Column男の探求コラム
DIY料理男子による包丁のすゝめ 第四回
料理をする上で必要な道具、「包丁」について語るこの企画、第四回目となりました。 今回は前回に引き続き、自分でマイ包丁を作る工程の紹介をします。 材料やデザインについては前回お話ししましたので、今回は実制作についてです。少し特殊な道具が必要な工程もありますが、意外と手軽にできますので、料理が好き、道具が好きな料理男子には是非挑戦していただきたいです。
いよいよ加工!レッツメイキング
さあ、いよいよ加工です。
まずは、デザイン通りに鋼材をカットする事から始めます。
今回はDIYで取り組みやすいやり方を紹介します。
とにかく相手は金属。木と同じ様にはいかないので、手順と根気が必要になります。
1.外形に沿って穴を開けていく
いきなり金鋸でカットすることも可能ですが、思ったようにまっすぐ進まずに失敗してしまうこともあるし、なによりもひたすらギコギコするのは大変です。
ドリルやボール盤で外形に沿って穴をあけておけば、あとはその穴をつなげるだけで失敗なくカットできます。
穴をあける際は鋼材が回転しないように、しっかりと台などに固定しましょう。
ハンドルを固定するのにネジやピンを使う場合、それに必要な穴もこの段階で開けてしまいましょう。
2.穴を金鋸で切りつなげる
外形にそって開けた穴を、金鋸でギコギコとつなげていきます。すべての穴をつないだら、大まかな切り出しは完了です。
3.ヤスリやベルトサンダーなどで外形を整える
穴をつなげた状態では、外形はガタガタです。これを鉄工ヤスリやベルトサンダーで整えます。鉄工ヤスリで削る場合は、バイスなどで固定して削っていきます。
ベルトサンダーがある場合、切らずに削りだけで外形を削り出す事も可能です。
その代わり、研磨ベルトを大きく消耗します。
4.刃の中心にケガキ線を入れる
包丁として機能させるために、刃をまっすぐにする必要があります。
削ってるうちに曲がってしまわないように、目印の線を鋼材の厚みのちょうど半分、真ん中に書く必要があります。
ハイトゲージという専用の道具があればきっちり書けますが、持ってない場合は、鋼材の厚みと同じ直径の鉄工ドリルが代用可能です。
平らな場所に鋼材とドリルを置き、ドリルの先端を鋼材の刃となる部分に押し当ててギギギッとこすることで、ちょうど真ん中に線を引くことができます。
ちょうど同じ直径のドリルがない場合、コピー用紙の厚みが大体0.08~0.1mmです。
片方の下にコピー用紙を敷く事で、中心となる厚みに近づけることができます。
5.刃を削る
鉄工ヤスリやベルトサンダー、または砥石などで先程のケガキ線に近づけるように削っていきます。
この際、左右両面が対象になるように意識しましょう。対象じゃない場合、使い勝手に不具合がでたり、何よりも熱処理の際に曲がってしまったりする可能性があります。
削る量ですが、鋼材の厚みや幅で変わってきます。
大雑把に言うと、残った鋼材が太いと頑丈だけど切り抜けが悪く刃がつきにくい包丁に、薄いと弱いが切り抜けがよく刃が付けやすい包丁になります。
自分の求める用途に合わせ、削り込んでいきましょう。
ただし、この段階では刃がつくほど薄くしない様にしましょう。
薄すぎると熱処理時に割れますし危険ですので、少し厚みを残す必要があります。
6.ハンドルの整形
この手順は熱処理後でも良いのですが、この工程で刃体に傷などを付けた場合、熱処理後の修正が大変なため、この段階で行うのがスマートです。
外形に合わせハンドル材を切り出し、取り付け穴を開けます。
そして狙ったハンドルの形状になるように、木工ヤスリやベルトサンダーで整形していきます。
実際に加工した鋼材につけて削ると仕上がりがわかりやすいのですが、間違って削ってしまう事もありますので、マスキングテープなどで刃体をしっかり養生することをオススメします。
7.角を落とし、磨く
熱処理を出す際に、角があると割れる可能性があるので、角をヤスリや紙やすりで落とします。また、このあとは熱処理を行いますので、鋼材が非常に固くなります。
大きな傷などはこの段階で取っておきましょう。
8.熱処理
外形ができ削りもできたら、熱処理に出しましょう。
自分で熱処理することも不可能ではありませんが、かなりの専門知識と機材が必要になります。熱処理を行ってくれる専門業者に依頼をするのが確実です。
使用した鋼材の名前などを記載し、しっかりと梱包して送付しましょう。
9.削り・磨き
熱処理から無事に帰ってきたら、曲がりや割れが無いことを確認し、次の工程に移ります。
熱処理で割れないように厚みを残していた分を削ります。
狙った厚みに削れたら、次は磨きです。削り傷を消すように、砥石や耐水ペーパーで低い番手から徐々に高い番手に上げて磨いていきます。
鏡面にする場合は、ここで数千番代まで耐水ペーパーで磨き、その後にダイヤモンドペーストで磨き上げることになります。
10.ハンドルをつける
刃体が磨き終わったら、刃体に傷がつかないようにしっかりと養生をし、ハンドルをつける作業に入ります。
2液式エポキシ接着剤などの高強度接着剤を使用し、さらにピンやネジで固定します。
まず2液式エポキシ接着剤を説明書どおりの分量でしっかり混ぜ、ハンドルと鋼材の接着面に塗り、正しい位置に取り付けます。次にネジやピンでしっかり固定します。
溢れた接着剤を綺麗に拭き取りクリップやバイスなどでしっかりとハンドルを押さえたら、乾燥するまで放置します。
11.ハンドル仕上げ
接着剤が固まったら固定していたクリップやバイスを外し、余分な接着剤を除去するとともに仕上げ磨きをしていきます。
耐水ペーパーで磨いた後、布や革で亜麻仁油や蝋蜜を塗り込むように磨くと艶が出て綺麗に仕上がります。
他にも様々な仕上げ方があるので、好みの仕上げ方向を探してください。
12.刃付け・完成
ハンドルが仕上がったら刃体の養生を取り、傷や問題が無いのを確認します。
問題がなければ、ついに刃付けです。
砥石を使い、丁寧に研ぎ上げ、刃を付けていきます。
研ぎは好みや手法がかなり多く、どれが正解とは言いにくいです。
ですがあえて筆者のオススメを書かせていただくとすれば・・・
400番と1000番の両面ダイヤ砥石を使い、400番から刃付けをしていきます。
しっかりと返りが出たら1000番でも同様に。
それが出来たら、あとは通常の砥石の2000番以降などで仕上げて行くのが手早くしっかりと刃が付きます。最初にダイヤモンド砥石で研ぐと、丸くならずきっちりと平面が出た刃をつけやすく、その後の工程でもダレにくいと思います。
納得がいく番手まで研ぎ上げると、これでDIYマイ包丁の完成です。
どうでしたか。前回・前々回に比べてかなりマニアックな内容になってしまいましたが、DIYマイ包丁について少しでも興味を持っていただければ幸いです。
自分が自分のためだけに作ったオリジナル包丁で料理をすると、料理に対する気持ちも、道具に対する愛もこだわりも変わって来ます。
ぜひ挑戦してみてください。
古上 正時
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本業:WEB制作・ITサービス
その他:素人料理男子(COOK BOSS http://cookboss.jp/ )