀法に違反する可能性が出るため、必ず通常の物を切る側のみ刃をつける形状にしてください。
通常の万能包丁を参考にデザインすれば問題有りません。
上記を参考に、自分が使いたいと思う包丁の形状をデザインしてみましょう。
用意した鋼材のサイズを紙に書き写したり、直接マジックで書き込んだりしてデザインを決めましょう。
まず、今回はここまでです。料理をしている人の一つの夢でもある、自分に合った最高の包丁。実は自分でも作れるということがだんだんお分かりいただけているかと思います。 次回は作ったデザインをどう形にするかについて、手順を追ってお話ししたいと思います。
古上 正時
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本業:WEB制作・ITサービス
その他:素人料理男子(COOK BOSS http://cookboss.jp/ )