Column男の探求コラム
盛り付けのプロが教える、弁当のルール
ただ詰めればいいわけじゃない! 弁当のルールを覚えよう
日常的に会社や学校などに持っていくお弁当、「どうせ自分で食べるからとテキトーに詰めて」ということはないだろうか。「朝はあまり時間も無いし、デコレーションをする手間もちょっと辛い...」といったような、言い訳ばかりが先行し、本当は「手間なく美味しそうに、そして美しく詰めたい」と思っている方も多いはず。実は、お弁当はちょっとしたコツや盛り付けのルールさえ覚えておけば、どんなおかずを作っても簡単にきれいに見せることができるのだ。今回はそんなお弁当の詰め方とコツを、料理研究家として活躍し、盛り付けに関する著書もある久保香菜子さんに教えてもらおうと思う。
すべてはバランスを知ることから始まる
バランスの良い弁当を作るには米とおかずの配置、そして色味の相性が重要だ。ここでは、まずは悩みがちなご飯の位置、色の使い方、サイズ、詰める順序など基本的なことを解説する。
■ごはんの位置
普段の食卓ではご飯茶碗は左側に置く。それを踏まえて、ルールや食べやすさから弁当箱でも同様に左側にご飯を入れるのがベスト。
曲げわっぱのような形の場合は、ちょっとオシャレに斜めの盛り付けも効果的。
もちろん、ベーシックに左に寄せて盛り付けるのも美しく決まる。
■弁当全体の色味を考える
色にもコツがある。おかずを考えるときに、食べたいものを決めるのではなく、色味先行で考え、そこに食べたいものを当てはめるという考え方で作ってみよう。
では、どの色が美しく見えるのか。ポイントはその色にある。彩りよく、美味しそうに見えるお弁当の色は「赤・茶(黒)・白・緑・黄」の5色だ。色が少なすぎても地味に見える、多すぎてもうるさくなる。この5色をひとつの弁当箱で表現することを目指すと非常に美しく仕上がる。見た目だけでなく、この配色は同時に栄養のバランスも良くなることが多いので、その点でも気持ちがいい。
【赤】
赤はトマトやにんじんなどを使ったおかずを考えてみよう。
【茶・黒】
鶏の照り焼きやポークジンジャーなど、肉や魚を使ったメインのおかずがこの配色となる。
実は様々な料理雑誌の表紙を一年分並べてみると、茶色が一番多いという統計がある。茶色はおいしい色なのだ。
【白】
白を担うのはもちろんご飯だ。ごはんの上にふりかけなどでアクセントを与えるのもまた違う表情が出てGOOD。
【緑】
緑は野菜が担う。葉物野菜で華やかさを出してもいいが、食べごたえやボリューム感を重視するならブロッコリーはおすすめ。
【黄】
お弁当の定番おかずでもある卵焼きの美しい黄色が、濃い配色のおかずの中で差し色となって弁当全体の印象を良くする。もちろんゆで卵でもOKだ。
■おかずのサイズに注意
弁当のおかずの大きさは、ひと口からひと口半で食べられるサイズが基本。さらに隠れたコツとして、弁当箱の高さに合わせることが実は重要。どの料理も3cm角程度のサイズにおさめると良い。
大きなものをそのまま使うのもダイナミックで面白いが、食べやすさを求めるならカットすることが肝要だ。
■おかずを詰める順番
ごはんの位置が決まれば、大きなおかず・形が決まっている料理から詰めていくのが基本。曲げわっぱの弁当箱は縁が曲線なので、縁に沿って入れていくのもいい。
1
まずはボリュームのあるメインのおかずから。
2
次に形が決まっている卵焼きを弁当の縁に沿って配置。
3
1と2の間に出来た隙間に形の自由が利くおかずを詰める。
4
再び縁に沿う形にサイズの大きいものを詰める。
5
最後に残った隙間は、トマトや漬物など小粒なもので埋めて完成。
色味と手順を守れば、時間がない中でもきれいに美味しそうなお弁当を作ることができる。明日のお弁当は、ぜひ色からおかずを考えてみていただきたい。
教えてくれたのはこの人!
料理研究家
久保香菜子さん
高校生の頃から京都「たん熊北店」にて懐石料理を学ぶ。同志社大学英文学科を卒業後、辻調理師専門学校に入学、調理師免許、ふぐ調理免許を取得。現在は料理制作、スタイリング、レストランメニューの開発などで活躍する。著書に「美しい盛り付けの基本(成美堂出版)」「美しい一汁二菜(河出書房新社)」などがある。
出典=一流料理店のお弁当(エイ出版社)