Column男の探求コラム
から揚げの粉、どれがいちばん旨いか研究室
小麦粉、片栗粉、米粉......。実際にどの粉がベストなの?
から揚げという料理は国民食とも呼べるほどに、日本ではポピュラーな存在。地方や、それぞれの家庭ごとに様々な作り方があって、そのどれもが甲乙付けがたいものだ。肉に付ける下味だけでなく、油の種類によっても仕上がりは左右されるが、なんと言ってもいちばん違いが出るものは「粉の種類」なのではないだろうか。今ではから揚げに適するブレンドを施されたから揚げ専用の粉もスーパーなどで販売されていて、それを使えば万人が美味しいと思えるものを作ることができるが、料理男子ならば、やはりその粉も自分で黄金比を見つけたいと思うもの。ここでは、様々な粉を使ってから揚げを作ってみて、一体どのような違いがあるのか、その研究結果を発表しようと思う。これを参考に、自分ならではのから揚げ粉を追求してみてほしい。
から揚げに適した基本の粉は3種!
粉によってから揚げの食感はまったく違うものになる。今回は小麦粉、片栗粉、米粉の3種の粉で検証し、それぞれの粉でから揚げはどのような変化を見せるのか研究したいと思う。
■小麦粉
タンパク質の一種であるグルテンの割合によって強力粉や中力粉、薄力粉などに分類される小麦粉。王道のこの粉も、もちろん今回の研究対象。違いを探っていく。
■片栗粉
様々な料理でとろみ付けに使われる片栗粉だが、竜田揚げをはじめ、から揚げだけでなく揚げ物全般に使われることも多い。たくさん付けることで、衣全体のボリュームがUPする。
■米粉
その名の通り、米を粉砕した粉である米粉は餅や団子、ケーキやクッキーなど菓子作りに作られることが多いが、日本を始め海外でも揚げ物に使用される。
いざ、三種の粉を使って実験!
実際に三種の粉をブレンドも含めてどういった違いが出るのかを実験してみた。なお、この実験ではすべて醤油で味付けした鶏むね肉を180度に熱した油で2分30秒揚げている。
【実験 1】
小麦粉100%でから揚げを作ってみる
おそらく、古来から日本の家庭で作られてきたから揚げと言えば、この小麦粉100%のものだろう。原料が小麦なので、麦特有の美味しいうまみを感じる。仕上がりにはお馴染みの凹凸感があり、揚げたてはカリッと、冷めるとしっとりした食感に変化するのも特徴の一つ。まさに王道、安定の味だ。
【実験 2】
米粉100%でから揚げを作ってみる
あまり米粉のから揚げは馴染みが無いかもしれないが、ハワイの名物であるモチコチキンは実はもち米の粉を使っており、仕上がりは近い。粉としては目が細かく、衣がもっとも薄くつくのが特徴的。また、油を吸いにくいので、揚げてみると薄く覆った衣はまるで鶏自体の皮であるかのように軽い。食感は小麦粉とは違い、サクサクッとクリスピーさを感じさせる。
【実験 3】
小麦粉50%+米粉50%
実験1と2を踏まえて、小麦粉、米粉の良いとこどりを狙って、同量の粉を混ぜ合わせてみた。米粉100%と比べると、衣がしっかりと付いて、ドシッとした重さと旨味をプラスできた。つまり、衣は小麦粉が多いほど存在感を増し、米粉が多いと軽やかな食感を楽しめるということがわかった。
【実験 4】
小麦粉50%+片栗粉50%
片栗粉だけで揚げるものは竜田揚げとしてよく知られているので、食感などは想像に難くない。ということで、ここでは小麦粉と片栗粉を半量ずつブレンドした粉を使ってみた。
片栗粉の特徴は何と言っても、食感。多くつけることで、ザクザクという強い主張のある食感を楽しむことができる。また、原料はじゃが芋などのでんぷん質なので、ほとんど味がないのも特徴だ。片栗粉のデメリットとしては、油を吸いやすいという特徴があるので、時間が経つと重くなってしまう。
今回は1:1で小麦粉と混ぜて使ってみた結果、小麦粉と半々で混ぜたためか、ガリガリと強い食感が出てくるというよりは、片栗粉を入れたことで衣がふっくらとした印象で、ボリューム感を感じるように変化した。
【総論】
今回の実験を経て、提案したい理想のから揚げ粉比率は、小麦粉3:米粉6:片栗粉1だ。
小麦粉は旨味を感じるくらい、かつ重くなり過ぎないような割合で配合。米粉はフワッサクッとした軽い食感を感じるように、そして片栗粉は薄くそこに膨らみを持たせるイメージで。今回の提案は3種の粉の良さを一番に引き出した比率だが、もっと研究の余地はありそうだ。料理マニアを自称する料理男子諸兄にはさらなる深みにハマってみてほしい。
(出典 「揚げる」本 エイ出版社刊)